第三十八話 懐刀
微力ながらもロイドが活躍してくれました。
地元住民の説得、及び隣国ポメラニアンへの移住任務を見事遂行しました。
妙に人脈が厚い彼は、お易い御用だと言います。
「つーかこれ、俺のチートのおかげじゃねーか」
戯けたことを申すロイド君。
これは潜在的に備わる貴様固有の能力だと知れ。
「なんの力でも宜しい。民さえ救えればそれで」
「めっちゃ聖女ぽいこと言うじゃん」
「おお、リネア様歓喜」
一先ずコイツには、伝説の剣バルムンクを渡しておきます。
バルムンクは勝手に大気中の魔力を吸って吐いてくれる便利グッズです。
これとまともに相対できる人間は、そういません。
ハインクルスなら瞬で砕きますけど。
「この戦いが終わったら結婚してくれ」
「フラグ立てんのやめてくださる?」
ロイドの異端さには、度肝を抜かれてばかり。
四六時中遊んでいるのかと思いきや、その実、わたくしの為に動いてくれていました。
ありがたや。
---
あと三日。
あと三日ですよ、皆さん。
「リネア様、スルカ来たヨ」
変なスルカが入ってきました。
「クロムの真似でしょうが、語尾で貴方と分かりました。迂闊でしたね、超絶美少女100点満点無乳スベスベ肌露出系快楽連続殺人犯エルフ」
「長ッ」
スルカは、ぽかんとしています。
なので軽く胸を揉みました。
板ッ。
「ご用件ヲ、どうゾ」
ちょっとだけ頬を赤らめるスルカ。
感度良好、準備万端。
あとは香水を振りまいて、ロイドに投げ渡すだけ。
そんなことしませんけど。
「貴方にいい物をプレゼントします」
わたくしはスルカの腰に抱きついて、持っていた帯を一周させました。
帯には、暗器を収納出来るポケットが付いております。
空洞のポケットは刀剣用で、一箇所。
ちゃんと鍔で止まるように設計されています。
「なにこレ、可愛イ」
スルカは上機嫌で、腰を振ります。
フラフープ…?
それとも求愛行動でしょうか。
「ナイフはここで、剣はここ。男の剣はここに収納してください」
「リネア様のえっチ」
淑女の聖域をつんつん。
ズボン越しに伝わる窪みはご想像にお任せします。
「負けたラ、どうすル?」
「前提として負けませんわ。あれは確殺できます」
「だとしてモ、ちょっと怖イ」
「あら、貴方にも怖いなんて感情、あるんですね」
「うン。死んだらリネア様に会えないかラ、怖イ」
ぽふっと、スルカがわたくしの低反発クッションに飛び込んできます。
何から何まで可愛らしい乙女です。
乙女は触ると縮こまり、圧を強めます。
熱い息は隙間を通過して下腹部に到達。
彼女は、身を焦がすまで劣情を刻む。
伝わるでしょうか、この感覚。
「リュリュも、きっト同じ気持チ」
急に怪談話をするな、と言いたい。
「彼女が男なら嬉しいんですけどね…」
欲を言えば、始まりから改変したい。
過去に色を付けてから、やり直したい。
夢見る“リネア”で居続けたい。




