白猫は、真実を告げるか悩む
猫の姿でシリウスと再会できたのは、夕方になってからだった。
なんだかショックを受けてたし、優しく出迎えてあげようと待っていたのだけど、余りに遅いので寝てしまったらしい。
気がつくと、いつもの素の姿になったシリウスの膝の上にいた。
気がついたものの、リズムよく撫でられる心地よさにまた寝落ちしそうになる。
(私がアイリスだって分かったら、こういう時間もなくなるのかな。)
シリウスの性格から考えて、今まで通りとはいかないだろう。
そう考えると、ためらってしまう。
(ねえ、シリウス。打ち明けたらあなたはどうする?)
そんな、悩みを抱えた心でそっとシリウスを見上げたのだが。
「はあああああ…。」
シリウスの、この世の終わりのようなげっそりした顔で、思考が止まった。
「俺は、最低だ…死んだほうがいいのかもしれない。今まで、ずっとこの力を抑えながらなんとか人のいる場所で生活できるようになったと思っていたのに、まさか記憶のないところであんな可愛いいたいけな女の子を、あんなに染まるまで…うわああああ!最低だ!もう、命をもって償うしか!!」
「にゃにゃにゃ!!(何言ってるの!?だめだめ!!)」
「とめないで、姫。俺は生きてる価値のない男だよ。」
「にゃー。にゃんにゃ!(そんなことないって!)」
「慰めはいらないよ。今まで、ありがとう。良い飼い主をみつけてね。」
「あああ!もう!だから、そういうんじゃないんだってば!!」
ねこ語がなぜか噛み合いながら、それでも目の前でシリウスが縄を持ち出したのでアイリスは、一瞬で人型になった。
「えっ?えええええ?な、なんで?」
「だから、私がアイリスなの!魔力に染まったのは、一緒に過ごしてたからで!そういう、あの…アレじゃ…もう!何言わせるのよ!?」
言いながら顔が熱くなるのが分かる。
「いやっ、それ、僕が悪いの!?」
「知らないわよ、バカ!!」
「あのっいや、泣いてっ…ああ、泣かないで…。」
シリウスがわたわたしている。
知るものか。
こちらだって恥ずかしいのを我慢してなんとかいいきったのだ。
「…シリウス、もう、一緒にいられない?」
声が小さくなる。
「え?…いや、でも、そんな、独り身の男女が一緒に住むのって…。」
「じゃあ猫でいる!シリウスの前で絶対に人型にならない!」
「いや、そういうことではないと!」
と、そこでシリウスが、顔色を変えた。
「ア…イリスさん?僕といて…平気?あ、えっと顔が赤い?」
「これは!魔力のことを言ったからで…あれ?なんともない…よ?」
「ほんとに?え?ほんとに?」
シリウスは今、全くの素。
身につけている防護は衣服のみ。
テンプテーションは…影響してこない。
自分を確認してみるけど、いつもとなんら変わりない。
そんな私を、シリウスは凝視している。
「な…なによ?」
「女の子をちゃんと見たのは初めてかもしれない。」
「なにそれ、なんか変態っぽい。」
「へんた…!」
そのうち、触っていいかとか聞いてきそうだったので距離をとると、シリウスは傷ついた顔をした。
「っとにかく!私はここ以外行く場所なんてないもの。今後も猫としてよろしくお願いします。」
「いや、それはまあ…え?でもなんで娼館に?」
結局そこから、長ーい時間をかけて、全てを説明することになった。
「転生」という、超異常な状況も含めて。
その話の中でわかったのは、やはり猫型と人型を使い分ける獣人は知られていないこと、シリウスのテンプテーションは、動物や魔物にも発揮されるため、彼にとっても私は非常に貴重な存在であること、だ。
交渉の末、私達の同居は今までと同じように続けることになったのだが。
「娼館はだめ!」
すっかり保護者の顔になったシリウスに諭され、私は別の働き口を探すことになった。