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神様に『万が一の救済者だ』と言われてますが、実質出番は無いはずですよね?  作者: 杜槻 二花
第一章

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祝賀会は異様な雰囲気で始まりました。

 父曰く、凱旋式が凄かったらしい。

 何が凄かったって、勇者チームへの褒章の話が一切出なかったらしい。

 陛下からねぎらいの言葉はあったものの、勇者チームは一言も話さずただ頭を下げただけ。


 あって良いのか、そんなことが。


 父がこっそり教えてくれた話では、ライナスもとばっちりで報奨が貰えていないそうだ。

 あと、やっぱり虚ろな目をしていたそうで。

 父は苦笑いを浮かべつつも、心配そうな顔をしていた。友人の息子だからね。

 私も心配しておこう、うん。


 尚、我が家への報奨は準男爵への叙爵。

 準男爵は本来一代限りなんだけど、兄も今回のことで随分走り回ったから、兄の代まで継ぐことが認められているらしい。あと、王都の中央にあるアクセスが良い物件をひとついただけるそうで。陛下、商人が欲しいもの判っていらっしゃる。他にも何かいただけたらしいので、太っ腹なことだな、と思った。



 そんなこんなで始まった祝勝会。

 国王陛下が大広間の中央階段を舞台に、最初のご挨拶と勇者の紹介をされた後は、ほぼ無礼講。

 とは言っても、物理的に無礼講には出来ないようにしてあるというか、会場がいくつかあって階級によっては入れない広間や部屋がある。開会時には大広間に招待客が全員集まったものの、国王陛下のお話が終わると同時に、階級ごとに用意された会場へと誘導された。

 しかしそれは警護等の関係を思えば当然のことだし、元々王宮に入る機会なんて殆どない我が家にとっては、王宮入口付近に設けられた()王侯貴族向けの会場に入れただけでも貴重な体験である。この上流階級向けに用意された会場ですら、庶民には目が痛くなる程の綺羅びやかさだ。これが貴族階級向けの会場だったら、もっと絢爛豪華になるんだろうか。正直、日常と乖離したような空間に、ワクワクするのは止められない。……まあ、こないだまで戦場を行き来してた分、他の人達より余分に目が痛くなっている気がするけど。

 父は仕事柄、年に数度王宮へと呼び出されるそうだけど、それだって部外者用の出入り口からすっと入って商談部屋で担当者と会合したら、同じ出入り口からすっと出てくるだけらしい。それ以外の場所に出入りしたことはないそうで、凱旋式で立ち入った謁見の間も祝勝会の会場になっている大広間やこの広間も、初めて足を踏み入れたそうな。

 我が家はそんな一般庶民なので、そもそも高位貴族と同じ空間にいて粗相(そそう)することを思えば、階級で区分けして貰った方が、家族全員気が休まるというものである。ほんとうに。


 例の噂の件、実際のところどうなんだろうと開会時に勇者チームをチラ見したんだけど、ライナスを除くチーム全員が聖女を囲むようにして立っていたのは、確かに異様だった。階段横の小高い壇上に立つ彼等は、まるでスポットライトでも当たっているかのように、人目を引いていた。……正直、悪い意味で。ただ、彼等は周囲の目など全く気にしていない様だった。それがまた異様さを浮彫りしていたけれど。

 開会時の挨拶後、国王陛下は勇者チームを簡単に紹介しながら褒め称えていたけれど、やっぱり彼等は頭を一度下げただけで一言も(はっ)さず。恐らく何も喋るな、と周りから言い含められているのではと思われる。

 王太子殿下はどうなのかと思ったら、世に出回っている姿絵に合致する人物は見当たらず。陛下の後ろに控えていた王族の方々を数えてみればひとり足りなかったので、恐らくこちらも参加を見合わせられたのではと想像する。こんな場で、あの聖女様を囲む会に王太子殿下が入っていたら、目も当てられないだろうしねぇ……。

 尚、ライナスはやはり彼等からちょっと離れた斜め後ろに突っ立っていた。遠目で見ても判ってしまう程、本当に虚ろな目をしていた、南無。


 確かにあれは箝口令を敷いたところで無意味だろう。メンバー全員が聖女に熱い目線を送り過ぎている。誰が見てもどういう状況か理解するだろう。

 せめてもうちょっと公の場では控えた方が良いんじゃないか。口噤んでいられるんならそれくらい出来そうなものだが、口は噤んでも自分たちの要望は撤回しない、と言う意思表示だろうか。それとも単に周りが見えてないだけだろうか。

 それにしても、斜め後ろに佇む虚ろで淀んだ目をしたライナスが対照的過ぎて哀れだった。無表情通り越して悲壮感が漂っていたんだけど、アレ見ようによってはひとりだけ聖女に振られたように見えるんじゃなかろうか……。真実は逆なのにねぇ。

 

 それにしても聖女様の堂々とした態度。アレだけ暑苦しい男共に囲まれ熱い視線を送られているのに、清楚で儚げに見える微笑みを湛えて涼しげに佇んでいる。

 壇上手前に整列していらっしゃるのは恐らく高位貴族の皆様方だと思うんだけど、皆様どういう表情なさっていたのだろう。私の立ち位置からは後ろ姿しか見えなかったので想像するしか無いが、あれを前にして無表情でやり過ごしたのだろうか。

 あの方たちに囲まれて、正直王家の女性陣よりも堂々としていらっしゃる聖女様の心臓には、とんでもない剛毛が生えてるのかもしれない。神の選定基準がそこにある……とは思いたくはないが。

 それにしても、逆ハーレムに対しての悪気はまったく感じられない。ドヤ感すら感じられない。本当にメンバー全員と愛を育むことが世界平和に繋がると信じていらっしゃる気がする。ひょっとして彼女が暮らしていた異世界、逆ハーレムが普通の世界だったんだろうか。だとしたら、この世界の倫理観と合致していないので、神は今後聖女様を選ぶ時は、もうちょっとこの世界に似た世界から選んだほうが良いと思う。


 現在神からの託宣はない。あの逆ハーレムを認めるか認めないかの判断は、国に(ゆだ)ねられるだろう。そしておそらく教会も口出ししてくると思われる。

 でも、この国最高位の公爵家を巻き込んでるからには、簡単に済むとは思えない。当分は水面下で修羅場かな。一国民としては、あまり大事(おおごと)にならないでくれると有り難いんだけど。

 まあ、私がこの件に直接関わる機会もないだろうし、一般庶民かつ商人Aの娘でしかない私では、結論が出た頃にそれを知るのみ、だろう。

 

 ……ですよね?神様。魔王討伐が終わった今、私の出番はもう無くなったという考えで問題ありませんよね?私に課せられた『万が一』がこの修羅場ということはありませんよね……?これ私にはどうしようも無い案件ですよ。信じておりますからね、神様。

ここまでお読みくださいましてありがとうございました。

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