25式戦車開発物語
22式小銃と制服が完成して問題無く訓練が出来る様になった2022年の夏、財務大臣はこう言った。
「戦車が欲しいから作るか買うかしてね。」
自動小銃ですら実物と技術者達からのアドバイスが必要だったのに戦車なんて作れるわけない。
そう思った軍務庁設置室室長、田中華澄を始めとする官僚達は在日米国大使館に向かい
「戦車を買わせて欲しい。」
と頼み込み、駐在武官に
「今はもうM1エイブラムス作ってませんし…」
「日本は10式を開発してるんだから売らなくてもそれ作れば良いじゃないですか。」
「そもそも何で自衛隊じゃなくて財務省が戦車持つんですか?要らなくないですか?」
と断られた。
アメリカの戦車がダメならドイツの戦車かフランスの戦車、いやイタリアの戦車でも買えるなら何でもいいとそれぞれの駐日大使館に向かったが同じ様に断られてしまい軍務庁は戦車の配備を諦めるか独自で開発するしか無くなった。
諦めるか、作るにしてもせめて装甲車で我慢してもらう様に説得しようと財務大臣の所へ向かうと
「ん?アメリカとかドイツとかにしか聞いていないのかい?」
「はい。10式を採用する訳にも行きませんし…他に買える国もいませんし…」
「旧東側諸国の…ロシアとかには聞いてないのか?」
「いや、買えるわけないでしょう。」
「さっきWEBで調べたらロシアのT-35とかT-72っていう戦車が買えると出て来たが…」
そんな事は無いだろうと思いつつ念の為に田中室長が調べてみると主砲の発射機構や機銃以外、つまり車体は数十万ドルで販売されていた。
「これに対戦車ミサイルと機銃を乗せたら戦車になるんじゃないかな。」
こうして少なくとも戦車の車体を作る目処は立ってしまった。
2022年9月、財務省のとある官僚の名義で購入したT-72が新潟港に配達された。
本庁舎のある東京の虎ノ門まで運ぼうとした所で大きな問題が発覚する。
「これ…どうやって輸送するの?」
本来はJ○貨物の車両に載せて東京まで運ぶ予定だったものの○R貨物の車両にT-72が載らなかった為キャンセル料を支払って道路で東京まで運ぶ事にした。
この時は大型特殊自動車免許を持っている職員が新潟税関にいた為、特殊車両通行許可申請と制限外許可申請を提出した上で東京まで運ぶ事が出来たものの移動に関わった職員達の中でとある共通認識が出来た。
「鉄道で運べる用に作ってやる…」
さて、T-72の車体をリバースエンジニアリングする事により構造や大まかな作り方を理解した職員達は開発する戦車の構想を纏めた。
まず車体は鉄道で輸送できる様に全長は車体長の6.86mを上限にする事、全幅は3mにまで縮める事、重量も35tにまで抑える事が決まった。
車内配置は、T-72と同様に操縦手は車体前部に搭乗するものの車長と砲手はT-72でいう弾薬庫の位置に搭乗し、車内から砲塔を操作する仕様に決定された。また、弾薬は砲塔に収められ自動装填装置で装填される事となった他、輸送車両を調達する為の予算を削減する為に砲塔がある位置より後ろ側の部分は兵員や物資を載せる事が可能な様にスペースが設ける事も決定している。
装甲は、基本的にT-72と同様の厚さ、材質を採用するものの重量削減の為に車両後部に設けられたスペースと外部を隔てる扉の部分は工具箱を兼ねた空間装甲が使用される事が決まっている。
主兵装は在日アメリカ大使館に頼み込みなんとか購入したFGM-148ジャンベリン対戦車ミサイル、副兵装は陸上自衛隊が89式装甲戦闘車等に搭載しているドイツのエ○コン社(現在のライ○メタル社)が開発した35mmKDE機関砲1門が選定された。
FGM-148ジャンベリン対戦車ミサイルの発射機は、自動装填装置を使用する為に全長を延長した上で筒身にヒンジを有する拳銃の中折式の様な構造に変更されている。
また、余談だが民生品のカーナビや必要な程度の最大後進速度の他、緊急通行の際法律上必要な赤色灯の搭載も盛り込まれている。
これらの構想に基づいて試作された一次試作車が2024年12月に虎ノ門に作られた軍務庁本庁舎で報道関係者や財務大臣、防衛省の官僚等に公開された。
「…なにこれ?」
一次試作車の公開に立ち会った人々は、一斉にこの様な疑問を頭に浮かべた。
10式戦車やM1エイブラムスの様な一般的な戦車を想定していたのに出て来たのはそれらの戦車より少し細長く、そして車体後部に兵員や物資を載せる為に高めに作られた車体に一昔前の74式戦車やソ連のT-72等が採用している様な半球に近い砲塔、それも口径は違うのに砲身長は似た様なサイズの砲身を2つ縦に並べて配置されている砲塔が搭載された車両である。
2つの砲身が縦に並べられている事と赤色灯が搭載されている以外は普通の軍用車両に見えなくもない為財務大臣は、
「上側に付けられた機関砲と下側に付けられた対戦車ミサイル、あれ別々の車体に載せよう。あ、でも対戦車ミサイルだけ載せる方には機関銃も搭載してね。」
とだけ言い残し、帰っていった。
そうして開発された二次試作車はFGM-148ジャンベリン対戦車ミサイルの発射機とブローニングM2重機関銃を搭載したA型と35mmKDE機関砲1門を搭載したB型の2種類が開発、制式化され、それぞれが25式戦車A型25式戦車B型として量産される事となった。
こんばんは。
エピソードタイトルは前話と同様に25式戦車〜○○〜という形式で書こうと思ったのですが○○の部分が思いつかなかった結果開発物語という名称に落ち着きました。
この○○の部分はどのように考えれば良いのでしょうか…
さて、次のお話は25式戦車を輸送する為の装甲列車になると思います。