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恋唄

異世界恋愛ちゃん「現実世界恋愛おにいちゃんのざぁこ♡ざぁこ♡」

作者: 間咲正樹

本作はあくまでフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係がございません。あらかじめご了承ください。

「やっほー、現実世界恋愛おにいちゃん、元気ー?」

「っ! 異世界恋愛ちゃん……」


 ここは日本有数の小説投稿サイト『小説家になりまっしょい』――通称『まっしょい』。

 そのまっしょいで現実世界恋愛(おれ)の隣に住んでいる異世界恋愛ちゃんが、突然俺の家に入って来た。


「なんの用かな異世界恋愛ちゃん。ちょっと今は忙しいから、できれば後にしてもらいたいんだけど」

「プププー! またそうやって忙しいアピールしちゃってー。どうせ暇なクセにー」

「くっ……!」


 異世界恋愛ちゃんはこれでもかというニヤケ面を浮かべながら、俺を煽ってくる。

 この子は本当に……!


「ねえねえところで今日の日間ランキング、現実世界恋愛おにいちゃんは見たー?」

「……ああ、見たよ」


 朝昼晩と一日三回、日間ランキングが更新されるたび、欠かさずチェックはしている。


「キャハハ! 見たんだー。現実世界恋愛おにいちゃんの一位の作品、今日も日間ポイントは1000くらいだったよねー」

「……ああ、そうだね」


 ここ最近の俺の日間一位は、大体いつもそれくらいだ。


「そっかそっかー。因みにアタシは何ポイントだったか知ってるー?」

「…………1万ポイントでしょ」

「キャハハハハッ!! だーいせーいかーいッ!! つまりアタシと現実世界恋愛おにいちゃんの実力差は、10倍もあるってことなんだよねー。キャハハハハ! やーい、やーい、現実世界恋愛おにいちゃんのざぁこ♡ざぁこ♡」

「――!!」


 孤児院を経営している神父でさえ手が出るレベルの煽り顔を向けてくる異世界恋愛ちゃん。

 ――この瞬間、俺の中で何かがブツンと音を立てて切れた。

 ――君がそういうつもりなら、こちらにも考えがあるよ、異世界恋愛ちゃん。


「確かに日間ランキングでは、俺は君には遠く及ばないかもしれない」

「あれあれー? どうしたの素直に負けを認めちゃってー? 現実世界恋愛おにいちゃんらしくないじゃーん。ププププー」

「でもね」

「?」

「その分俺は、細く長く読者から愛されるタイプなんだよッ!!」

「なっ!?」


 俺が突然声を荒げたことが意外だったのか、それとも俺の言ったことが予想外だったのか、はたまたその両方か、異世界恋愛ちゃんは大きく目を見開いた。


「フ、フン! 負け惜しみはみっともないからやめてよねー? そこまで言うなら証拠を見せてよ、証拠を!」

「ああ、もちろんだとも。ほら、これを見てごらん」

「え?」


 俺は異世界恋愛ちゃんに、()()()()()()()の画面を見せる。


「こ、これは!?」

「これでわかっただろ。年間ランキングポイントだと、一位の作品は、君は約13万に対して、俺は約8万。日間ランキングでは10倍もあった差は、年間ランキングだと1.5倍くらいしかなくなっているんだよ」

「そんな……。で、でもでも、まだポイントではアタシのほうが現実世界恋愛おにいちゃんより上じゃん! 現実世界恋愛おにいちゃんがザコなのは事実じゃん!」


 ふぅん、そういうこと言っちゃうんだね。

 ――じゃあもう、俺も手加減はしないよ。


「これを聞いた後も、同じことが言えるかな?」

「な、何よ……!?」


 途端に怯えた表情になる異世界恋愛ちゃん。

 うんうん、得も言われぬ背徳感があるね。

 俺はとある作品のページを、異世界恋愛ちゃんに見せる。


「……これは?」

「この『リアリスト男子は夢想主義者』という作品は、総合ポイントが14万を超えているうえ、現在絶賛アニメも放送中の、紛れもない大人気作品なんだよ!」

「じゅ、14万!? アニメ化ッ!? ん、んほおおお♡♡♡」


 フフフ、流石に刺激が強かったようだね。


「それだけじゃないよ」


 今度は違う作品のページを見せる。


「こ、今度は何……!?」


 異世界恋愛ちゃんは恐怖と期待がないまぜになったような、複雑な表情をしている。

 フフフ、本当に異世界恋愛ちゃんは可愛いな。


「この『お隣の堕天使様にいつの間にか真人間にされていた件』という作品の総合ポイントは、実に30万超え!! 今年の冬にアニメ化もされており、それはそれは大反響だったんだよ!」

「んほおおおおおおお♡♡♡♡♡さ、30万んんんんん♡♡♡♡♡」


 フッ、やはり30万のインパクトは絶大だったな。


「まだこれで終わりじゃないよ」


 間髪入れずに違う作品のページを見せる。


「も、もう許してええええ♡♡♡♡」


 いいや、ダメだね。

 こうなったら徹底的にやらないと。


「この『時々コソッとドイツ語でデレる隣のアーダさん』という作品の書籍1巻は、発売から約1ヶ月で4刷を達成して、新シリーズ1巻目としてはラノベ史に残る大記録を打ち立てたんだ!」

「なあっ!?♡♡♡」

「それだけじゃない。2巻はなんとあの伝説のラノベ作品、『鈴宮ハレヒ』シリーズと同じ発行部数で刊行され、同じく伝説となったんだよッ!」

「あ、あのハレヒと!?♡♡♡んっほおおおおおおおお♡♡♡♡♡♡しゅごいのおおおおおおおおおお♡♡♡♡♡♡」


 フフフ、堕ちたな(確信)。


「どうだい異世界恋愛ちゃん? これでもまだ俺のことを、ザコだと言うかい?」

「ううん、ごめんなしゃぁい♡アタシが間違ってましたぁ♡」


 うんうん、わかってくれればいいんだよ、わかってくれれば。

 ――こうして俺は無事、異世界恋愛ちゃんをわからせることができたのでした。


 めでたしめでたし



拙作、『塩対応の結婚相手の本音らしきものを、従者さんがスケッチブックで暴露してきます』が、一迅社アイリス編集部様主催の「アイリスIF2大賞」で審査員特別賞を受賞し、アンソロでの書籍化が決定いたしました。

もしよろしければそちらもご高覧ください。⬇⬇(ページ下部のリンクから作品にとべます)

(こんな話を書いておいて、後書きでは異世界恋愛作品の宣伝をするのか)

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― 新着の感想 ―
[良い点]  こ、れ、はー!  ステルスマーケティングの臭いがプンプンするぜーッ!!  実際のとこ、そーなんだ。はえー勉強になる。
[良い点] メスガキがァ…… こりゃあ、わからせなくちゃあならねぇなァ……?
[良い点] 本当に発想と知識量には脱帽します。 面白い物語ありがとうございました。
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