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9.完璧と歪

 外が白んでいるけど……なんとか、できた!

 私は欠伸をして窓を開けて、朝の風を部屋に入れる。


「何とかできた……!」


 私は机に戻って、完成品をまじまじと見つめる。

 ジンジャーマンクッキーみたいなぬいぐるみ――刺繍も頑張ったし、白い羽も付けた。


 あとは、ホシがこれを気に入ってくれたら……


「何をしておるのだ?」

「うわあっ!」


 急に耳元で声がしたからびっくりした!

 ひっくり返りかけた私を見て、ホシは訝しげに私を見る。


「随分と気が抜けておらんか、お主……ん? 何なのだその人形は?」


 机の上に置いていた完成品を見て、ホシは興味を示した。

 うん、良い調子……!


「あ……アンタの、器、なんだけど……」

「ふむ?」

「この人形で、代用品にならないかな?」


 私の疑問に、ホシは考え込むような素振をし、一言。


「ならないな」

「何で!」

「いろいろと条件があるのだ。これでは代用品にならん」


 捨てるような言い方に、私はカチンときた。


「それでも、もうちょっと言い方ってのがあるでしょう!」

「何をそんなに怒っているのだ?」

「徹夜でこんなに頑張って作ったんだから、少しぐらいは何か言い方を考えてくれないの? 頑張って作ったのに!」


 私の言葉に、ホシは驚いた様だった。


「お主、寝ろと言ったであろう! 我は徹夜など頼んでおらんし、夜は寝るものだぞ!」

「この世界に長居したくないから寝る間も惜しんで作ったの! なのにそんなに言い捨てるような言い方はないでしょう!」

「いったん落ち着け! お主、様子がおかしいぞ?」


 ――薬を飲んだの? 何で自分で管理できないの?


「うるさい! ()()()()()()()()っていうから、頑張ってるのに! 何で何で私ばっかり!」


「落ち着け、アイリ!」


 私はハッと我に返る。

 何だろう、いきなり怒りがスッと引いた。


 ようやく戻った視界の中で、ホシが困ったように私を見ている。


「我は、お主だけで何でもどうにかできるとは考えておらん。お主にはまだ時間と基盤づくりが必要だ。だから、今無理をする必要はない。解るか?」


 ――無理をさせないでください。長い時間をかけないと、この病気は治らないのです。

 元居た世界での主治医の言葉を思い出した。

 無理を、してはいけない。


「……それは、そうだけど」


 でも……()()()()()()()()()って、周りの大人は言うのに……


「お主にしかできないことを頼むのだ。お主が倒れたら困る。それも解るか?」

「……そうなの?」

「何だ、その初めて聞いたと言わんばかりの顔!」


 やっぱりカチンときて私は口を開く。


「元はと言えばアンタが――」


 その時だった。


「おお、これは……とても素晴らしい!」


 聞いたことのない声が、いきなり部屋の中に響いた。

 慌てて声のした方を見た。


 ――ぬいぐるみの人形が、動いている!


「これはベネットにも知らせなくては!」


 そう言ったぬいぐるみは、すぐさま窓の外へと飛んで行ってしまった。


 ……え?


「ど、泥棒―!!」


 私の叫び声が、森の中に木霊した。


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