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神様に『万が一の救済者だ』と言われてますが、実質出番は無いはずですよね?  作者: 杜槻 二花


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21/24

藪をつついたら蛇が出ちゃった。

「つまり、予想以上に勇者チームの行動に問題があって、そのせいで王都が不安定になっていたということね?」

「そうそう。なんで神様は彼女を聖女に選んだんだろうなぁ。もうちょっとマシな聖女様を送り込んでくれてたらこんなことにはならなかったんだろうけど」

 結局、聖女様は戦闘に参加しない、取り巻きは聖女様のご機嫌によって訓練や戦闘に参加したりしなかったり。かと思えばある日突然先に進みたがる。その上時間が経つほどに、聖女様に籠絡される人数が増える。と言う恐ろしいスパイラルが出来上がっていたという。

「……ええー……?」

 なんだそれ。

「因みに、騎士団や傭兵団のイケメンまで籠絡されてたって噂もありました」

 そっちは速攻で部隊から外されたらしいけどなーと、兄は言う。

「え、ホントに?敵国からのハニートラップならまだしも、なんで神様ご推薦の聖女様が、しかもたったひとりで味方の戦線(くず)してんの?吃驚なんだけど。ホントどういう手管してるの?」

 思わず口をあんぐり開けてしまって戻らない。実際は何人籠絡したんだろう。一周回って感心する。

「それなー。あれかな?一代前の聖女様がかなり脳筋だったらしいじゃん。次は真逆の聖女様を選んでみようとか思ったのかね、神様」

 兄は、わざとらしく両腕を組んで、うーんと唸ってみせた。

「……脳筋」

 ……酷い言われようだと思う。一代前の聖女、多分、そんなことは無かったと、思います。


「そもそも魔王の遺構までの道程は、実戦による勇者チームの戦力向上も兼ねてるわけよ。チームワークとか技術向上とか体力向上とか?なのに肝心の奴らが動かないんじゃ当然実力も上がらない。それでも一箇所に止まり続けるわけにも行かないからと足を進めれば、魔獣は強くなるし数も増える。魔王の遺構に近寄れば近寄る程、その傾向が強くなる。そうすると勇者チームの実力がだんだん噛み合わなくなってくるから、魔獣討伐も厳しくなるし、村や町にも被害が出てくる。勿論同行してる騎士団や傭兵にも怪我人が増える。なのに勇者チームのメンバーは、戦後処理にすら姿を表さない。これ、ウチの商会スタッフが補給品持ってった時に丁度巻き込まれて見ちゃったらしい」

「え、大丈夫だったの?」

 まさか商会スタッフが巻き込まれていたとは思わず驚いた。

「大丈夫だよ。念の為、商会印の小型結界だの魔獣忌避剤だのたんまり持たせていたからねぇ。護衛団もいつも通り帯同させていたし。彼等もまさか騎士団と一緒に魔獣討伐するとは思ってなかったらしいけどねぇ」

 のんびりとお茶を飲みながら、兄に説明を任せていた父がそこだけ口を挟んだ。お茶請けは母特製のドライフルーツたっぷりな焼き菓子だ。父は結構甘党だったりする。


「状況はどんどん不味くなってるのに、その内ライナス以外は訓練どころか部屋の外にも殆ど姿を見せなくなった。どう考えても魔王討伐なんて無理。それ以上進むと不味いって事で、半年くらい経過したあたりで、完全に進軍が留まる羽目になった。そん時で予定の半分くらいの進行速度な」

「えー……」

 予想以上の酷さに言葉も出ない。

「そんな状態なのに広報紙に書かれる情報は、討伐隊の停滞は伝えるけどその理由は曖昧だし、彼等抜きで敵を退けた状態でも彼等の勝利として報告する。勇者チームに対する不満が戦地で溢れても、それについては書かれない」

「……その語られなかった部分を、商売人や逃げてきた人が語ったと」

「そう。一人や二人じゃ信じなくても桁が変われば信憑性が上がる。商売人は自分たちの仕事に直結するから、行きたくない地域ははっきり言うし、その理由も口にする。そんなだから王都内は不安に駆られる。国を信じて良いのか、このまま勇者チームに任せて良いのか、果たして五年で討伐は終わるのか。彼等を信じたくても商人が運ばない物は品薄になるし、物価も上がる。逃げてきた人が増えて地味に治安も悪くなってたしな」

 過去の討伐記録から導き出された事前準備のお陰で、本来であればのんびり討伐報告を待つことが出来たはずの一般人が、彼等の所為で思いもかけない混乱に陥っていたようだ。

「それを大衆紙が妄想を追加して更に煽ったってことね」

「そ。で、さっき言った暴動が起こる直前にまでなったわけ」

 ある意味、文明の進化が余計な騒動を産んだと言ってもいいだろう。印刷技術が進まなければ大衆紙が余計なことを叫ぶこともなく、結果王都が混乱することもなかっただろうし。実際には三年と言う最短で終わっているのだから。


 私はそこまで聞いて大きくため息を付いた。

「そこまで混乱してたなんて知らなかったわ」

 当時、積極的に情報を集めようとしていなかった後ろめたさを少々感じながら、そう呟く。

「ま、そうだろうなぁ。王都で起こったような混乱を他の地域にまで招くのはまずいってんで、基本輸送ルートに載せないようにしてたんだよ。胡散臭くても良いからちょっとでも情報が欲しいって言う地方領主はツテを使って手に入れてたみたいだけどな。……ただまあ、アンナ。お前がその手の情報を手に入れにくかった理由はもうひとつあってな?」

 そう言うと、兄は私にジト目を向けてきた。

 まさか、私が聖女とライナスの関係を知りたくないからと、極力話を聞こうとしていなかったのがバレているのだろうか。


 と思ったら、思わぬところを突かれた。

「お前さー、気がついたら勇者チームよりも先行してヤバいところまで突進していただろ」

 思わず目をパチクリとさせてから……思い当たることが多すぎて目を逸らした。

「……いや、まさかそんな手前で停まってると思ってなかったから……」

 私の中では勇者チームが順当に歩を進めていたのだ。だからサクサクと動き回っていたんだけど……。


 私のネガティブ思考がバレてなかったのは良かったけれど、情報を手に入れようとしなかった弊害が、まさかこんな跳ね返りをしてくるとは……。

お読みいただきありがとうございます。

次は20時に。

タイトル、後半外しました。

ラブコメは諦めていませんが、主軸ではなくなっている自覚はあります。

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