第二十八話 折り返し地点へさあ行くぞ!リネア・クレイアルは国王に呼ばれた!の巻………。
国王様に呼ばれた理由について、ざっくりと説明させていただきます。
まず、次期国王問題。
わたくしがクロムを選ぶか、コルナを選ぶかで、次代の国王様が決められるそうです。
嘘です。
本当は、王戦に勝利した方に、わたくしの所有権が与えられる。
見事勝利した暁には、わたくしを孕ませる権利が与えられるということですね。
なんだ、この狂った世界は。
「コルナ王子にして下さい」
「挙手制では無いのですが…」
国王は、わたくしの立場に無頓着です。
景品にかけられる、こっちの身にもなれ。
それともう一つ。
二人がダメなら私と…は、ないでしょうガッ。
現を抜かさないでいただきたい。
誰が貴様のようなボンクラ、ボウフラ、高濃度精〇循環放出装置とズコバコしますかってーの。
「リネア嬢もそろそろ、結婚を考える時期です」
貴様が言うなし。
「まだわたくしには、早いかと存じます」
「何をおっしゃる。リネア嬢は今年で18。色恋沙汰が耐えない日常生活を送りながらも、真っ当な恋愛は皆無。コルナは言うに及ばずまだ幼く、クロムはあんな感じです。おや…では、私しかおりませんね」
勝手に話を進めないでいただきたい。
「お戯れが過ぎましてよ。国王様には、愛すべき妻がおりましょうに」
不倫艦隊、カルトネラホールインマルチが。
最早ジャンク品ですね…あの女。
「妻は不特定多数の男と関係を持っております。まあ、あれは近いうちに晒しあげますが、その前に、あなたの処遇について話しましょう」
あらやだ、急に空気が変わりました。
国王様の目は、より一層鋭くなり、憎しみ孕んだ感情を、奥歯を噛み締めることでグッと抑え込んでいます。
まあ、孕まされるの、私なんですけど。
クロムが使用していた魔力霧散装置が起動されたようで、転移魔術は使えそうにありませんね。
「処遇…とは?」
「リネア嬢。あなたは今、国家反逆罪に問われています。先月、レイグス王国に送り届けられるはずだった書物の中に、あなた名義の封筒が幾つか見受けられたと報告を受けています。そして、その中の、本当に一つだけ、私に対する恨み辛みが羅列された怪文書がありました。内容は言わなくてもわかるでしょう?」
「………」
「おや…そんな顔もできるのですね。悪くない顔だ。もっと良く見せてください」
国王がゆっくりと歩みを進めて、わたくしの髪に触れた。
封筒は届けられるはず“だった”ものであり、届いてはいない。
なるほど…。
全部筒抜けですか。
「要求をどうぞ」
「私のモノになれ」
酷く、耳障りな音色。
クロムと違い、まるで愛の無い残響。
「お断りしますわ。所詮貴方は、屈服させることでしか存在を証明できない小心者。大義名分を美辞麗句で飾りつけ、のらりくらりとわたくしの妄言に耳を貸しつつ、元手を削り、食人を推奨する陰謀論者ですもの。どうせ、わたくしも食べるのでしょう?愚の骨頂、ここにありですわ」
そう言うと、国王は目を細めて手を離しました。
反応がお気に召さなかったご様子。
人の道に外れた人間如きに、わたくしが怯むとでもお思いで?
「返事は今で無くても結構。いずれまた」
「その方がよろしいでしょう。わたくしは何時でも王宮におりますから、お好きな時に、お好きなタイミングで訪ねて下さいな。ま、応答するとは限りませんが」
「その時はクロムも連れて行きますよ。あの子は将来有望です。見学がてら、味を教えましょう」
「あらまあ、怖い怖い」
国王は、わたくしの背後を襲うような真似はしません。
絶対の自信があるのでしょう。
お前はもう、鳥籠に囚われているのだと。
逃げられはしないと。
そんなこと、言われなくてもわかっております。
母を骨にした犯罪者の思考など、クロムの愛を知るよりも容易い。




