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神様に『万が一の救済者だ』と言われてますが、実質出番は無いはずですよね?  作者: 杜槻 二花


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新聞に載っちゃうのもしょうがないことらしい。

「……成る程、確かに諸々私の所為……」

 うぐぐ、とちょっと情けない声が口から漏れる。

 結局、私がやらかし過ぎた結果らしい。

 やらかしの自覚が無かったのは、余計な事を何も考えないよう脇目も振らずに動いた方が楽だから、と言う自覚した行動に基づくものであって、そんな自分が周囲からどう見えているか、なんて考えてもいなかったからだ。

 余計な事、とは、勿論聖女様とライナスのアレヤコレヤである。今だから言えるわけだけど、ただの杞憂に暴走した結果が、この恥ずかしいネーミングの付与と共に新聞掲載とか、泣くしかない。


「流通が流れてくると、今度はアンナ達が赴いた方向からやって来た商人たちが、君を含めた治癒師と騎士たちの活躍を語る。勇者チームとは真逆の明るい話だ。しかもアンナのやらかしは英雄譚としてもなかなか出来が良い」

 父はそう言いながら私に向かって目を細めた。本当にこの子はさぁ、と言う無言の圧を感じて、ちょっと蛇に睨まれた気分になる。

「英雄譚……」

 私の間抜けな理由から行動した結果が、英雄譚。

「道は安全、流れてくる噂話は気になるものばかり。そうなると、どこまで本当なのかを確認したい輩が出てくる」

「……例えば大衆紙の記者?」

「そっそ。勇者チーム側に足を運んだ大衆紙と、アンナのいる方角に足を運んだ大衆紙があったんだよね」

 合いの手の様に言った兄の言葉を引き継ぐ形で、父が言葉を続けた。

「因みに一紙目は出かけもせずに、王都の外からやってくる人達が運んでくる情報をメインに妄想話を広げて不安を煽っていたんだよ。勇者チームがまともに動かない理由を、『召喚されたばかりの聖女様が、まだ慣れていないのに国が無理やり戦場に向かわせたからだ』『聖女様は騎士が横柄で信用できず、この行軍を不安に思っている』と言った感じで話を盛り上げてね。ただ、聖女様推しというよりも、権力層を悪役にしたいって感じかなぁ。悪政にはそのうち天罰が下るぞ!ってね。しかし下手に取り締まると、事実なんだろうと民衆が暴動を起こしかねなかったから、国側はしばらく様子を見るしかなかった」

 そう言って、父はわざとらしいため息を付いた。


「しかしその内容を信じて教会に物申す者達が少なからずいてね。教会は国から正確な情報を貰っているんだから、それを使って(いさ)めればいいのに、何故か事実確認のためと称して彼らの代表となって王宮に乗り込み、『聖女様をちゃんと扱え』と喧嘩を売った」

「……教会は何をやってるんです?」

 今まで知らなかった教会の行動に唖然とする。

「どうもね、彼等には勇者チームの司祭から『聖女様が蔑ろにされている』という情報が直接届いていたらしいね。だが、国は教会に対しては情報を余さず渡していたそうだし、むしろ聖女の問題行動を相談してもいたらしい。それに、第三騎士団に帯同している教会付属の治癒師からも、彼等から見た情報を渡されていたはずなんだ。なのに何故か教会は治癒師が騎士団に(おもね)った情報を捏造していると判断し、司祭の情報だけを真と考えたようだ」

「……ホントに教会は何やってるんです?」

 思わず頭を抱えた。それ程勇者チームに派遣した司祭が信用出来るということだろうか。それとも治癒師たちを下に見ているのだろうか。


「それは結局教会側の軽率な行為として(いさ)められることになった。国からすれば聖女様の不審な行動が民衆に広がらないように庇っていた部分もあったのに、教会が事実確認することもなく聖女様側に立ってに噛みついてきたわけだ。結局国側は、聖女様の状態を正確に公表することにした。()()()()扱いの聖女様に対する不信をね。彼女の行動のツケを、()()()()の第三騎士団や傭兵部隊が払っていることも含めてね。教会側はどうなっているのかと。まあ、ある意味教会を不満への生贄にしたわけだが、そもそも協力していたはずの教会から突然攻撃されたようなものだ。国側から教会への信頼は無くなったし、民衆の代表になったつもりで行った行為が、民衆からの信用を落とす羽目になった。これがまた別の大衆紙に妄想付きで書き叩かれてね」

「なんで戦場でもないところで無意味な戦い繰り広げてるんですか」

 実際の戦場付近を必死に走り回っていたアンナからすると、馬鹿馬鹿しい話ばかりである。呑気だなとすら思う。確かにこの世界の魔王討伐は成功を約束されているようなものだから、呑気になるのはしょうがないのかもしれない。それでも現場の対応を間違えれば人の命は消えてしまうのに。

「本当にねぇ……。何やってるんだって思うよねぇ」

 父は呆れたようにため息を付きながら、休憩とばかりに天井を見やった。


 その様子を見た兄が、引き継ぐように続ける。

「勇者チームの方に赴いた二紙目の大衆紙は、今回の号外読んでも判ると思うけど、アンチ聖女様なわけ。そうすると、まあ事実に近くはあるんだけど、それを拡大解釈して不安を煽ってくる。そもそも勇者チームは魔王を討伐できるのか?ってね。五年で討伐が終わらなきゃ、予測計算で備蓄していた食料やら資材やらが枯渇する可能性だってあるだろ。それにあの聖女様に任せていたら、本当に討伐が失敗する可能性すらある。万が一討伐が失敗したら世界が終わるのでは、と大衆の不安を煽り立てた」

「……万が一」

 は、結局は起こらなかったわけだが。

「まあ、前例を調べればわかるんだけど、現勇者チームが失敗しても、新たな聖女様が召喚されるか新しい勇者が指名されるだけなんだけどねぇ。聖女様なんか、失敗した分を補えるだけの加護が追加マシマシされて来るらしいから、そう世界が簡単に終わることはないだろうねぇ」

 と、父は何故か怖く見える笑顔を見せた。


「ところがそこに、三紙目の奴がアンナの話を聞きつけて取材しまくった結果を紙面に載せたんだよ。正直アンナの行動が規格外過ぎて、聖女様の話以上に嘘八百だって嘲笑(わら)ってた奴もいたんだけど、そっち側からやって来た商人や旅行者が声を揃えて本当のことだって言うわけ。そしたらもうアンナの方が聖女なんじゃね?とかそういう話が話題になってきてさぁ。でも流石に混同したら不味いからって、いつの間にかアンナを『女神』って書くようになったんだよな」

「アンナの活躍で実際流通が楽になった訳だし、明るい話も聞けるようになったしね。お陰で王都の雰囲気が良くなってきたもんだから、それなら下手に掲載を止めるよりは、内容の確認だけは事前に必ずすることにして発行するのを許可したんだよ」

「つまり……」

 つまり、代わりの英雄に仕立て上げられたということだ。


「だからね、しょうがないんだよ。大衆の安寧の為には『ブロンテの守護女神』が新聞に掲載されるのは仕方がないことだったんだよ」

「あれな、自業自得ってやつな」

「……理解、しました……」

 もう本当、自業自得過ぎて頭を抱えることしか出来なかった。

お読みいただきありがとうございます。

次の更新は20時くらいです。

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