表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/45

第六話 親愛なるクロムのために

 ドックフードを用意しました。

 隣国ポメラニアンから取り寄せた世界一高い犬用の餌ですわ。

 てか、ポメラニアンって名前をつけたやつ絶対にアホですわ。

 ま、それはいいとして。

 わたくしは今からこのドックフードをクロムに与えます。

 栄養満点、羞恥崩壊、人権侵害。

 負の因子が二つも混じる魅惑の夕飯。

 袋に描かれた子犬は、真ん丸お目目がラリっております。

 そう、この餌は言わずと知れた麻薬が多量に含まれる超危険な劇物。

 食べればたちまち頭がポップコーンになるんだとか。


 「ほらークロムちゃん。餌ですわよー」

 

 わたくしは袋ごとクロムに投げつけました。

 こいつのせいで計画が破綻するところでしたので。


 「リネア様、本当に嫌い」


 「あ?てめぇが穴だらけの作戦立ててっからこうなるんだろうがよ、ですわ」


 「おまけ程度に“ですわ”付けやがって」


 「なんとでも言いなさい。この犬畜生が」


 わたくしは椅子とテーブルを用意し、林檎の皮を剥きながら、クロムの暇つぶしを見学中。

 鉄格子の中から羨ましそうな視線を感じますね。


 「いいなぁ…僕もリンゴ食べたいなぁ」


 クロムはよだれが止まりません。


 「食べますか?」


 「いいんですか!?」


 クロムは飛びつくように鉄格子に頭を挟めます。

 口を大きく開けて、今か今かと待ちわびております。


 「あげなぁーい!そこで指をくわえて見ていなさいな!」


 切り分けたリンゴを汁を飛ばしながら平らげてやりました。

 クロムの打ちひしがれた顔ったらない。


 「このゲス野郎!」


 「貴方にだけは言われたくありませんわ。というか、なんですかその言葉使いは?分を弁えろ真っ裸マン」


 クロムからお召し物を剥奪。

 手を翳すだけで、ちょちょいのちょい。


 「さ…さぶい!」


 大事な部分だけ隠す間抜けな犬の図。


 「体温を維持するのに最も重要なこと。それは食べることです。あら?食料ならそこにありますね」


 希望への光の指し示してあげました。

 そう、ドックフードです。

 食え。


 「あ…美味しそう」


 既に頭はキマっていたようですね。

 巨大化した単細胞がクロムですから。


 「持ってきなさい。食べさせてあげますわ」


 「リネア様直々に頂けるのですか!?」


 「おうよ。ほら、持ってこい」


 クロムはドックフードが入った袋を持ってきました。

 この袋は少し特殊でして、切り口が無いのが難点。

 結局、リンゴを切る時に使ったナイフで開封しました。


 「おお…」


 クロムは丸一日何も食べていません。

 お腹はペコペコでしょう。

 哀れみの目を向けたいところですが、胸元と股下を抑えながら恥じらう姿にイラッときました。

 女子か。


 「じゃあまずは一粒目、はいあーん」


 「あーん」


 クロムが利口に口を開けました。

 なので、右乳首にドックフードを押し当てました。


 「ピンポーン」


 楽し過ぎる。

 暴れ回るクロムを見るのが楽しくて仕方ありませんわ。


 「やいコラ、リネア!真面目にあーんしろ!」


 「だから…し…クッ…した……でしょう…?」


 「おい、なに目線落としてんだよ。こっち見ろよ」


 「…無理」


 「無理ってなんだ!」


 逆鱗中大変申し訳ないのですが、正視に耐えません。

 クロムの右乳首にドックフードがくっ付いてる。


 「あーんします…あーんしますから…座って」


 「嫌だ!お前が立て!」


 「無理…」


 「だから無理ってなんだ!」


 「あの…なんというか…乳首が…」


 「ああん!?乳首がなんだ!」


 「痒くないのですか…?」


 「別に痒くねーよ!お前ふざけてんのか!?」


 いいからさっさとその右乳首に付着した不純物を取り除けって言ってるんですわよ。


 「って言いたい…」


 どうしましょう。

 クロムは己の乳首に見向きもしませんね。

 これだけ言われても尚、拒む理由とは一体。


 …考えていても仕方ありませんわ。

 こうなったら奥の手です。

 転移魔術でスルカを呼びましょう。


 「いでよ!スルカ!」


 わたくしは強制転移を行使。

 スルカが光と共に現れました。


 「はン?」


 クロムの横でぽかんとしているスルカ。

 今日も遊びに精を出していたのか、全身血まみれです。

 無理矢理呼び出したわけですし、謝罪はしておきましょう。


 「お忙しい中、お呼び立てして申し訳ありませんわ」


 「いヤ、全然」


 「貴方に一つだけ頼み事がありまして」


 「ほウ、なんなりト」


 「そこの駄犬の右乳首をご覧なさい」


 そういうと、スルカはクロムの右乳首を見ました。

 するとスルカはガクガクと震えだしました。


 「どうしました?」


 「オ…おっきすぎル」


 「ああ、別にそれが通常サイズとかでは無いですわ。単にドックフードが付いているだけです」


 言ってしまいました。

 流石にクロムも悟るでしょう。

 というか口に出しましたし。


 「ドックフード?んなもん付くわけないだろ!あっはは!」


 ろくに確認もせずクロムは大笑い。

 え?なんですの?


 「貴様は羞恥プレイがお好きなの?」


 「あのなぁリネア様。僕が!この高潔たる僕が!右乳首に!ドックフードなんか付けるわけないだろ!」


 と、クロムは訳の分からない供述をしております。


  「はあ…」


 なんかどうでも良くなりました。

 飽きました。

 巻き込まれ損のスルカを帰しましょう。


 そう思っていたら、スルカは真っ青な顔をして、壁際に逃げていました。

 

 「ゴ…」


 スルカはプルプルと震えます。


 「ゴ?」


 「そレ…ゴキブリ…」


 その言葉を聞いた瞬間、わたくしは転移魔術の印を組みました。


 「ぎゃああああ!ゴ…ゴキブリ!」


 クロムがようやく気づきました。

 おっせーよ、駄犬。


 「クロム。貴方の健康を心から願っておりますわ」


 「待て!いや、待って下さい!」


 「さよなら」


 転移魔術にて地下牢を脱出。

 クロム。今、貴方は元気にやっていますか。

 ゴキブリと喧嘩はしていませんか。

 せっかく大枚はたいて購入したのですから、ドックフードは食べきってくださいね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ