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第七話 暇だし、転生者を呼ぼう

 というわけで転移魔術を使用して、異世界から転生者をこの世界へ引きずり込みたい企画。

 立案者はわたくし、リネア・クレイアルです。


 「おオ…遂に勇者様を呼ぶのですネ」


 スルカは神官様の格好をしています。

 空虚な瞳に、良く似合わない服装ですね。


 「ねぇ、なんで私も呼んだの?ねぇなんで?」


 リュリュは売春婦の格好です。

 露出度高めの際どい服装をしています。


 「リネア様ぁ、禁術系はやめときましょうよ」


 クロムは可哀想な奴隷の格好です。

 鎖に繋がれた、つんつるてんの裸です。


 「いいですこと?これより、わたくしは転生者を呼びます。暇だから。よしいくぞお前ら!」


 早速、転移魔法陣に魔力を流し込んで召喚。

 明滅する魔法陣から一人の若い男性が出てきました。


 「痛ッてて…て、あれ?さっき俺、車に撥ねられたはずなのに」


 突然の出来事に困惑する男。

 外見からして17、8歳前後でしょうか。

 黒くて短い髪が特徴的です。


 「ようこそ異世界へ。早速ですが、貴方は不幸にもわたくしの奴隷となりました。ドンマイ」


 「は!?えっ!?は?」


 「おめでとう」


 とりあえず拍手喝采でお迎えしました。

 この男は内心パニックパーティーでしょうね。


 「ところで、貴方のお名前は?」


 「俺?俺は……」


 男は気持ち悪いぐらい不敵な笑みを浮かべて続けました。


 「俺はロイド。世界を救う勇者だ」


 あー、はいはい。

 もう結構ですわ。


 「わたくし、お前みたいなタイプ苦手なんですよね。消えろ」


 「ちょ…ちょっと待って!?こういうのって大体、転生者の俺がチート使って無双するやつじゃないの!?」


 「残念ながらこの世界ではわたくしがチートです。法です。モブは黙って主人公であるわたくしの言うことを聞いてればいいんですのよ」


 そういうと、クロムが割って入ってきました。


 「リネア様。世界観が壊れるのでちょっと」


 「お前は何を言っているんですの?」


 クロムに話の腰をおられましたが続けましょう。


 「さてロイド。早速ですが貴方に任務を与えます」


 「その前に一つだけ宜しいでしょうか?」


 「手短に」


 「なんで異世界なのに同じ言語なんです?」


 「チートです」


 「リネア様でしたっけ?あなたは一体何者なんですか?」


 「チートです」


 「乳を発酵させた食べ物は?」


 「チーズです」


 「凄い…元いた世界と一緒だ」


 ロイドは瞳を輝かせて傅きました。


 「このロイド。リネア様のために全身全霊を捧げましょう!」


 「あー、はいはい。もうそういうのいいから。とりあえず行きましょう」


 ロイドと愉快な仲間たちを連れて、トイレから出ました。


 「ねぇなんでトイレに魔法陣を組んだの?」


 リュリュがいけしゃあしゃあと野暮な質問をしてきました。


 「クロムを見なさい。もしあれがボロン、いや、サイズ的にポロンか。ポロンしたら、わたくし達はどうなりますか?」


 「多分…晒し首かなぁ…」


 「そうです。だからトイレに連れ込んだのです。もし全裸を指摘されても、トイレに忘れたで済みますからね」


 「いや全部は脱がないでしょ!?」


 「うっせぇですわよ」


 わたくしはリュリュの頚椎に衝撃を与えて気絶させました。

 スルカに布袋に詰めさせて先に進みます。


 「あんた…容赦ねぇな」


 「余計なことを言うからこうなる。貴方は、多少は賢そうに見えますが…どうですか?」


 「んもう凄い賢いです!リネア様バンザーイ!」


 「よろしい。励めよ、ボンクラ勇者」


 恐怖に染まりきった顔でわたくしへの賛美を口にする自称勇者様に最大級の憐れみを送りましょう。

 …はい、送りました。

 わたくしはなんて優しいのでしょう。


 「クロム。さっきからわたくしの手を握っていますが、なんのつもりですか?」

 

 「リネア様の手に付着した僕の体━━━━━!」


 最後まで聞きたくなかったので、わたくしはクロムの顔面を撃ち抜きました。

 リュリュと同じ布袋行きです。

 

 「ちょっと重イ。手伝っテ」


 「お、おう…重ッ!?」


 「今日からわたシの下僕。苦しゅうなイ。おもてをあげヨ」


 「いやまあ、上げてるけどな…」


 ロイドが荷物を引き摺ってくれるらしいですね。

 頼もしい男です。


 「ところでリネア様。今日はどちら二?」


 「今日は図書館に行こうかと思っております。せっかく異世界転生者を招いたんですもの。来て早々冥界送りは寂しいですわ」


 「なゼに図書館?」


 「この世界について色々教えてあげようと思いまして」


 そう話をしている内に図書館に着きました。

 メジスチナ王国の図書館は世界有数の蔵書量を誇る、格式のある図書館です。

 天井は高く、座席数も桁外れ。

 古風な木造建築でありながら掃除が行き届いております。


 「えーっと、どれがいいかしら」


 教えるつったって何から教えればいいのかわかりませんわ。

 この際、本人に聞いてみましょう。

 

 「ロイド。貴方が今一番知りたいことを教えなさい」

 

 「うーん…そうですねぇ」


 「考えてねぇで、はよ」

 

 「では、魔術の使い方から教えてもらいましょうか」


 「おけ。ちょい待ち」


 たしかH段の072番目にあったはず。

 あったあった。

 数え切れないくらいありましたわ。


 「たーんとお食べ」


 「食わねぇよ!?」


 「あ?なんだその口の利き方は」


 「リネア様のお美しい姿を我が物にしたく、つい、男っ気がポロリと出てしまいました」


 あからさまな媚び売りですわ。


 「いいから読めよ、ですわ」


 「はい!」


 「叫ぶな。ここを何処だと思ってんだ」


 図書館です。

 誰も彼もが安息して読書に勤しめるオアシスです。

 小汚い鼠が来ていいようなところではありません。

 まして、転生者ですよ。

 身の程知らずは即刻処刑。

 てか、他の作品も大体そうでしょうが。


 〝リネア様。世界観がめちゃくちゃになるのでちょっと〟


 クロムが鬱陶しい念波を飛ばしてきました。

 収納されても尚、心は折れません。

 なので袋から取り出して一発グーパンを…。


 「あら、お盛んですこと」


 リュリュのお召し物がはだけております。

 我慢出来なくなってクロムが脱がせたのでしょう。

 思春期真っ只中の獣と同じ檻に入れられた未亡人の鬼畜な供用空間がそこにありました。

 

 「はン」


 スルカがいきなり呟いたのでびっくりしました。


 「よし!読み終わったぞ!」


 ロイドが本を閉じました。

 いたって真剣な表情で肘をつき、会議室の議長を思わせる雰囲気を醸し出し始めました。


 「リネア様。やっぱり俺は、世界を救わなきゃならねぇみてぇだ」


 寝言は寝て言え無力無職。

 業腹ですが、茶番に付き合ってあげましょう。


 「そうです。貴方は魔王を倒さねばなりません」


 んなもん何処にいんだよ!


 「ああ…まさか、あの子が魔王だったなんて…」


 まさかの身内が魔王。

 この作品にシリアスは要らんですわ。


 〝リネア様〟


 「天の声。次やったら、断崖から蹴落としますわよ」


 クロムを黙らせたところで再開です。


 「あの子はきっと、みんなを守るために一人を選んだのです。ロイドが好きだから。多分。わかんないけど。まあ。的な?」


 「そうだったのか…」


 そうじゃないと思いますわ。


 「ロイド!いつまでも塞ぎ込んでないで、前を向きなさい!」


 わたくしはロイドの肩を思い切り掴みました。

 演技には自信があるのです。

 特に迫真の恥ずかしい台詞。

 エモさ全開の言葉は、ね!


 〝リネア様。この世界にエモいという言葉はありません〟

 

 「ググれ」


 全知全能ですから、チートですから、ロイドの記憶を自身の記憶に足すこともできます。

 今使用した言葉もそう。

 転生者からの賜り物。

 全知全能って便利ですよね。

 そう言うだけで無駄な解説省けるんですもの。

 主神ゼウスも同じ気持ちだったのでしょうか。


 「俺は…どうしたらいい」


 「そこにいるスルカを嫁に貰いなさい」


 よろしいですね?スルカ。


 「はン!?」


 スルカの左足に力が入りましたので、取り押さえました。

 初動を抑えなければ、このわたくしとて捕らえることは困難なので。


 「ひどイ!リネア様の薄情者ッ!」


 「貴方もそろそろ亭主が欲しいでしょう?」


 「いらヌ!わたシ、一生一人でいイ!」


 「読みずらい言い方をしないで下さいな」


 そういうと、スルカは疲れて寝てしまいました。


 「この子を俺にくれるんですか!?」


 ロイドは感極まった様子でスルカに覆いかぶさりました。


 「ええ。くれぐれも変な体位はしないように」


 「金髪エルフとか堪んねぇなぁ!おい!」


 「どこぞの闇商人と同じことを言ってますね。ふふ…いいですねぇそれ。今晩にでも襲いなさいな」


 「ありがとうございます!俺、リネア様に一生着いていきます!」


 「はいはい。ではまた明日ね」


 わたくしは全てを置いて図書館を出ました。

 新しい仲間、転生者ロイドを迎えたことでこれから先、もっと賑やかになりそうです。

 俗物に徹した厨二病。

 クロムそっくりですね。


---


 あ、そうそう。

 ロイドは翌日、スルカに惨殺されました。

 なので二度目の転生をかけました。


 「あ…」


 「昨日はよく眠れましたカ?それとも寝れませんでしたカ?」


 「あぁ……あぁああああァアアアア━━━━━!」


 スルカの家に寝泊まりすることになったロイド。

 二人は仲良しです。

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