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嘘発見薬


 「博士!世紀の大発明をしましたよ。これで、ノーベル賞受賞間違いなしです!!!」


 「落ち着きたまえ助手君。そんなに興奮しては伝わる物も伝わらんぞ」


 「し、失礼いたしました。ただ、それだけの価値はあるという事を一刻も早く御伝えしたかったものですから」


 「そうか。それで一体何を発明したというのだ?」


 「はい、人の心が判る薬です」


 「読心薬ということかね?しかし、人は他人の心を覗くに耐えられないと思うのだが」


 「いいえ。そこまでの精度には未だにたどり着けませんし、仰るとおり人一人の思考を覗くことは双方に過剰な負担がかかるかと。そこで、相手の台詞が嘘か本当かを確実に見分けることができるように調整してみました」


 「なるほど、嘘発見器ならぬ嘘発見薬というわけか。しかし、それだけならば既に存在している嘘発見器とあまり違わないのではないのかね?」


 「いえいえ、現在の嘘発見器とは一線を画します。その精度はなにより、人が判別することで、わずかなニュアンスの違いや、相手側の会話からも情報を得ることができるのですから」


 「ふむ、今までのイエス・ノー形式の判別から会話型の判別になるわけか。う~む、たしかに画期的ではあるな。それで?私に報告に来るということは、すでに最終調整の段階に来ているということだろう?どうなんだ?」


 「は…はい、その………副作用も無いという事で私自ら効果確認をしているところなのですが、なぜか今までに会った人達との会話すべてが『嘘』と判別されてしまって」


 「なるほど、嘘か本当かでしか判別できないのではそういう事もあるのか」


 「!…は、博士!今、博士が仰ってくださった事は『真実』と判別できました。一体どういう事なのですか?博士にはその理由まで解られているのですか?」


 「うむ。その『精度』が問題なのだ。君の薬はどうやら非常に敏感に反応するようだな」


 「どういうことですか?精度が良くて困ることは無いでしょう。逆に精度が低かったら、この薬の信用度までもが低くなるのではないのですか?」


 「君は人の心が、常に嘘か本当かを考えていると思うのかね?それこそまさかだ。心というのは常にあやふやで、揺れ動いているものだ。君の薬は、100%その相手が真実と思っていなければ『真実』とは判断しないようだ。それでは、日常会話はすべて『嘘』と判別されてしかるべきだろう。なぜなら人にとってそれが真実か嘘かはあまり重要ではないのだから」


 「そ、それでは今までの嘘発見器は?」


 「思い出してみたまえ。あれは機械の反応をみて我々が判断するのであって、決して確実なものではないだろう。故に、幾つもの質問をして総合的に判断するのだよ」


 「あ、そういえばそうですね」


 「残念ながら、君の薬ではノーベル賞は夢のまた夢だな」


 「ああ、博士、それは『真実』なのですね」


 「ははは、君の次の発明に期待しておこう」


 「博士…そこは、嘘でも良いので『本当』と思ってほしかったです………」


 助手は、肩を落として研究室へと足を向けた。



 実際のところ、真実かどうかは関係なく、博士が自信をもってそう思っているがために、助手にはそう聞こえています。

 薬についても、その効果が正しいのか不明なままです。

 助手が言い包められただけの話。



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