理不尽な婚約破棄に対して、聞かれていなければ何を言ってもいいよね?
どうも、しょうもない男に婚約破棄された子爵令嬢です。
ほっっっっんと腹立つ!!!
なあああんで、私がフラれたみたいになっているのよ!?
信じられない!
ああ、こういうところが可愛げがないって?
可愛げだけでご飯が食べられるの?
領地が栄えるの?
家を守れるの?
冗談は婚約破棄だけにしてよ。
だいたいあちらが我が家と縁続きになりたいと言うから、身分が上で断れなかっただけで、あの男に興味なんてこれっぽっちもなかったのよ。
我が家の商売がうまくいっているからね、資金援助してほしいだけなのよ。
どうせ、うちからたんまり持っていく持参金目当てだったでしょうし。
まあ、5年前の洪水の復興にまだまだかかっているお家だからね、助けてあげてもいいけどみたいな善意は最初の頃はあったわよ、私にも家族にも。
でもさあ、嫡男が馬鹿すぎて話にならないわけ!
あっ、私にさっき「お前とは婚約破棄だ!」って言ってきたやつね。
お前のことは愛するつもりがないだの、浮気を許容しろだの、ぐだぐだぐだぐだ…。
いやあなたに興味ないから浮気でもなんでもどうぞって思ってたし、実際「お好きにどうぞ」って言ってあったわよ?
だからってねえ!?
「愛する彼女との子どもが出来たからお前は邪魔だ!俺に縋りやがって、気持ち悪いんだよ!」って言ったのよ、あいつ!
子ども作るのは別だろうが!
そんなことも自分で線引きできねえのかよ!
てめえのお花畑な脳みそと虚言に、私を巻き込むなよ!
なんで私が追い縋ったことになってんだよ、大恋愛の末に結ばれたストーリーを勝手に作ってんじゃねえよ!
お前みたいな男、こっちから願い下げだっつーの。
頭沸いてんのか、頭に脳みそ詰めてからもの言えやゴラァ。
…………大丈夫よ、馬車の中だもの。
誰にも聞かれてないわ。
まあ、私としたことがはしたないわ、おほほほほ。
そんなわけで、さっき婚約破棄を聞かされて、今は家に帰っているところ。
はあ、疲れた。
でもあれね、夜会とかでド派手にどーんみたいな馬鹿を発揮せず、向こうの家の応接間で済ませたことは及第点かもね。
あいつなら、夜会でどーんもやりかねなかったけど、身籠らせたのはさすがにまずいと思ったのかもしれないわね。
醜聞って自覚あったのかしらね、お相手もそこそこのご令嬢だったし。
とにかく家に帰って父様たちと話し合いしなきゃ。
もうすぐ着くけど、馬車の中で暴言吐きまくったから少しは冷静になってきたかもね。
…って、あれ?
今、馬が追い抜いていったけど、我が家の前で止まった…?
どこの使いかしらね。
えっ、あの人、あいつのお父様じゃない!?
どうしたんですか、護衛もつけずに早馬で1人でいらっしゃったのですかっ?
え!わ!ちょっと待ってください!頭を上げてください!
いや、あの、家の前ではどんな噂になるかわかりませんから、とりあえずうちに上がってくださいまし…!
ええぇ…、どうしてこうなったんでしょう…。
あの、手を怪我されているようですが…?
あ、返り血?
嫡男をボコボコにぶん殴ってきた?
ああ、左様ですか。
お怪我ではないのならよかったです。
それで婚約破棄の件は、かの人の独断の暴走だった、と。
そうは言いましても、あのお嬢さんを身籠らせてしまったのでしょう?
嫡男は廃嫡で、次男に家を継がせると。
私が許すなら、次男と婚約を結び直してほしいとおっしゃるんですね?
はあ、でも次男さん15歳ですよね、いいんですか?年上の女で。
奥様が私のことを大層気に入っている…、ああ、ご当主様も私が嫁に来てくれるのを楽しみにしてくださっていたんですか、それはありがとうございます。
婚約結び直しとは別に、今回の婚約破棄の分の慰謝料も払う?
えっ、領地に鉱山が見つかったのですか!?
それを、私名義にして譲渡する!?
だめですよ!それこそ領地復興に使ってくださいよ!
えええぇ…、それくらいのことを息子はしでかしたって、まあそうですけど。
他領の民の援助になりそうなもの、おいそれと頂けませんよ。
というか、そんな金脈を簡単に手放そうというのが納得いきません。
ご当主様は、民の命と未来の嫁への機嫌取り、どちらが大事なのですか?
天秤にかけるような2つでもありませんが、この場合かけるならどう考えても前者ですよね?
そんなお家に嫁ぐなんて、将来心配です!
ご当主様、家の人間の機嫌に振り回されていたら、家ごと潰れますよ。
というわけで、その鉱山、いただきます!
は?くださるんでしょう?
撤回なさいます?
ああ、しないんですか、大丈夫ですか、汗が止まらなくなってますよ。
私がその鉱山をいただいて、それでそちらの家に個人的な金貸しに使おうと思います。
返済期限なし、利息なし、ついでに次男さんとの婚約して本当に嫁になったら、結局はそちらの家の収入になる、という条件でどうでしょうか?
え、私、甘いですか?
だって、民の生活のほうが大事ですし。
元婚約者が領主になるなら、民が苦しまないように根回しで忙しいだろうなぁと思っていましたが、次男さんが当主になるなら私は本来のサポートだけでよさそうですし。
婚約者をまともな息子さんに変更してくださったお礼ということで!
ええ、こちらこそ至らない点もありまして、申し訳ございませんでした。
はい、次男さんとの婚約もお受けいたします。
これで嫡男の方をご当主様が選ばれたら、どう暴れ回ってやろうかと思っていたのですが、…ごほん。
……そうですね、嫁の機嫌取りも大事かもしれませんわ。
ああ、元婚約者のことを私の気が済むまでぶん殴ってもいいと?
あらやだ、うれしい。
でも、淑女としてそれをするわけにもいきませんので、お気持ちだけいただきますわ。
ありがとうございます。
ええ、では、引き続きよろしくお願いいたしますわ。
………はああ、疲れたわ。
もう今日は寝ちゃおう、明日からまたドタバタしそうだなぁ。
とりあえず許可もいただいたし、夢の中で元婚約者をギロチンにでもかけとこ〜。
了
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