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第二十三話 できない男とできすぎて狂気を帯び始めた子犬

 fuckinお父様。

 こいつのせいでわたくしの身が売られるところでした。

 親愛なる娘なのですから、もう少し丁重に扱う心を覚えて欲しいものです。

 覚えて欲しいといえばそうそう、実はわたくし最近、結構な頻度で腹痛に襲われます。

 じゃあトイレに行けば?と、思われるかもしれませんが、トイレに行って解決する痛みでは無いのです。

 じゃあ何?

 ストレスです。


 「クーロームーくーん」


 「むがッ…もがっ…!」


 縛り吊るされたクロムを眺めながら一杯。

 マカロンは上品にクリームを乗せてあります。

 取りずれぇですわ。


 「食べたいですか?食べたいですよね?」


 「もごごッ!もご…!」


 「どぅあめぇ!うぁげぬぁい!」


 「むごーっ!」


 わたくしはマカロンを平らげて女子更衣室を出ました。

 ながーいながーい廊下を歩いていきます。

 長ーい……長すぎですわ。


 「王宮ってこんなに広かったでしょうか」


 わたくしは先程から後をつけている御仁に質問しました。

 異世界転生者(仮)ロイドに。

 

 「これは…結界!?」


 おお、馬鹿丸出しですわ。

 やはり彼は無知無学な無力。

 勇者の成り上がりテンプレートを逆行する男です。

 

 「不正解です。お帰りくださいな」


 「嫌だす。おいら、リネア様と一緒がいいだす」


 「気色悪いので近寄らないでください。他を当たれ」


 「スルカに追い出されちゃって…行くあてがないんですよ」


 「あらまあ、それは可哀想に。そのまま野垂れ死になさいな」


 「俺の扱いだけ酷くね!?」


 「作者のせいですわ」


 ロイドを窓から放り投げました。

 ばいばーい。


 「リネア様。僕にもマカロン下さい」


 知らず知らずのうちに、クロムが背後に立っていました。

 どうやって縄を解いたのでしょうか。

 

 「マカロンはもう全てお腹の中です。残念でしたね」


 「それでもいいので下さい」


 クロムを無視して進みましょう。


 「執務室に向かうんですか?」


 「ええまあ、内親王様にお伝えしたいことがありますので」


 「何ですか?代わりに伝えておきますよ?」


 「結構です。わたくしが直接伝えます」


 「そんな遠慮なさらず、言ってください」


 「大事な話なのでやめておきます」


 「リネア様ともあろうお方が、一国の雌豚姫風情に貴重なお時間を割く必要はありません。ささ、僕が伝えますから教えてください」


 「ああもう…!執拗いですわ!鬱陶しいですわ!」


 そう言い放った途端、気温が下がりました。

 肌寒いです。


 「…ねぇリネア様。最近こそこそと何をしてるんですか?」


 どうやらクロムが発生源っぽいです。

 嵐の夜に良く似合う暗い人相をしています。

 両目はガン開きなんですけど、どうも心ここに在らずといった感じで上目遣いです。

 睨んでいるような、覗き込まれているような。

 ぶるっと震えてまうような。


 「何もしてない…わけではありませんけど…」


 「けど…?」


 クロムが手を握ってきました。

 何がなんでも逃がさない、的な感じですかね。

 わざわざ滑り止め用のパウダーをまぶして握ってくるぐらいですから。


 「どうしましょう…」


 あ、口に出てしまいました。

 まずいまずいまずい!

 クロムが疑いの目を向けてきましたわ!


 「ち…違いますわ!これはその…あの、そう!顔を洗う時に困るなーって!だってほら、貴方のおかげで白い粉が付いてますし、これ自体落とすの大変だなーって…はい」


 「…………」


 「今日はいい天気ですね」


 「…雨ですよ?」


 そうでした、雨でした。

 

 「話、逸らさないで下さい」


 「逸らしてなどおりませんよ。わたくし、初めから言っていたではありませんか。お腹が痛いって」


 「言われてみればそうでしたね。で?それがこれと一体なんの関係が?」


 わたくしは乱暴に腕を引かれました。

 言いたくないんですけど、言いますか…。

 

 「わたくし今日、生理用品忘れたんですの」


 そう言うと、クロムは「あ、なんだそんなこと」みたいな顔でため息をつきました。

 最近こそこそとしてた理由が理解できまして?


 「まったくもう…リネア様ったら。それならそうと言ってくださればいいのに。えーっと……はい」


 クロムが内ポケットから四角い何かを取り出しました。

 いえ、何かではありません。

 これは女の子の日の必須アイテムです。

 わたくしが普段使用している物と全く同じ物が、クロムの懐から出てきました。


 「……」


 「暖かいうちにどうぞ」


 「……どうして知ってるんですの?」


 「え?いや、普通知りません?好きな人のことなら何でも。それは所持品だったり、着衣だったり、行動時間だったり、周期だったり。あ、そうそう。リネア様は、ここ三ヶ月不順でしたね。今回は5日遅れてます。前回は3日だったのに、やっぱりストレスが大きいようで。本当にお疲れ様です」


 クッソキメェですわ。

 特に、その眩しい笑顔がキメェですわ。

 できる男感出してますけど、お前のやってることはストーカーです。

 ストーカー以上です。


 「ありが童貞」


 取り敢えず、長方形は貰っておきますけども。

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