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白蓮の結晶  作者: 紫雨
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第12話「ミニバスの中で。」

「何かあったんですか?」


双葉岬(ふたばみさき)って知ってるか?」


双葉岬……行ったことは無いけど名前は聞いたことがあるな。異石町からは少し離れていたような。でも別に何の変哲もない場所のはずだ。


「知ってるならいいんだ。そこにあった村のいくつかが……消滅した。」


「え?」


「まぁ十中八九狂人(くるいびと)の仕業だろうな。調査に行った隊員曰く家がぺしゃんこに潰されてたんだってよ。てなわけで、とりあえず行こうか。」


「僕も……?」


「もちろん。晴れて対特異課(たいとく)S班に入ったんだから、俺の下で働いてもらうよ。」


「銀ノ瀬さんも来るんですか?」


「あぁ。S班の班長も兼任だからな。被害が広がる前に行くぞ。」


「分かりました……。」


急ぎ足で船を降りると、そこには少し古びた小さなバスが置いてあった。


「じゃじゃ~ん。ミニバス君Mk.2(まーくつー)で~す。」


そこには工具を手に持った豊田さんがいた。


何か思ってたような車じゃないな……。本当にコレ走るのか?


「ムッ。君、あたしのミニバス君Mk.2(まーくつー)をただのオンボロ車だと思ってるな~。ワタクシの手にかかればただの車もさいっこうにイケてるモノに様変わりするのですよ~。最高時速は300キロ!馬力は3000をゆうに超えるのです。御託はいいからさっさと乗り込むのです。」


中には、もう既に2人乗り込んでいた。


「おっ、噂の新入り君じゃん。」


金髪で若干髪がボサボサのお兄ちゃんって感じの人が話しかけてきた。耳にピアスもついててちょっと柄が悪い。


「俺、新島拳二(にいじまけんじ)。お前は?」


「レイっていいます。」


「レイか。よろしくな!ほら、隣座りな。」


他の席はがら空きなのに、強引に隣に座らされた。


「お~、ついに(けん)ちゃんにも後輩かぁ~。感慨深いねぇ~。」


後ろの席から茶髪でショートカットの女性がひょっこりと顔を出してきた。


「私、香澄原(かすみばら)(ひびき)。よろしく~。」


僕の頭をポンポンしながら笑顔で自己紹介してきた。


「俺にも後輩かぁ~。仕事片付いたら歓迎会開いてやるからな、レイ!もちろん姉貴も来ますよね?」


「ったり前よ。とっておきの店予約しとくから、腹空かしとけよ~。」


二人とも、体育会系って感じで、グイグイくるなぁ。響さんに至っては顔がものすごく近い……。


「というか、(そう)先輩ってまだ来てないっすよね?珍しい。」


ちょうど、弓道衣を着た男がバスに乗ってきた。


「すいません、弓の手入れをしていたもので。」


とても大きな弓を持っている。というか、どこかで見たことがあるような……


「あー、新入り……。僕、狐川(こがわ)(そう)っていうから、よろしく。」


眼鏡はかけてるけど、めっちゃ糸目だし、兄弟かな。


「弟が、B番隊にいるよ。」


やっぱり。


「爽ちゃんも歓迎会来るよね~?」


「え?まぁいいですけど。」


弟の翠さんと違って、爽さんは物静かな感じらしい。


「いいねぇ~。今夜は楽しみだね~。」


響さんがほっぺたを両手でふにふにしてくる。ちょっと、恥ずかしい。


「今日は久々にS班全員揃ってるから、にぎやかでいいね~。」


「S班って僕入れて銀ノ瀬さん、豊田さん、響さん、爽さん、新島さんの6人なんですか?」


「え?あ、そうか、まだ紹介してないか、後ろの席にもう一人いるよ~。」


振り向くと、一番後ろに人がいた。気づかなかった……。かなりの長髪で顔が覆われていて、右目しか見えない。如何やら音楽を聴いているようだ。


「お~いヒバリ先ぱーい。新人に自己紹介頼むっす。」


ビクンっと驚いた様子だ。


「……何?急に。」


「隅っこで固まってないでこっち来ましょうよ~。」


ヒバリ、という人は、なかなか目を合わせてくれない。


「いや~……あたし新しい人、苦手だから……。」


「まぁまぁそういわずに。」


新島さんに連れられて、近くまでやってきた。


「えっと……奈輪(なのわ)ヒバリ……です。よろしくお願いします……?」


「レイです、こちらこそお願いします……?」


緊張しているのか、しどろもどろしている。


「よ~しじゃあみんな揃ったね。飛ばしていくよぉ~。」


豊田さんがエンジンを吹かした。


「トップギアでぶっ飛ばすぜぇ~。」


「やめろ、また事故るだろ、お前。」


助手席の銀ノ瀬さんが豊田さんの左手をつかんで止める。


「ふぇ~、せっかく300キロでるのにぃ~。」


「カーチェイスでもする気かよ。」


豊田さんがプクっと頬を膨らませる。


「やっぱ海風は気持ちいいねぇ。」


響さんは片腕を窓にかけて、口笛を吹いている。


「そうっすね、姉貴。」


「……レイ君は何ができるんです?」


爽さんが聞いてきた。……というか特に何もできないですけど。


「確かに!その歳で対特異課(たいとく)S班に入るなんて、どんな能力なの?」


響さんが興味津々な目でこちらを見てくる。


言えることがなくってとりあえず銀ノ瀬のほうを助けを求める目で見る。


「こいつは、先代の狂威咲を持ってる。ボスと同じ特殊な体質だよ。」


「え……!?」


なぜかバスの中に戦慄が走る。


「すげぇな…お前。」


新島さんが目を丸くしてこちらを見てくる。


「いやいや、別に何も僕できないですよ。刀もさっき貰ったばっかりだし、戦うとかもってのほかできないですよ!?そもそも異能力~みたいなのないですよ。そんなにすごい刀なんですか?これ。」


「まぁな、俺の祖父(ぎんのせたつじ)を殺した刀だ。会ったことはねぇがな。」


銀ノ瀬さんのおじいちゃん……?


「数十年前に先代とボスが戦った時にな。銀ノ瀬竜時っていったらしいんだが、赤龍(せきりゅう)って呼ばれててな。その世代で最強の5人、五獣人(ごじゅうびと)でも最強格だったらしい。まぁでも先代に呆気なく殺されちまったみてぇだがな。とりあえず、その刀はやべぇんだよ。色々と。」


「えぇ……。そんな。僕刀なんか使ったことないんですけど……。」



「いずれ使えるようになるだろ。今日は狂人がどんなもんかってのを後ろで見ておきな。勿論倒し方もな。」


「分かりました。」


……ん?なんか速くない?この車。


「何話してる間にトップギアにぶち込んでんだ。」


銀ノ瀬さんが豊田さんをこつんとはじいた。


「バレたか。」


豊田さんはにひひと変な笑い方をした。


「まぁもうちょっとかな~。」


気づいたら周りはもう暗い。


「さ、レイちゃん初陣だね~。」


響さんがほっぺたを人差し指でついてきた。


一体何が始まるのか、想像もつきそうにない。




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