第三十三話 第一次計画
「勇者ロイド(笑)をわたくしの近衛騎士に任命します。これからはスルカの身の回りの世話をしつつ、炭鉱でダイヤを掘り、兵隊集めに奔走し、わたくしの盾となり障害を終えて下さい」
圧倒的情報量でロイドのおつむをパンクさせました。
超過激派便利屋さんの誕生です。
「お待ち下さいリネア様。リネア様の近衛騎士なら、僕がいるではありませんか。家事、炊事、洗濯、置物。営みの相手だって務めますよ?」
「そーだそーだー。あ、でも。営みなら俺にパスしてくれて構わねっすよ。うぇっへへっ!」
カスクロムにほだされて、ロイドが調子づき始めました。
「私の前で猥談とは、いい趣味をしておりますね」
ハインクルスが心做しか、薄暗い笑みを浮かべております。
帯刀いるので、その気になればズバッと。
鏖決定です。
「こいツ、要らなイ。リネア様にあげル」
スルカのお墨付きハンバーグ。
では無く、ロイド。
「待って!俺を見捨てないで!スルカ様!」
「はンっ!?触るナ!」
彼女にすがりついたとて無駄なこと。
この決定には誰も逆らえません。
「このような人間に近衛騎士が務まるのですか…?」
ハインクルスの不安はごもっとも。
ですが。
「仮にも勇者ですわ。そこら辺は、キチッとこなしてくれるでしょう」
「私には、そうは思えませんが」
「秘められた力を解放出来れば、的なやつですわ」
「……ああ、なるほど」
ハインクルスの化け物じみた力には遠く及ばないでしょうが、そんじゃそこいらの兵士に遅れを取ることは無いかと。
意外にもこのロイド、知恵が回る。
兵隊集めは上々、おおよそ500名は懐柔しましたから。
ま、どんな手品を使ったかと聞かれれば、愚の骨頂ですが…。
「お願いです!俺を見捨てないでくださいスルカ様!」
「やメ…変なとこ触んないデ!」
スルカの使用済みの下着を高額で売り払ったカス野郎ですが、お陰で資金が集まりました。
因みに、スルカの下着は至る所をぐるぐる回っているようで、使ったら次の人に渡すよう、明確なルールが定められております。
直接触れるのは厳禁。
以上を守れば、何してもOK。
クッソゴミカスの思考ですわね。
「スルカ。また、貴方の力をお貸しください」
「むむウ……リネア様にそう言われたラ、やるしかなイ」
スルカは本当にいい子です。
いつだって、わたくしの為に手を汚してくれている。
あの憎き国王の食料を減らしてくれている。
「僕はどうすればいいですか?」
クロムがわたくしのスカートの中で寛いでいます。
人にものを尋ねる態度ではありません。
「貴方はわたくしと居なさい。土壇場で裏切られても困りますし」
「僕は…リネア様を裏切ったりしませんよ…」
可愛らしい声でむつけておりますが、わたくしのお尻に抱きつかないで頂きたい。
「レイルが護衛役と伺っておりましたが、情報が古かったようで」
「彼にはリュリュの護衛を任せました。いつ、なんどき、彼女が狙われるかわかりませんから」
「確かに。あのメジスチナ王なら、裏口を攻めることも厭いませんね」
ハインクルスは全てを知っている。
王の素性も、目的も。
あの時、わたくしを救ってくれたのも、ハインクルスでした。
「王宮の住み心地は、いかがですか」
ハインクルスがわたくしに与えてくれた居場所。
みすみす、手放してなるものですか。
「最っ高ですわ!いずれ、全部わたくしの物にして差し上げます!」
こんな野心たっぷりの言葉を吐いても、ハインクルスはくすくすと笑ってくれる。
余裕の笑みが暖かく、強い。
頼り甲斐のある幼なじみ…ですね。
「リネア様…僕、もう我慢できないッ!」
最後、クロムのせいで締まりませんでした。
最悪です。




