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ふたつ  作者: 寂知
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1.覚えている事 2.終了

1.覚えている事


「人間は完全になれるのに自分にも人にも完璧を求める。

だから苦しむ。」


 昔からずっとその言葉が頭にあった。

 いつからかは覚えていない。

 誰かが言ったのか?

 どこかで読んだのか?



2.終了


呼吸を邪魔する内側から産まれ続ける痛み。

 肋骨の内側。股の間。腿の付け根。

 胸の奥。ここが特にひどい。

 他の部分の痛みに意識が行くと、今度は揺れるような眩暈と一緒に絞る様な頭痛が耳の後ろから頭頂部に向かって広がる。

 痛みとずっと続いている炙る様なねっとりとした熱が全身を覆っていて不快だ。


 どこもかしこも痛い…

 横になっていて痛みが無かったのはいつだったろう…


 何かを思おうとしても痛みが靄をかける。

 痛みに強張った体で痛みに身じろぎすると、頭の奥がすっと冷たくなってそこから不自然な規則的さで首から下、全身にソレ広がって痛みを薄めていく。

 薄まるけど痛みは消えない。


 ああ…気持ちいいな…


 痛みが薄まってふと誰かを思い出しかけたが、それが誰か思い出せない。


 〇〇?


 妻の名前を思い出す。

 最初の結婚の時の子どもの成人後の写真を思い出す。


 俺に似ている…


 裏切られた痛みと悲しみと憎しみがじわりと蘇りかける。


 結局…一度だってこれを忘れられなかった…


 酒も煙草も他の女とのセックスでも消えなかった。

 全部一時的で気付くと思い出して暗い方へ落ちて行っていた。

 結婚をしても消えなかった。

 自身のプライドが高すぎたからこそ裏切りが許せなかったのか、わずかな快感と痛みと熱に嬲られる頭では分からなくなる。

 考えたいのに考えられない。


 混乱する…


 快感が薄れ出した頃、みぞおちの奥からねじる様な熱のある冷たい痛みと膨満感がじわりじわりと胸の方へ上がって来た。

 喉の奥が辛い。

 荒れた舌に胃液の苦みと甘みと辛味が吐しゃ物と共に広がって力なく口の端から耳に垂れた。

 誰かがそれを拭く。

 それからすぐ、先ほどの快感とは違った自然で眠気を伴った強い快感が頭から全身に向かって水をかけられたように瞬間で全身に広がった。


 あぁ…


 今まであった痛み全てが流れる様に溶ける様に溢れ弾ける様に消えていく。


 これはモルヒネじゃない…

 こんな痛み止めがあればあんな苦しい事を考え続けなくても良かったのにな…


 そう思った事も端から快感に消され、それから痛みも思いも快感も何もなくなった。

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