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神様に『万が一の救済者だ』と言われてますが、実質出番は無いはずですよね?  作者: 杜槻 二花


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聖騎士様は乙女で貞淑な人だそうです。※但し男性

『聖女様が勇者チームを全員落とした』


 と言う噂は、どうやら事実らしい。ただの噂――当代英雄の紅一点に、嫉妬した女性たちのヤッカミから出た嘘かと思えば、どうやら違ったのか。

 すごい手管だなぁ……どうやったら全員を落とせるのか。高級娼館のトップレベルでも難しい所業ではなかろうか。

 でもそうか、全員。つまりライナスも……。

 思わず胸に手を当てた。なんだか胸が苦しくなった、気がしたのだ。何か黒い塊が出来たような。


 一応勇者チームの(みな)、伴侶や婚約者等はいないことになっている。出発以前には恋人がいた、婚約者がいた、と言う人達も、目的達成までに何年掛かるか、そもそも生きて帰れるかもわからないため、お相手と話し合いの末に全員独り身へと戻ったそうだ。

 今回、三年で目的を達成出来たことを結果的に短いと言えるのは、過去の討伐が平均で五年を要しているからだ。

 そうは言っても、結婚適齢期の女性にとっての三年は結構死活問題だ。なにせ二十歳を過ぎた辺りから結婚を急かされ、二十三歳過ぎで行かず後家扱いがチラ見えしてくる。いわんや、出発の時点で五年も掛かる可能性があるともなれば、約束を白紙にしてもお互い文句の言えるところではない。生死が関わった五年後の未来なんて、誰が確約できることだろう。


 そして実は、国の方針で妻子のいる男性もこっそりとメンバーから除外されている。勇者チームは、基本的に聖女様と結婚可能な未婚男性が集められるのだ。

 勇者は神からの託宣によるものなので、彼の年齢や婚姻歴については神の御心によるものだが、それ以外のメンバーについては国が采配をとる。

 なにせ魔王討伐が完了するまでの間、家族とは数年単位で離れ離れになり、かつ期間中は聖女と片時も離れず共に死地を乗り越える。生死の危機も感じる中、ぶっちゃけ男女の仲にならない、とは限らない。

 過去の例を見ても、召喚された聖女は勇者チームの誰かと、ほぼほぼ婚姻を結んでいる。

 勿論魔王に勝ってもらわなくてはいけないので腕が立つ条件は外せないのだが、戻ってきた時に家族と不和になられても困る。大昔には討伐後の揉め事で国が傾きかけたこともあるらしい。

 その上、この世界を護るために召喚された聖女様は元の世界に戻れない。彼女たちは自分の世界で亡くなった後に神との取引でこちらにやってくる。

 そんな聖女様がこの地に根付けるよう、伴侶になりそうなお相手をそっと周辺に配置しておくのだ。実質聖女専用お見合い斡旋業である。

 尚、この件は当人たちに伝えられてはいない。本当にそっと未婚者を横に置くだけ。選ぶ権利は聖女様に委ねられている。

 ただ、全員籠絡される予定ではなかったはずだ。過去にも事例がない。


「とは言え、ライナスを除く、なんだけどもね」

 続いた兄の言葉に、思わず「へぇ?」と声が漏れる。

 先程胸に芽生えた黒い塊はスーッとどこかへ消えていった。……自分で言うのも何だが、現金なものである。

「ほらー、ライナスってちょっと夢見がちで乙女なところがあるからさー」

 兄は両手を軽く掲げて首をすくめた。彼は確かにそういうところがある。手先が器用で、ピクニックに行った先の野花で率先して花冠を作ってみたりだとか、屋台で販売しているジュースに、生花をひとつ飾るフラワーオプションを可愛いからと、わざわざ付けて購入してみたりする。謎に女子力が高い。

「……つまり?」

「結婚前は清らかなまま、という信念を貫いた結果、前カノに振られたわけだが、聖女様のお誘いにも同じようにお断りしたんだってさ!」

「……ほほぉー……」

 つまり乗っかってきた聖女様を振り払ったということか。ライナス、中々の自制心をお持ちですなぁ……!


 誤解が生まれそうなので心の中で一つ訂正しておくと、前カノは聖女様のように貞操観念ユルユルだったわけではない。

 ライナスが勇者チームに選抜される直前、親が決めた政略結婚を跳ね除ける最後の手段としてライナスを押し倒したのだ。

 前カノのご両親が政略結婚を勧めたのは、彼女の恋人が魔王討伐メンバーの候補者に挙がってしまったからだ。本来の仕事も教会所属の聖騎士なだけに、選ばれなくても魔獣討伐の最前線には間違いなく送り込まれただろう。

 夫となる人物が英雄になって戻って来る可能性と、早々に娘を未亡人にしてしまう又は婚期を逃す可能性を天秤にかけて、最悪の事態を避ける方を選んだご両親の気持ちはとても良くわかる。

 既成事実を作ってでも添い遂げようと思った彼女と、彼女のご両親の気持ちを汲んであっさりと手を引いたライナスも、おそらくちゃんと愛情があったからこそ、だと思う。

 最後の賭けに負けた彼女は、口ではライナスをヘタレ扱いしていたけれど、大変清々しい笑顏をしていた。


 結局その行動が、ライナスを添い遂げる相手のいない未婚男性のカテゴリーへと振るい入れることになり、結果彼は勇者チームの聖騎士として選ばれることになった。

 とは言え、むしろ変なフラグを建てることにならなくて良かったのではなかろうか。ほら、よく定番の「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ……!」と言うあれである。

 魔王討伐の勇者チームに参加せず、恋人が居るまま魔獣討伐の最前線に振り分けられていたら、そのセリフをライナスはうっかり言いそうだな、と思った。

 なにせ乙女なところがあるので。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます。

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