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第三十話 中身の無いお茶会

 リュリュは振られました。

 ええまあ、当然と言えば当然。

 クロムとコルナ、両王子が寝る間も惜しまず丹精込めて育て上げた庭園を白濁に染め上げんとレイルを逆〇して、無理矢理貞操を奪ったのですから。

 おかげさまでレイルは女性不信に。

 わたくしの護衛は続けるそうですが、半径1メートル以内には絶対に入ってきません。

 そのため、所持する暗器は全て中距離から遠距離の投擲武器のみとなりました。

 ざけんな、未亡人貴族。

 

 「私のどこがダメなのよ」


 「どこもかしこもですわ。頭のてっぺんから足の爪先まで馬乳酒てんこ盛りの、準巨乳未亡人美貌70点微妙の名門貴族令嬢様ですもの。貰い手なんか見つかるはずもありませんわ」


 「よく噛まずに言えたね」


 「恐らく、当作品を初見で読まれている方は意味不明過ぎて噛むでしょう。そのまま舌を噛みちぎって明日へ。未来は、ガスマスク兵団VS国家ですわ」


 「凄い!全然意味ワカンナイ!」


 わたくしにもわかりません。

 見よ、この一人称のせいで増えた平仮名。

 ひらがなを漢字にして、わたくしを平仮名にする。

 ややこしい事この上なく、脳味噌が爆散して線香花火になった方も多いかと。

 ですが、これには理由があります。

 その理由とは、私をわたくしと呼ぶ人が少ないからですわ。

 [私]という単語を見た時、ぱっと[わたくし]と出ますでしょうか?

 出ませんよね?

 もし出たのであれば、貴方は異世界転生者です。

 世界でも何でも救って下さい。

 

 「大抵の男はさ、女が寄ってくれば簡単に腰を振るもんじゃないの?」


 「あのですね。仮に、寄ってきてすぐに腰を振ったらキモ過ぎでしょうが」


 「いや、そうじゃなくて…!あの、その……なんて言うか…この、あ、なんかチョロそうだなこの女。とでも思って、グイグイ来るものなんじゃないかと思ってさ」


 「もっとはっきり喋れ。まあでも、言いたいことはわかりました。要するに、男は馬鹿だから、全員ヤリ〇ンだとでも思っているのでしょう。どんなにガードがユルユルで、至る所ユルユルな女でも、開脚すれば価値があり、男は知ってか知らずか喜んで前転するだろうと、浅はかなを考えを抱いているのですね。馬鹿がッ。お前みたいな残飯に食らいつく男など、たかが知れております。もしこの国で探したいのであれば、そこら辺の路地裏に店を構える常識外れな安っすい酒場で世界一安い酒を煽る兵隊崩れか、行き倒れの全裸王子に全裸で覆い被さるかの二択ですわ」


 「どっちも嫌だなぁ」


 「ここまで説明させといて一瞥とか死ね」


 わたくしはリュリュをテーブルの上に敷いて、へその辺にクッキーを一枚置きました。

 

 「いい出会い、ないかなー」


 「十代、二十代、お決まりのフレーズですね。大変見苦しい」


 「もうこの際、リネアと結婚しようかな」


 「は?死にたい」


 「お決まりのフレーズ、パート2じゃん。男女問わずに、メンヘラが使う奴じゃん」

 

 「メンヘラに限定すんな。若者なら大抵使いますよ」


 「私たちって若いのかな?」


 「メジスチナ王国では齢15で成人とみなしますから、間もなく18、19を迎えるわたくし達は、間違いなく売れ残り扱いでしょう。とすると、もうババアですか。早いですね」


 「んだねー。年寄りだねー」


 「まったく。わたくし達はこれから、一体どうなってしまうのやら」


 そう言うと、テーブルがカタンと少し揺れました。

 リュリュが自身の腹部に置かれたクッキーに手を伸ばし、食べていました。


 「んまぁ。どうにかまるっぶぉ」


 「飲み込め」


 寝ながらクッキーを頬張り、食べカスを撒き散らす貴族令嬢リュリュ。

 外見はもとより、性格も悪くない。

 あらまあ。

 国王様のタイプではありませんか。


 「あまり、王宮に出入りしない方が宜しいのでは?」

 

 「んクッ……そうだね。私もまだ、死にたくないし」


 今日のお茶会は、これにてお開き。

 リュリュが最後に見せた、深みのあるミステリアスな顔は、少しだけ熱気を帯びておりました。

 孤高を嫌いながらも何処か楽しんでいる彼女の後ろ姿は、わたくしの理想そのもの。

 黒い羽が舞い散るように、踏み締める音色は静かで暗く、雨風をものともしない、桃色の堕天使です。

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