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白蓮の結晶  作者: 紫雨
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第3話「桜花組」

目が覚めると、何故か僕は椅子に縛り付けられていた。


どういう状況!?と叫びたいところだが、口にも封がしてあって開かない。


少し……というかすごく周りが気になる。


明らかに正規の用途で使用されていない錆びついた工具が雑多に置かれている。


そして何より、異常なまでに鉄の匂いが漂っている。


あれ?もしかして僕ここで殺される?


生き残っていた喜びに浸る暇さえない。一体僕が何をしたっていうんだよ……。天に嘆こうとしても亀裂の入った天井しか見えない。


ガチャリ。


重厚な鉄の扉が開く。


「やぁ、お目覚めかい?」


黒髪のまだ若そうな少し背丈の高い男が話しかけてきた。


お目覚めかい?と言われても、口を開けないんですけど。


「相当暴れると思ってたんだけど……その様子だとおとなしくしてたみたいだね。」


そういうと男は口に付いている物を取り外してくれた。


そんな暴れるような恰好してないと思うんだけど……なんとなくショック。


男は近くにあった小洒落た椅子を持ってきて、僕の前に逆座りで座った。ちょっと距離が近い。じっくり観察されるように見られてこそばゆく感じる。


「……レイ君、だったかな。」


「なんで、僕の名前を?」

予想だにしない発言に思わず目を丸くした。


「名字はなんていうんだい?」


名字……あんまり聞かれたくないなぁ。だって僕自分の親に会ったことないんだもの。


「ないんです。ホントはあるかもしれないけど、知らないです。」


そういうと、男は少し可笑しかったようで笑った。


「……どおりでいくら調べても分からなかったわけだ。いやはや、全くの無駄骨だったようだ。」


何を調べられたんだろう。というか、ここ何処なんだ。


男は少し伸びをしてから行った。


「ここがどこかって? 海の上だよ。」


何故か言いたいことが言葉になる前に答えてくれた。え?何怖い。まだ何も言ってないのに。てか海の上?何それもっと怖い。


「君の顔は正直者だね。それだけ目がキョロキョロしてたら俺じゃなくても君の言いたいことなんて分かるよ。」


カモメの鳴く音が聞こえた。ほんとに海の上なのか…


「まぁ、そんなことはいいんだ。本題に入ろう。君、桜花組って知ってるかい?」


桜花組……なんとなく耳にしたことはある。でも…いい噂は聞かない。異石町を治めている「(さかずき)」と喧嘩してるって聞くし、何なら杯の重役を暗殺したって囁かれてるし。


「あんまり、いいイメージはないですけど……。」


ちょっと目線をそらす。


顎をさすりながらすました顔で男が言う


「そうか。確かに良いことをしてる気はしないな。まぁそれもこれもやりたくてやってるわけじゃないんだよ。その暗殺だって目的への一種の手段でしかない。和平が早い道なら喧嘩なんてしないからね。」


へ?ていうか暗殺のこと僕何も言ってないけど……。


「そうだ、自己紹介がまだだったね。桜花組7大幹部の内の1人、銀ノ瀬 凱斗(ぎんのせ かいと)だ。よろしく。」


数回瞬きしてから、呼吸を整える。さっきの答えちょっと不味いんじゃないか。……覆水盆に返らず、よな。


「す…すいません!」


少し驚いた顔で男は言う。


「謝る必要なんてないんだ。俺は君にちょっとした頼みごとがあるんだ。」


「た…頼み事?」


「桜花組に入らないかい?」


あたりを見回す。断った時を考えると少し身震いした。


「ちなみに嫌と言ったら……?」


(ボス)に聞いてみるけど、たぶんここで俺がそのまま処分(ころ)すかな。」


デスヨネ~。なんとなくわかってたけど、分かりたくなかったなぁ。そんなにサラッという言葉じゃないよ、コロスって。一体何なんだこの人。まだ若いはずなのに、覇気というか、貫禄というか、只ならぬ気配を感じる。


「入ります…。」


「そうこなくっちゃあね。」


他に選択肢ないじゃんと思いつつ、命が取られないと分かると、不安を押しのけて安心感がやってきた。


はぁ~。一気に気が抜けた。


銀ノ瀬という男は拘束具を外してくれた。


扉が開く。


「……わぁ。」


そこに広がってたのは雲一つない空に浮かんだ太陽に照らされた、目が痛いくらいに青々とした大海原だった。見たところ尋常じゃないくらい大きい船らしい。確かに海の上だな……。

誤字脱字あったら優しくぶん殴って教えてください。

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