大衆紙は妄想力で出来ている。
「さてさて、大衆紙の方はっと」
『祝勝会の片隅で起こった王太子殿下の婚約者と聖女様の熾烈なバトル!』
『なんと、祝勝会で解放されていた庭園の片隅で、王太子殿下のご婚約者様と聖女様の戦いが繰り広げられていた!
ご婚約者様の声は聞こえなかったものの、聖女様のお声は大きく「そんな言い方身分差別過ぎます!」や「彼女たちは悪くありません!」等の言葉が声高々に聞こえてきた。
彼女たちが言い争っていた庭園は、招待された市民に提供されたスペース。本来高位貴族である彼女たちが楽しむ場所ではなかった。恐らく祝勝会の雰囲気を楽しみたい聖女様がお忍びで足を運んだのを、ご婚約者様が追いかけて身分の低い者たちに混ざるものではない、などと悪しざまに叱責したに違いない。その上、聖女様を見失ってしまった女騎士達に対しても叱責したのだろう。後から追いかけてきた職務怠慢な騎士姿の女三人にすら「彼女たちは悪くありません!」と言って庇った聖女様の美しい姿は、まるでファーレイが描いた宗教画のようだった。対してご婚約者様の醜いことよ!わざわざ市民スペースにまで追いかけて来て悪しざまに罵るような性格だからこそ、王太子殿下に捨てられたのだと理解するべきだ!』
「ほぼ妄想。支離滅裂だけど頭大丈夫?」
「アンナが空気」
「ファーレイの宗教画が汚れてしまうよ。一緒にしないで欲しいねぇ」
「次行こう次」
『醜い聖女と国母に相応しい公爵令嬢』
『祝勝会の片隅で、小さな事件が起こっていたようだ。
何故か上流階級向けスペースの庭園にひとりで出歩いていた聖女。庭園を歩いていた一般市民と思われる少女に、背中からぶつかり何やら難癖をつけていたようだ。
彼女が拝礼をしても頭を上げることを許さず、延々と言葉をぶつけていたる様は酷いもの。少女を助けねばと周囲の人々が色めき立ったところに、王太子殿下のご婚約者であるアドリアーナ・テレーズ・メディナ・クローディオ公爵令嬢が颯爽と現れ、少女を救い上げた。
公爵令嬢は落ち着いた様子で聖女を諭していたが、聖女は聞き取れないほどの甲高い声で終始激昂。公爵令嬢は、後からやって来た護衛と思しき女騎士に聖女を引き渡し、あっさりとその場を治めた。
どうやら聖女は自分につけられた護衛を撒いて、好き勝手に散策していたらしい。今代の聖女は問題行動が多い。そのような無責任かつ迂闊な行動を繰り返していると、一代前の聖女のように刺されてしまってもおかしくない。そうなったとしても同情の余地もないが。』
「目線が逆だとこうなるのかぁ」
「お、アンナがちょっと出てきたな」
「まるで一代前の聖女様が今代聖女様と同類みたいな書き方をしているのは許せないねぇ」
「ラスイチは?」
『ハーレム聖女、気高きブロンテの守護女神を貶める!』
「ブォッフォ」
「あー、ここかぁ」
「おや、相手がアンナだってバレちゃったか」
「姿絵似てないから、てっきり顔知らないんだと思ってた」
「それは私が似せないように言ってただけだよ」
「……どういうことです?」
『皆様は覚えていらっしゃるだろうか。当新聞で幾度となく報じた、魔獣討伐の地に降り立ったブロンテの守護女神のことを!
彼女は治癒師としての活動を一旦休止し、今回開催された祝勝会に参加するため、王都へと戻って来ていたのだ。
祝勝会会場として解放された上流階級用スペースの庭園で、美しく着飾った彼女がゆっくりと散策していたところ、護衛を撒いた聖女が突撃し、敬意を示した拝礼をする彼女を無視して何やら難癖をつけ始めた。我らの女神に頭を下げさせたまま声高に言い募る聖女は醜く、彼女を聖女として敬い続けることに疑問が残る姿であった。
その後、行方をくらましていた聖女を追いかけてきたらしい王太子殿下のご婚約者アドリアーナ・テレーズ・メディナ・クローディオ公爵令嬢により、女神は聖女の悪行から救い出された。
聖女は護衛の騎士に連行されてそのまま退場したが、女神とご婚約者様はそのまま和やかに談笑なさっていたご様子。どのようなお話をされていたかは残念ながら聞き取れなかったが、お二人の仲が深まればこの国は安泰であろう。ブロンテの守護女神と未来の国母に栄光あれ!
尚、ブロンテの守護女神は、今回賢明にも聖女のハーレムに参加しなかった聖騎士ライナスと婚約するらしいとの情報がある。続報を待たれたし』
「え、勘弁してほしいんだけど。待って、ホント待って、勘弁して」
「おー……流石だなぁ。相変わらずとも言うけど」
「うーん、ライナスとのことまで書いちゃったか。……彼とはもう一度話をしないとねぇ」
「えっ、待って、これもしかして……私、結構この新聞に載ってたってこと……?」
「あー確か、二、三ヶ月にいっぺんくらいの間隔で報じられてたんじゃなかったかな。道路の整備が整い始めてからだから……二年弱くらい?確か十回も載ってねぇよ。八回くらい?」
「八回も?私の情報が?」
「うん」
「新聞に?」
「うん」
「嘘でしょぉ……」
思わず頭を抱える。
「本当なんだな、これが」
「大丈夫だよ。掲載前に内容を確認してるからね」
まさか父の指導入りで掲載されているとは思わなかった。
「……いや、そうじゃなくて、そもそも掲載止めてください!」
諸悪の根源は、この大衆紙か!
ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。
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ラブコメを書くことは誠意努力続ける所存ですが、それとは別にタイトルの後半を既に外したくなっています(^q^)。
どこかのタイミングで衝動的に外す可能性がありますが、察して戴けると有り難いです。




