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第四話 葬式にサルエルパンツを履いてきて顔面からコケた

 ほーら言わんこっちゃありませんわ。

 だからわたくしは黒服の正装にしろと忠告したのです。

 それなのに何故かサルエルパンツなるものに目を奪われて履いてきた間抜けなクロム。

 葬式だっつってんのに、この有様です。


 「ほら駄犬。手ぇ貸しますわよ」


 「痛ってて…ありがとうございますリネア様…」

 

 クロムを席に戻しました。

 今日は大勢の人が教会に集まっているので、騒がれると面倒です。

 あ、そうそう。

 これはゼルト閣下の葬式ですので、当然リュリュも来ております。


 「うわぁぁあああん…!」


 棺にしがみついて泣いていますね。

 神父が引き剥がそうとしますが無理そうです。

 とんでもない握力で棺に指を食い込ませておりますから。


 「うわぁああん!わんわん!」


 少々耳障りですね。

 黙らせましょう。


 「リュリュ。気持ちはわかりますが、周りの目もありますし下がりなさいな」

 

 「私の気持ちなんてリネアにはわかんないよ!」


 「ええ、全くもって分かりませんわ」


 だって犯人知ってますもの。

 なんなら最前列にいますわよ。


 「リュリュ、泣かないデ」


 「スルカ…?」


 「この人、いい人。大丈夫。リュリュの中で生き続けル」


 「う…うぅ…」


 リュリュは頭を優しく撫でられて、慰められております。

 犯人に。


 「スルカ。リュリュを教会の外に」


 「お任せヲ」


 スルカが泣きじゃくるリュリュを連れて教会を後にしました。

 何度も言いますが、スルカが犯人です。

 犯人が被害者遺族を介抱しています。

 だめ…笑っちゃう。


 「リネア様ー、退屈です」

 

 「無礼も程々になさいな。この国に多大な貢献をされた方の葬式ですよ」


 「へー、因みに何を?」


 「麻薬犯罪組織の立ち上げと禁酒販売をしておりましたね」


 「カスじゃん」


 「それな」


 まあ、それで得た金を国に収めていたのですから大したものです。

 横領はしていませんし、なんなら税率以上の額を収めておりましたから。

 その時は、わたくしが計上したんですけどね。

 

 「リネア嬢。少しだけよろしいですかな…?」


 後ろの男性に声をかけられました。

 

 「はい?なんでしょうか」


 「少し席を外すのでこの荷物を預かって頂けませんかね?よい…しょ」


 男に馬鹿でかい鞄を渡されました。


 「あらまあ、腐乱した思考をお持ちのようで」


 「すみません…!」


 男は駆け出していきました。

 葬式が長引いているので尿意が限界に達したのでしょう。

 

 「リネア様は優しいですね」


 「そうですか?」


 「はい。だって顔もお腹も柔らかいですもん」


 「あら、貴方も棺に収まりたいの?」


 「リネア様と一緒ならいいですよ」


 「そんなの御免蒙りますわ」


 わたくしは一方的に会話を切りました。

 間もなく葬式が終わります。

 ふざけるもの大概にせねばなりません。


 「なんで死ぬのが喜ばしいことなんですかね」


 クロムが、むむむと首を傾げました。


 「死では無く、天に召されると考えなさい。自ずと喜ばしく感じるでしょう?」


 「んー…よくわかんねっす」


 「子供には難しいですわよね。そんな短足で良くもまあよく分からないズボンを履いて葬儀に参列し、足を広げて無法者(アウトロー)感満載の口調でこのわたくしと会話しているエセ王子には」


 そんな事を言っているうちに葬式が終わりました。

 ご遺族への挨拶もそこそこに、クロムを連れて外に出ます。

 

 「んあー!開放感!」


 クロムは高く背伸びをしました。

 本当に、ええ、何なのかしらこいつ。


 「平民なら間違いなく打首ですわよ」


 「大丈夫ですって!僕は王子ですから」


 「ええ、だから平民つってんでしょうがッ」


 クロムは話を聞いていませんね。

 余程退屈だったのでしょう。


 「ところでどうします?リネア様」

 

 「どう、とは?」


 「パパに呼び出されてるじゃないですか。今日の午後、執務室に来るようにって」


 言われてたような気がしますが、行きたくありませんね。

 国王様からのお達しは大抵ダルいです。


 「テキトーに言っといてください。わたくしは帰ります」


 「あ?それが人に物を頼む態度ですか?」


 「いい質問ですね。股下を蹴りあげるから気張りなさい」


 「ごめんなさい!」


 クロムは快く引き受けてくれました。

 しかし、これでは問題を先送りにするだけで、後にまた国王と顔を合わせなければなりません。

 面倒ですし、いっそのこと部下に引き継いでしましょう。

 そう思っておりましたが、計画とは最後まで気が抜けず油断を許さないもの。

 わたくしは今、油断しました。

 クロムが全部バラしやがったのでした。

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