なんでバレていないと思ってたの?と言われましても。
今回の更新から、タイトルが変更になっています。
より主人公の内心に近く、後半はラブコメからの退路を塞ぐつもりで。
詳細(?)は活動報告の何処かに。
「何故って……むしろなんでバレていないと思ってたの?」
不思議そうな表情を浮かべて首を傾げながら聞き返してくる父。……とても心が痛い。
「……それは、口に出して言った覚えが……ないので……。と言うか、どこからどこまでバレているのです?」
父はちらと考える素振りを見せた。
「家族全員?と古参の使用人。あとはまあ、ライナスのご家族もだねぇ。ライナス本人はどうかなぁ……あれはちょっと鈍感だからなぁ……」
その言葉を聞いて、思わず両手で顔を隠して俯いた。
……まさかの、ライナスを除いた全員!
ライナスに気が付かれていないだけマシなのか。いや、本当にバレてないのか……!?もしやそれで、ちょうど良いとか思われて求婚されてる?……いや、それだと『討伐が終わったら』とかいう死亡フラグ発言と時系列が合わないか。事実はどうなんだ。
動揺している私に追い打ちを掛けるように、
「だってさー、普段は商売用笑顔の重装備ができるのに、ライナスが来たらツンツンしてる割にチラチラ様子を伺っていたよね?三歳の時点で既にライナスの後ろをちょこちょこついて歩き、座る時は膝に載せて貰えないとむくれるか泣くかしていたし、四歳の時はライナスにオヤツをあーんして貰うのが好きだったよね?」
子ども時代の微笑ましい失敗を楽しげに語る、たまに会う親戚のおばちゃん風味で、にこにこと語る父。
「……幼すぎて記憶にございません」
居た堪れなさMAXで、追わず顔を両手で覆ったまま膝に両肘をついた。
……覚えていないが、なんとなく、そんなことがあったような、気が、する。……多分あったわ。
「五歳の時は、ロイがライナスと一緒にライナスの父から剣術習うって話が出た途端、一緒に習うと要求してきただろう。メリィが女の子なのに剣術なんてと嘆いても頑なに意志を一切曲げなかった。その癖ライナスが騎士団入りしてしまったら、真剣味が今ひとつ」
「…………」
先程の姿勢のままどんどんと前のめりに体を傾ける。……もう、穴を掘って埋まりたい。
その件は当然ガッツリ覚えている。しかもなんでライナスがいなくなったあと、テンションが落ちてたことまでバレてるんだろう……わからないようにしてたはずなのに。
「ライナスが騎士団に入ってからは、わかりやすい好意を見せることはなくなったけど、九歳の時一緒に行ったピクニックで貰った花冠、今も……」
「ストップです!そこまで!そこまでです!」
思わずソファから立ち上がり、テーブル向こうまで手を伸ばして、父の口を塞ぐ。
何故、花冠をドライフラワーにして保存していることまで知っているのか。部屋に表立って飾ってもいないのに。こっそり小物入れの二重底に隠してあるというのに。
父は、私の手から少し逃れて、やっぱり兄の親なんだなぁと思うニマニマとした笑みを浮かべながら、更に言った。
「アンナはどちらかと言えば冷静に立ち回るタイプだし、家の商売を理解してからは、内心を表に出さないのも上手くなったと思うよ。でも、ライナスが来るといつもと微妙に挙動が違うんだよねぇ。表情はどちらかと言えば無表情になって気にしてないポーズを取っているのに、目だけはライナスの方を向いている。だからこそ気がついたと言うか。まぁ身内ならではの理解だと思ったら良いよ」
「……そんなにわかりやすいと……?」
「家族にはね。大丈夫、他所の人にはその差がわからないよ。……多分ね」
「……多分」
多分がついた所為で、何も安心できない言葉だ。
「そもそも騎士団に入った後のライナスとは、殆ど顔を合わせる機会がなかっただろう?君は他の女の子たちみたいに差し入れ持って行ったりしていなかったし、そのうち教会の治癒師として活動するようになってからは忙しくしていたし、現状どうなんだろうなとは思っていたんだが」
「……思っていたんだが?」
なんとかそれまで座っていたソファにもう一度腰を下ろし、父の話を促す。正直聞きたくないが、聞いておかないと今後の対処が出来ない。……対処出来ることがあるなら、だが。
「アンナが帰ってくるからと使用人が掃除を念入りにしたんだよ。その時に花冠の入った小物入れを」
「成る程理解しました!そこまでで!やっぱりそこまででお願いします!」
父の前で両手をブンブンと振って止める。
「因みにリサが見つけたのは偶然だからね。怒ったり八つ当たりしないように」
使用人に気を使う優しさのある父。それを娘にも向けてください。
「……そのまま心の中に秘めておいて貰えたら良かったのに……」
結局両手で顔を隠し俯く態勢に戻ってしまう。絶対に顔が赤い。正直人に顔を見せたくない。
「少し形が崩れてしまったんだよ。それでメリィに相談して修繕したんだ。大丈夫、ふたりともアンナが隠しているんだから気が付かなかったことにしましょうと、他には伝えずに黙ってくれているよ」
つまり母も知っていると。しかし。
「……伝えなかった話を、何故父さんがご存知なので?」
手から顔を上げて、父を睨みつける。
「おっと……しまったしまった」
父はわざとらしく自分で口を手で塞いでみせる。くるりと目を回してみた姿は、悪いとは全く思っていない様子だ。
「しまったじゃないんですよ!」
流石に兄のように殴るわけにも行かない。
「まあまあ、私もこんなことがなかったら口に出して言ってないよ……。因みに他の子どもたちは知らないから」
「兄さんや姉さんに知られていたら死ねる……」
私はもう一度両手で顔を覆うと、がっくりと肩を落とした。……できればバレてると判った辺りからの私の記憶を消したい。
「そんなことで死なれても困るよ。もしも君がライナスを選ぶならそれどころじゃないだろう。選んだ時は堂々としなさいよ。そんなことを恥ずかしがってちゃ、他の候補に飲まれて一瞬で目論見がご破算になるよ」
父はまるで私がライナスを選ぶだろう、と確信しているかのように言う。
「……肝に命じます」
そう言って、ソファの上で姿勢を正した。
「さて、お茶会は三日後だ。それまでにしっかり考えて準備を整えなさい。アンナはどこに出しても恥ずかしくない娘だと思っているよ。フォローは万全にできるよう整えておくから、上手に暴れておいで」
顔を上げると、父は余裕を持った笑顔を浮かべながら私を見ていた。思わずため息をつきそうになったものの堪える。
「承知しました」
何を選ぶにしても、ここは父の期待に応えねばね、と決意を新たに脳内をフル回転させて、今後の対応を模索することにした。
アンナに遮られていなかったら、アンナが治癒魔法を覚えた時に、教会での奉仕活動をすることに決めた理由にまで言及するつもりだった父。
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ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
多分、ちょっとラブコメ(但しヒーロー不在)色が出たかなと思います。
出てるといいなぁ……。
ブックマークして続きをお待ちいただけると幸いです。




