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神様に『万が一の救済者だ』と言われてますが、実質出番は無いはずですよね?  作者: 杜槻 二花


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どうやら聖女様って、私たちと倫理観が随分違うようです。

 それにしてもである。

「すごいですねぇ、聖女様。我々と全く違う貞操観念の世界からお越しくださったのかな?」

「どうだろうねぇ……、今回の聖女様がどんな世界から来たかなんて話は出回ってないしなぁ」


 過去の召喚された聖女様については、多くはないがいくつか語られたお話が出回っている。誇張された眉唾っぽいお話もあるが、この世界とは随分と仕様が違う技術や社会構成で成り立っているようだ。私の前世がいた世界と同じところから来た様子の聖女様もいらっしゃれば、他世界から召喚された聖女様もいるようだ。ただ、過去の聖女様はいずれも男性を侍らせることが一般的な世界からは、お越しになってはいないらしい。……もしかして、探せばそんな世界も存在しているのだろうか。


「それにしても、王太子殿下の話は驚きです。というか、殿下は婚約者がいらっしゃったような?」

 首を大げさに傾げながらそう質問してみると、兄も右手を顎に当ててうんうんと頷きながら答えた。

「いるいる。我が国の筆頭公爵家ご令嬢アデリーナ様な」

「それ、とても不味いのでは」

「そー、とーっても不味い。そもそも神との盟約によれば、王位継承権の持ち主は聖女様と結婚できない。王太子殿下なんてまずアウトだ。しかも既に決まった婚約者は、王族を除けば一番の権力者一家(いっか)。それをなーんもなしで白紙に戻すのは絶対無理だろうな。()歩譲って聖女様が王太子殿下のみに相手を絞り、王家が公爵家に賠償金を盛大に支払って婚約を白紙に戻し、王太子殿下が王位継承権を返還して一代大公あたりの(くらい)を貰うことになるなら、可能かもしれないなと思うけれど……」

 まあ遠い道のりだよね、と兄は微妙な顔をしてみせた。実際それだけではすまないだろうというのも予想がつく。


 神は王家に聖女様を組み込むことを基本的に認めていない。まあ、それもこれも歴代の聖女様の中で、強制的に王家へ組み込まれて自害しちゃったお方や、逆に王妃としての仕事をほったらかして贅沢三昧の末、うっかり傾国させそうになったお方がいたためだ。どちらの例も神からてんこ盛りの怒りが落ちて、エラい事になったという。だからもしも聖女様が王族を伴侶として選ぶならば、まず王位継承権から外れることが第一条件だ。そして二人の間に生まれた子どもにも、継承権は発生しないことになっている。

 そもそも慣習や礼儀作法、社会ルール等が全く違う世界からやってきた少女に、一国(いっこく)の王妃を任せるのは、かなりの負担を強いることになる。

 異界からやってくる聖女様に、この世界の王妃になる教育が備わっていた例はほぼない。もしも王家の誰かと婚姻を結ぶことになった場合、一から勉強して貰う必要が出てくる。過去には努力し報われた聖女様もいたようだが、大抵は上手く行かなかったようだ。まあ世界を救ったその後に選択した、又は強制された伴侶のせいで、更なる苦行を背負わされるなんて思ってもみなかっただろう。気持ちはわかる。私だってやりたくないわ。

 その上神罰が下るような結果にまでなるのであれば、王家と聖女様の婚姻は禁忌になっても仕方がないと思われる。

 今後真っ当に王妃が務められるような聖女様が、ご降臨なされることだってあるかもしれないが……、その場合も神からの承諾がない限り王妃にはなれないだろう。


「勇者チームがハーレム状態になっていて、そこに王太子殿下が上乗せ、なんて魔王討伐の栄誉も吹っ飛びそうな外聞の悪さね。大衆紙のお陰で結構な噂になってるみたいだけど」

 噂が広まったのは低俗な大衆紙が一紙、討伐報告の場であったとされる概要を面白おかしく脚色して書き上げたのがきっかけだ。その後、他紙も徐々に独自取材を始めて記事を出し、とうとう三日前に別の大衆紙が王太子殿下の話をすっぱ抜いた。

 とは言え、書かれている内容はどれも誇張が多く、記者が膨らませた妄想もかなりの量を占めているように思われた。つまり信憑性が薄い。

 それでも、民の中にはその怪しげな記事から、更に妄想を広げて色々考える人達がいるものだ。それをまた周囲の人に語るものだから、街の噂はなかなかカオスな事になっている。街で聞いた一番阿呆な噂は、「そのうち聖女様が一般市民にもハーレム要員を公募するらしい」だった。

 他にも今後の展開予想、聖女様への憧れと失望、教会に対する信頼と不満。街に出てちょっと耳を傾けるだけで随分と沢山拾えた。一部の男性を除けば、概ねマイナス寄りの意見に傾いているようだったが。


「それさぁー。討伐報告の場に呼ばれた某下位貴族が記者にうっかり言っちゃったらしいよ。既に寄り親にバレてかなりの雷を食らったとか。まあ、普段呼ばれることのない謁見の間で、そんな爆弾発言聞かされちゃ、どっかで喋りたくなるのもわからんでもないよね」

 そう言いながらも、兄は呆れた顔をしながら首を竦め、貴族家のお知り合いが教えてくれた詳細を、私にも事細かに語ってくれた。曰く、

 

『この三年間、恐ろしい道中を慰め合い共に死地を乗り越え、苦楽を共にした大切な方たちなのです。皆、等しく愛し、欠けること無く傍に居たい……。なにより私たちが今後愛を持って共にいること、それもまたこの世界の平和を継続させるために必要であると神が仰っていたのです!』


 そう言って、ハラハラと涙を流した聖女様を、勇者チーム皆で囲って励ましていたらしい。なんだろうその茶番。


「それ、箝口令敷かれたんだよね?」

「一応」

 箝口令は出たらしい。しかし陛下としても無事の帰還を皆で祝って出迎えたいとの意向があって、王都に居た貴族家の当主を概ね招集したらしく、魔王討伐直後の勇者チームを見れる稀有な機会だと、これまた招集を受けた貴族家の殆どが足を運んでいたらしい。それが仇となった。

 まさか聖女がそんな頭の可怪しいことを言うとは思わないもんね。当然過去に一例もない。


 神から召喚された清いはずの聖女様のご要望が逆ハーレム。しかも禁忌の王族まで参入済み。

 諸外国からの目は痛いと思われるし、民衆からの支持も下がる。逆に聖女様というだけで憧れる人たちはそれなりにいるのだ。聖女様のハーレムに入りたい希望者が増えたり、聖女様の真似事を始める婦女子が出てきたり、国の風紀が乱れる可能性までありそうだ。

 兄を信用して情報を流してくれた貴族家はさておいても、大衆紙の取材に応えている貴族たちは何を考えているのだろうか。最終的に締まるのは自分の首だと思うのだが。

ここまでお読みくださいましてありがとうございました。

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他の作品もUPしているので、お暇な時にでもお読みいただけると嬉しいです。

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