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森での狩り

森での狩りの日、絶好の快晴だったのだが、

森の手前の広場で俺は困惑をしていた。

(なんでお茶会が始まっているんだろう、、)


広場には伯爵家の家紋が入ったテントが立てられ、伯爵夫人と末娘のクラリッサちやん、

そしてルーナさんがテーブルを共にしてお茶会が開催されていた。


「何故ルーナさんが、、?そしてメイド服じゃない、、?」

ちょっと森に入って、鈍ったカラダを動かす、ついでに晩御飯の足しになる獲物が捕れれば良いなと軽い気持ちだったのだが。


「警備に騎士団の面々まで居るし、、」

そりゃあ伯爵家の家族が動くのなら付いてくるものなのだろうけど、俺のワガママに付き合わせているみたいでとても居心地が悪い。

そんな居心地の悪さをひしひしと感じて居ると、館の方から一人の女性が近づいてきた。


※※


「エルヴァナ、久しぶりね」

「はっ、お久しぶりにございます奥方様!」

エルヴァナと呼ばれた女性は、軽装の狩猟スタイルだったが、立ち振る舞いが騎士団のものだった。

そして、、彼女は褐色の肌を持つ耳長族、、ダークエルフだった。

(エルフ!エルフ!!しかもダークエルフ!!!)


テーブル席の傍で各人と挨拶を交わすエルヴァナさんを間近に見て、俺は感動に打ち震えていた。


※※


「、、行きましたね」

「アオってお母様の事が好きなんだと思ってたけど、エルヴァナに見惚れてたわよね、、」

「あらあら(笑)」

「単に女好きなのでは?」

「まあ、それも悪い事では無いけども、館で暮らすのだからちゃんとケジメは付けて欲しいものだわ」

「大丈夫です、お嬢様。ちゃんと見張りは付けておりますので」


「ルーナの事だから心配はしていないわ、でもルーナがせっかく着飾っているのに一言も無しっていうのもどうかと思うの」

「メイドだとしか伝えて居ませんでしたから、困惑していたのでは?」

「いつも驚かされてばかりなのだから、たまにはこちら側から驚かしてみたいじゃないの」

アオが去った広場では、伯爵家家族の団欒が続いていたのであった。


※※


エルヴァナさんの先導で森に入る、村の森と違って下草が適度に刈り取られている。

「先ほどから私の顔をよく見ておられましたが何か?」

エルヴァナさんが前を警戒しながら話し掛けてくる。


「い、いえ! その、耳が!」

「耳?」

「とても素敵だな、と」

エルヴァナさんが振り向き、「なんだコイツ?」とばかりに眉をしかめる。


「ち、違うんですぅ!エルフの方を、ダークエルフの方を見るのが初めてでぇ!!」

「、、静かに、まだ森の端だから構わないが狩りの最中に声を張るのは控えた方が良い」

狩りの素人に見られたかもという気恥ずかしさに赤面してしまう。


俺はマズいと思い、急いで手首の数珠に『鎮静』を書き込んだ。


※※


「成る程、、そういう使い方もあるのか、便利だな」

一瞬にしてまとう空気を変えた俺を見て、エルヴァナさんが興味深そうに言う。


「せっかくの技ですしね、、適度に使っていないと忘れてしまいそうですし」

「ふーん」

エルヴァナさんはそう言うと再び前方に向かって歩き始めた。


※※


「成る程、、ウサギに野鳥、大物だと鹿か野ブタですか」

「以前はイノシシも居たそうだがな、森を荒らすので駆除された。その内また居着くかもしれんがな」


伯爵家所有の森は、完全に管理された狩猟用の森らしい。

秋に領近くの派閥の仲間や部下を集めて狩猟大会を開くらしい。

男性が狩猟を楽しんでいる間、女性陣は先の広場でお茶会をして男性陣の成果を待つのだ。


「あー、だから今日も奥様達はお茶会をしていたんですねぇ、、」

謎が一つ解けた事にホッとする、

「まぁ、、狩猟大会以外では余り無い事だがな」

エルヴァナさんがボソッと言ったが、俺の人間用の耳には届かなかった。


※※


「ついでと言っては何ですが、ルーナさんがテーブルに一緒に座っていたのは、アレも普通なんですか?」

「?彼女は伯爵家の親戚、縁者だぞ」

「、、、へー」


(メイドじゃねぇじゃねえか!!!)

手首の数珠を強く額にこすりつけるが、中々術が効果を発揮してくれない。

どういう事だ?と困惑するが、今は狩猟に専念するべきだ。

騎士団まで出て来ているのだ、これでボウズだなんて格好が悪すぎる。


「、、、!」

エルヴァナさんが不意に足を止めて、姿勢を低くする。

俺はエルヴァナさんに習い、姿勢を低くして脇に並ぶ。

エルヴァナさんが俺の肩に腕を廻し、引き寄せる。


(ちょ!!近い!ちかいよ!!)

『静かに、、右手の方だ、分かるか?』

エルヴァナさんの息が顔にかかり、それどころでは無くなっているのだ。


『少し、、お待ちを、、』

俺は息を整えながら、スリングの底部を地面にそっと着ける。

底部に付与した『感知』が捉えた動物の気配が自然に脳に伝わる。


(大丈夫、、『感知』は働いている)

俺はスリングの紐に弾丸をセットして、ゆっくりと立ち上がった。

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