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白蓮の結晶  作者: 紫雨
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第11話「C番隊所属対特異課」

本部の運転手(ドライバー)に送られて海の上に戻ってきた。銀ノ瀬さんはまだ帰っていないらしい。


……どうしよう。夕日に照らされた甲板でまた頭を抱える。どこに行けばいいんだろう。とりあえず部屋に戻っておけばいいんだろうか。とは言っても、荷物を運んだり丸机の上で資料を書いてたり、としっかり仕事してる隊員を横目に部屋に戻るのも気が引ける。


仕方がないのでオリエンテーションでもらった資料に目を通すことにした。丁寧に僕の名前も入っている。


「桜花組C番隊 対特殊異人課S班   レイ様」


名字が入るところが空白で名前が若干右に寄ってるのがちょっと切ない。というか対特殊異人課って何?


とりあえず表紙をめくると船の案内図が載っていた。


”エバーソイル家寄贈の超豪華客船ダイヤ号”


と大きく見出しに書かれている。昨日いろいろ見て回ったが、なんでもあって、ほぼ街だ。それに食堂は無料だし、ご飯も美味しい。そんなこと考えてたらおなかが減ってきた。


その次からは、桜花組に関していろいろと書かれていた。とはいっても仕事内容とか歴史とかじゃなくて福利厚生に関する話だった。休みもあって、給料も前じゃ考えられないくらい高い。意外にもホワイトかもしれない。まぁ仕事じゃないから給料っていうよりお小遣いっていうような感じだけど。


そして、規律がいくつ書かれていた。


一、世界平和に努めること

二、溌溂と業務に勤しむこと

三、柔軟な考えを持つこと


まぁ別に特に目立ったところはないが、世界平和に努めるっていっても、結局何をするんだろうと思ったが、次の頁に書いてあった。



1~4班や対特異課(たいとく)の戦闘員の皆さんの主な業務について。


ー1~4班 日々鍛錬に勤しみ、他組織との戦いに備えに備えること。

ー対特異班 狂人の討伐、力を持つ者との戦闘。



何だかよく分からないなぁ。そもそもで狂人とか力を持つ者とか、まだいまいちピンときていない。


「お困りかね、少年!」


長髪で肌がこんがり焼けて派手な法被を着た男が気づいたら後ろにいた。


「えっと……どちら様で?」


「俺は六治風(むじかぜ)大和(やまと)ってんだ、よろしく!」


手はがっしりしていて、握手の力が強かった。


「ところで少年、困っているようだね。見たところ、もしかして、色恋沙汰か?俺で良ければ相談に乗るぞ!俺は昔から女子(おなご)の世話をしてきたから、少しは力に……


「いやいやいやいや、全然違いますからっ!」


「おぅ、そうか、違ったか。年頃の少年の悩みなんて大体こうだろうと思ったんだがな、すまんすまん。で、一体何を困っているんだ?」


ちょっと流石に溌溂過ぎるような人だ……。


「対特殊異人課っていうのに入るんですけど、ここに書か…


「おっ!君は対特異課(たいとく)に入るのか!俺は対特異課(たいとく)B班隊長、六治風(むじかぜ)大和(やまと)だ!これからよろしく!」


まだ、話の途中だし、自己紹介も握手も二回目ですけど…?


「で、結局何で困っているんだ?」


もう、なんか疲れてきた。


狂人(くるいびと)とか、力を持つ者とかって、何なんですか?」


「何!知らないのか!では俺が教えてあげよう!狂人(くるいびと)っていうのは、異光石に触れてしまって、力が暴走してしまった人間を指すものだ。こいつらは、もはや人の形をしていない化け物だ。触れた異光石の種類によるが、火の化け物になったり水の化け物になったり、能力、姿、形色々だ。単純な能力の強さだけで言ったら俺らより強いが、いかんせん暴れまわるだけだから、対処の仕方はある。力を持つ者っていうのは、異光石に触れた時にたまたま免疫をもってたりして、力を制御できるようになった者のことだな。俺がそうだ。巷ではこの力のことは冥利(みょうり)だとか幻磊術(げんらくじゅつ)だとか呼ばれているな。」


何か聞いたことあるようなないような……。


「せっかくだから、君の力を見せてくれ!」


え?いや……別にそんなのないですけど。


「なんだ?見せれないのか。残念だ。じゃあ代わりに俺が見せてやろう!」


そういって、六治風さんはふっ、と息を吐いた。


ブワッ!とものすごい風が向かってきた。軽く息を吐いただけだよね!?吹き飛ぶかと思った。


あっ、まずい資料が吹き飛ばされた。


「大丈夫だ!少年!」


そういうとスッと息を吸う。


途端にすごい勢いで引っ張られる。髪の毛がちぎれそうだ。


資料も戻ってきた。


「ふぅ~、これで資料は大丈夫、って少年!?」


あれぇ?ここ何処だろ……空!?


「すまない少年!思いっきり息を吹いてしまった!」


甲板に激突する直前、六治風さんが右の拳を円を描くように握り、こちらに向かって振りほどく。


すると六治風の方から風が飛んできて、体はふわりと浮き、ゆっくりと着地した。


「いやー、すまんかった。まぁ誰しもミスはあるもんだから、許してくれ。」


そういうと、資料を返してくれた。


「六治風さん?なんでこんなところにいるんですか?」


どこかから、声が聞こえた。その途端、六治風さんは固まってしまった。


「いやー、あのー、そのー、息抜きも大事っていうか、困っている人がいたっていうか。」


「六治風さん?B班のミーティングって何時からでしたっけ。というかその様子なら忘れてたわけじゃないですよね。会議に隊長が来ないときの副長の気持ち考えたことあります?」


スーツを着た糸目の男がやってきた。


「……違うんだ狐川(こがわ)(みどり)君。決してサボるつもりはなかったんだ。」


「……なんでフルネームなんですか。早く行きますよ。」


「違うんだよぉ~~。」


そう情けない声で嘆きながら、六治風さんは狐川という男に引っ張られていった。



「おぅ、ここにいたのか。」


小走りで銀ノ瀬さんがやってきた。


「一体どうしたんですか?」


銀ノ瀬さんは一つ咳払いをしてこう言った。


「……初任務だ。」

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