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第二十七話 犬に服を着せる。意味は、豚に真珠

 毛並みの整った可愛らしい子犬を拾いました。

 名前はコルナにしました。

 一方で、その隣にアホっぽい子犬もいました。

 名前はクロムにして、置いてきました。

 着いてきました。


 「きゃうん!きゃうん!リネア様ぁん!」


 クロム本人でした。


 「目に毒」


 「サーセン」


 クロムが、ようやく服を着てくれました。

 なんでしょうか、この小汚い駄犬は。

 意味も無く、わたくしの家にズカズカと上がり込んできます。


 「シッ、シッ」


 「酷いです!きゃうん!」


 「そのネタはもう結構です。帰りなさい」


 「えぇー!折角、リネア様のお部屋を嗅げると思ったのに」


 中身から犬になりつつありますね。

 これはまた珍しいタイプ。


 「わたくしの自室には足一本、指先一本入れさせませんが、替え着ぐらいは用意して差し上げ……」


 クロムがわたくしの自室に入っていきました。

 ふざけるな。


 「わぁ!リネア様ったら○○○ー○○の作品お読みになるんですね!時代物好きなんですか?」


 「死ね」


 わたくしはクロムを本棚に押し込みました。

 すると、どうでしょう。

 クロムの身体がコンパクトサイズのブロック状に、パタパタと折りたたまれるではありませんか。

 は?

 身体構造おかしいですわ。

 思わず戦慄を覚えてしまうくらい不気味なので、引っこ抜いて元に戻しました。

 奇しくも綺麗に戻りましたね、はい。


 「リネア様の性癖を心ゆくまで堪能出来る、有意義な時間を過ごせそうです」


 「帰れ。そして二度と帰ってくるな、ですわ」


 「はい無理ぃー!お決まりの申し訳程度“ですわ”乙!」

 

 うっざ…。

 ぶん殴りたいです。

 一体何が目的なんでしょうか。


 「細かい躾は後でするとして、そのみすぼらしい服装が気になります」


 今現在クロムが身に付けているのは、半袖短パン、麦わら帽子に、肩に籠。あとマント。

 片手にトマト。箸、お椀。

 うん、語呂がいい。

 風貌は虫取り少年(極)ですね。

 

 「これですか?これは僕の一張羅です。和泉半島から取り寄せた超!高級品ですよ」


 「ほぇー。特段、高そうは見えませんが…」


 「それが高かったんですよ。この麦わら帽子だけで家一軒建つぐらい」


 「なんとまぁ、無駄遣いのオンパレードですこと」


 「いやぁ、ホントですよね。後悔してます。あれ?なんか死にたくなってきた」


 さては貯金を使い果たしましたね、これは。

 一応、他の値段も聞いておきますか。

 話したそうにしてますし。

 し、3回。


 「籠は、おいくら?」


 「うーん…この籠はマジモンのアンティークなんで、多少値の張るラブホテルが2軒建つぐらいでしょうか」


 「マントは?」


 「マントは安物です。リュリュの下着と同じ、綿100%なので」


 「服は?」


 「上下込みで学校が建ちます。縫合がしっかりしてるので、漏れずに安心ですよ」


 「箸とお椀」


 「バカ高いです。箸はオーダーメイドの紫檀製で、お椀は、和泉半島から渡来した伝統技術をこれでもかってくらい詰め込んだ漆塗りの逸品。値段にして、100人を超える兵士達が一年間遊んで暮らせるぐらい」


 「トマト」


 「これはプランターからもぎってきました。タダです」


 ド畜生で笑いました。

 クロムが所持しているトマトは、わたくしの家の物です。

 いつ、もぎった。

 お父様の大事なプランターから。


 「食べて感想を、どうぞ」


 「いっただっきまーす」


 クロムがトマトに齧りつきました。

 もぐもぐと、波打つように口を動かしながら、わたくしの口に、残り半分を押し込んできます。

 結局、わたくしも実食。

 …酸っぱ。

 なんですの?これ。


 「「微妙…」」


 意見交換会不要満場一致決定。

 この必殺技みたいな漢字の羅列、すらすらと読めましたか?

 とか考えてないと、年中お昼寝してる大脳がドロドロに溶け出してしまうぐらい、この国のトマトは酸っぱい。

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