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私は「万が一の救済者だ」と神様に言われていました。  作者: 杜槻 二花/三稜


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サポート一家は祝勝会にいくことになりました。

 ところで私の現世名はアンナと言う。

 

 聖女降臨があった当時は十三歳の未成年、ちょっとばかり治癒魔法が使える裕福な商家の娘だ。

 この国では治癒魔法が使えると、そこそこ将来が優遇される。

 家が確かにある子ども達は、将来への箔付けとして教会付属治療院で奉仕活動をするし、孤児や経済的に不安定な家の子ども達は、治療師として多方に就職先が見つかる。

 どの階級に生まれたとしても、基本食いっぱぐれのない生活を手に入れる事ができる能力なのだ。

 かつ、私自身は裕福な商家の娘なので、治癒魔法を持っていなかったとしても持参金がそれなりに用意して貰えるし、なんだったら「無理に結婚なんてしなくていいんだからね!」と仲良し家族たちは私の将来に寛大だ。

 将来どのルートを選んでも「人生勝ったな……!」と言えるだろう、大変ステキな環境を謳歌している。神様ありがとうございます。


 そんな私は、魔王討伐期間中何をしていたかと言うと、地方の治癒院を点々と飛び回りながら、治療活動と物資の補給活動(格安)を行っていた。

 つまり、商人Aの娘として、サポートキャラに勤しんでいたのである。とは言っても勇者チームと直接関わることはない。

 魔王復活以降、続々と魔王の配下があちこちを跋扈(ばっこ)し町や村を襲うので、勇者チーム以外の騎士や傭兵も各地で討伐に駆り出され、つまり治癒師たちも治療の為にと各地を飛び回る羽目になった。

 更には、実家が王国内でも有数の商会だったこともあり、討伐隊への補給活動物資(格安)や被災地への支援(一部無償)なども含めて、率先して運搬計画の一端に関わった。

 おかげさまで血なまぐさい現場を見ることになったものの、商業の勉強を実践で行い、治癒師としての立場を確かなものとしながら、現場の人たちに感謝されるという、中々得難い経験と名声を手に入れることができた。

 そうして私が十六歳になった頃、勇者チームが魔王討伐に成功したという知らせが届いた。それが三ヶ月程前のことになる。


 治療師として、また家業の手伝いとして各地を飛び回っていた私も、家族や治療院の上司と今後の打ち合わせをするために王都へ戻ったのがそこから一月(ひとつき)後。

 討伐は終わったものの、怪我人や町村の復興はこれからも続くので、治癒師の派遣や物資の補給は当分続く。

 この頃の私は、結婚なんてしなくてもいいかなーと、将来は今回各地を飛び回って作った基盤を元に、治癒院を各地に作って実家の商いを絡めた事業にするのも有りなのでは?などと思っていた。


 ******


「おー、可愛い可愛い!」

 感情があまり伴っていない、家族ならではの褒め言葉が背後から届く。

 振り返ると、礼服を着た兄がドアに寄りかかって立っていた。


 今日は魔王討伐の凱旋式と祝勝会が行われる。

 凱旋式の始まりであるパレードは既に始まっていて、王都のそこら中からいつもとは違う賑やかな音やざわめきが聞こえてきている。

 我が家は全員王城で開かれる祝勝会の方に呼ばれているため、パレードを見ずに準備に取り掛かっていた。

 今頃パレードの中心では、勇者様や聖女様を始めとした勇者チームのメンバーや、討伐隊の主だった騎士団員や魔術師が行進していることだろう。勿論ライナスも。

 パレードの後は、謁見の間で王からの正式な労いと報奨が授与されるらしい。その後、大広間で祝勝会。

 

 商人として補給物資や救援物資で走り回った我が家は、報奨をいただく対象になっているそうだ。

 謁見の間に入って報奨を授与されるのは父だけで、私達兄妹は母を伴って先に祝勝会の会場へ行く予定だ。祝勝会へのご招待もご褒美のひとつらしい。

 三年前の壮行会がドレスを着た最後だろうか。あのときはまだ十三歳だったので、確かに可愛いの範疇だったように思う。

 しかし十六歳になった今、この三年間の奉仕活動の成果と言おうか、王都のお嬢様方より少々ガタイが良く……日焼けもしていて、髪も少々傷んでいる。

 戻ってきてから母に言われるまま人の手も借りつつメンテナンスして見たものの、一ヶ月ではフルリペア出来てはいない。

 なので、兄の「可愛い可愛い」は、久方ぶりにドレスを着た私に対する、とってつけた褒め言葉である。

 思わず、「心にもないことを」と私が()めつけると、「末っ子はいつまで経っても可愛いだからなぁ」ととても良い笑顔で兄が応えた。

 まあ結婚相手を探すつもりも今のところはないし、ダンスを踊る予定もない。パーティーでは飲み食いを中心に楽しもうかな、と考えているので、悪目立ちしなければ良い程度に整っていれば、私としては十分だ。


「ところで兄さん。ちょっと変な噂があるって聞いたんだけど」

 支度を終えて兄の傍による。そろそろ兄には婚約者を選ぶ必要があるのではと思うのだけど、この三年は商い……魔王討伐の影響もあって、嫁探しは出来なかったらしい。そんなわけで、今日の私をエスコートするのは兄だ。

「噂ねぇ……どれのこと?」

 兄はニマニマと笑いながら首を傾げた。商いに情報の精査は必要なこと。兄のことだから山程ある噂話の把握も、そしてその真偽も確認していることだろう。

 その噂が概ね二週間程前から、つまり勇者チームが凱旋してから出回っている噂。


「聖女様が勇者チームを全員落とした、と言う噂」


 落とした、とはつまり、恋愛的な意味で。前世で言うところの、所謂(いわゆる)逆ハーレム、と呼ばれるものだ。

 ちなみに勇者チームが何名かと言うと、都合聖女を除いて五人ほどいる。勇者、聖騎士(ライナス)、魔術師、司祭、狩人。

 そしてなんと、「凱旋後に王太子までも籠絡した」と言う噂。

 都合六人、勇者チームメンバーならぬ、聖女様の逆ハーレムメンバー。

 もし本当なら凄いものだ。もしかしてお相手は日替りで行うのか。成る程、六人だから週一日だけ休養日があるわけか(下品発想)。

 

「あーそっちの噂ねー……どうもホントウ、らしい」

 そう言った途端、兄の目が虚ろになった。ああ、そういや出発前の壮行会で遠目に見た聖女様を「清楚系美少女ー!可愛いー!」とそれはそれは熱の籠もった声で言っていたのを思い出した。あの時の「可愛いー!」は、妹への「可愛い可愛い」とは段違いの熱意でしたね、おにいさま。

ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

次回続きます。

ーーー

なろうチアーズイベント参加2週目。予定では来週の火曜日に更新します。

一応文字数的にイベント分は既に書いて溜め込んでいるので、順調に書き進めることができれば、早めのUPも目論みたいところです。

★評価やリアクションで反応いただけますと大変嬉しく思います。

また、他作品もUPしていますので、お暇な時にでもお読みいただければ嬉しいです。

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