第14話「岩混の大狂人」
「ふぇぇ~!?ワタクシこんなでっかいのと戦えないですよぉ~!」
「さっきの狂人の亡骸があるだろう。あれ、使え。」
「嫌ですよぉ~。アルティメットスーパーゴリゴリ君ロボがいいですよぉ~。」
「グダグダ言ってねぇで働け阿呆。アレに宿っている異光石の力が残っているうちさっさとに使え。」
「ちゃんと守ってくださいよぉ~?」
そういうと豊田さんは、木に寄りかかって気を失ったかのようにへたり込み、もぬけの殻になってしまった。
「レイは一旦下がってな。他の奴らが来るまで時間を稼ぐ。」
岩で体を構成した、巨大な狂人から繰り出される大ぶりの攻撃を銀ノ瀬さんは、いともたやすく避ける。
炎を後ろに向けて放ち、飛び上がるようにして、胴体へ強烈な蹴りを入れる。
「……うん、ビクともしない。」
岩混は地面から大きな岩を持ち上げ、銀ノ瀬さんに向かって投じる。
それを踏み台にして、銀ノ瀬さんは空高く舞い上がった。
両手を広げ、太陽のような火球を作り上げる。月も見えぬ常夜に神々しい明かりが灯される。
「このくらいでどうよ。」
火球を、矢じりのように鋭く尖らせ、岩混に打ち込んだ。
一瞬キューと甲高い音がなり、岩混の胸にぽっかりと風穴があいた。
岩混はそのまま仰向けになって倒れた。
しかし、ゆっくりとまた立ち直る。大きな岩を持ち上げ、胸に空いた穴はめると、何事もなかったかのように腕を振り下ろす。銀ノ瀬さんは気だるそうに躱す。
「今度のはでっかいねぇ~。」
ようやく響さんたちが戻ってきた。
「じゃ、後は任せるね。」
「おうよ。班長は後ろで見といてくれ。」
新島さんが腕を鳴らしながら言った。
「ちょっと、拳ちゃん、最初の一撃だけやらせてくれる?」
「もちろん。姉貴がお好きなように。」
岩混の正面に、響さんが飛び出す。
「どうやら、僕の出番はなさそうだね。ヒバリさんどうする?」
「……私はいい、かな。」
爽さんたちがゆっくりやってきた。
「オラぁ!!」
響さんの拳が岩混に突き刺さる。そこから、岩混の全身に亀裂が走る。
ビキビキと重苦しい音がして、ヒビが岩混の全身に行き渡った時、岩混の体を構成していた岩々がバラバラになって、地面に転がった。
「いっちょあがりぃ!って、オイオイオイオイ。」
バラバラになった岩々が、結合し、また大きな巨人となった。
「まぁ、もう一回バラすまでよ。拳ちゃん、行こうか。」
「おうよ!姉貴!」
目にもとまらぬ速さで、岩混をタコ殴りにしている。
「ったく、キリがねぇな。」
何度砕いたとしても、岩混は再生し、立ち上がってくる。
「別につよかぁねぇんだが、如何せん倒せねぇ。どうします?姉貴。」
「打開策がないねぇ。バラし続けたら倒せる兆しもないし。班長やれない?本気出したら。」
「俺が穴開けたって再生しちまう。……そうだ、お前行ってみるか。」
「えぇ!?」
突然のご指名でびっくりした。そんな、何もできないですよ!?僕。
「おおっ。レイちゃん行けるか?一発かましちゃって~!」
背中を押されるまま、岩混と相対する。見上げてみると、ほぼ、山だ。
大きな大きな岩の拳が振り下ろされる。
……無理だろ、こんなの。