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神様に『万が一の救済者だ』と言われてますが、実質出番は無いはずですよね?  作者: 杜槻 二花
第一章

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聖女様が伝える『神の言葉』は真実か否か

 「ちなみに、ライナスはその茶番劇の斜め後ろでポツンとひとり佇んでたらしいよー」

 と兄は乾いた笑いを浮かべて、ライナスの追加情報をくれた。どうやらライナスにはかなり同情しているらしい。


 人目も多い公式の場で、自分以外のメンバーが人目も(はばか)らずイチャイチャしてる様子を見せつけられたわけだ。それも仲間の一員として。

 ライナスの心境はいかばかりか。もしも自分がその立場になったことを想像してしまえば、同情心が湧いて当然かもしれない。

 案外、そういう状況になったのを何故止めなかったのか、と教会のお偉いさん辺りからは理不尽に叱責されてすらいそうである。なんなら第一騎士団の団長あたりにも言われていそう。もしそんなことが起こっていたとしたら私も同情する。私ならそんな他人の色恋事なんぞ知らんがな、と逆ギレしていることだろう。むしろ自分が籠絡されなかったことを褒めて欲しいくらいじゃないか。私ならライナスを褒めるぞ。

 それにしても、先程兄が伝えてくれた現場の詳細が気にかかった。


『私たちが今後愛を持って共にいること、それもまたこの世界の平和を継続させるために必要であると()()()()()()()()()()!』


 と言う、聖女様の言葉だ。

 神が聖女様を降臨させた際、聖女様にその様な託宣を与えたと言うことになる。

 しかし神は基本託宣を一箇所だけに与えるということはない。人が神を騙らないよう、必ず複数の場所と人へ同時に降ろす。尚、今まで聖女様が騙ったことがない、わけではないので……聖女様に与えられる託宣もまた例外ではないのだ。

 そもそも、騙らずとも曲解が生まれないとは限らない。伝言ゲームと同じである。

 ちなみに複数の箇所には、他国も含まれているので、託宣を受け取る人々の買収はそう簡単に出来ない。そもそも騙った内容が大事に膨れ上がった際には、実際に天罰が下る。実例があるだけに『神の言葉』を騙ろうとする輩は、殆どいない。ゼロでもないが。


 ここでお気づきかもしれないが、私の持つ託宣『万が一の救済者』も、神が世界に託宣を降ろすことで初めて機能する。……ので、私についての託宣が降りていない現在、私は何もできないし、このことを他人に語れない。言ったところで神の言葉を騙る痛い人物になってしまうのだ。そもそも何をするか自体は聞いていないので、言ったところでどうしようもない。つまり『万が一』は訪れていない、……まだ。


「聖女様が『神が仰った』と言ったことに対しては、その様子だと他からの確認は取れてないんだよね?」

「取れていないみたいだなぁ。託宣を受ける機能があるどの教会にも――、王家の託宣の間も沈黙したままらしい」

 当然他国にも託宣が無かったようだ。……問い合わせて無いことを知ったのか、それとも他国からの連絡が無いから無いと判断したのか。……王太子殿下の件があるから、問い合わせ……して確定させたいけれど、外聞を考えると出来るなら他国に漏らしたくない事案のはず。まあ……なんにせよもう無理だろうけど。

 とは言え、王太子殿下の件は不思議に思っている。噂では浮ついた様子はなし、ご婚約者様との仲も良好、立場も弁えている聡明なお方だと。……そんな方が恋に浮かれるものだろうか。……わからん。


「神からの肯定もないけど否定もないと。うーん、それは判断に困るね……」

 とは言え、状況に寄る結論からすると、今回の件は聖女様の嘘ということになりそうなのだが、遅れて神から託宣が無いとも限らない。この状況を人がどう捌くのかを見てから託宣が届くのかもしれない。または聖女様の今後の行い次第で届くのかもしれない。等々あって聖女様が嘘をついていると確定できないでいるのだろう。

 実際、過去に聖女が騙った前例があるとしても、神が降臨させた相手を疑いにくいのも確かだ。

 その上、本人から承諾を貰っているとは言え、異界からひとり召喚された聖女様に、魔王討伐なんて大きな戦いを任せるなんて、国としても負い目だらけのことだろう。彼女の希望を最大限聞いて差し上げることがこちらにできる謝意ではあるので、今代の聖女様に限り逆ハーレムを容認する、と言う判断をする可能性はある。……流石に王太子殿下はまずいと思うが。

 その判断と結果がどう神の目に映るのか。

 神の怒りが目に見える形で落とされるこの世界だからこそ、慎重に行動するしかない。特に聖女様関係では、迂闊な判断が出来ないのはわかる。

 逆に神からの託宣が出ればあっさりと結論付けられるのだが。


「まあ、神は余程でないと人の営みに口出ししないと断言されてもいらっしゃるから……」

 空々しい口調で兄は応える。

「聖女様関わりはそれなりに口出しされてるような」

「それだって、自害したとか傾国しちゃう一歩手前とか、だろ」

「……うーん、そんなギリギリは困るなぁー……」

 実際事例ではそのとおりなので、なんとも困る。できれば実害が出る前に託宣をお願いしたいところなのだが。

 しかしそのタイミングは神のみぞ知る、といったところか。


「でもまあほぼ一方通行の神様相手だもん、そんなもんだよね」

 こっちから連絡取れないからなぁ、と兄は苦笑いを浮かべた。それからぽんぽんと私の頭を撫でると、「さて、車の準備が完了してるから、用意できたらすぐ玄関に集合な」と言って部屋を出ていった。

 ……なるほど、それを伝えに来たのか。

 私はもう一度姿見の前になってくるりと前後を確認すると、あっさりと部屋を出て兄の後を追った。

ここまでお読みくださいましてありがとうございます。

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