第二十話 致命的な欠陥だらけで構成された上級国民が僅か30分で情報収集する話は後半
この靴良い靴。
新調しましたの。
赤くてピカピカの光沢が眩しい靴に。
超超超高級品です。
最近の流行りで言うと、SSSSSランク冒険者でしょうか。
そんな感じです。
って、んな事どうだっていいんですのよ。
問題はこれを泥だらけにした人間がいるということ。
人間です人間。
クロムです。
おいコラ待ててめぇ、と。
さっきから追いかけておりますが、ちっとも捕まりません。
お得意の転移魔術を行使しても、発達した胸部があだとなり、クロムのように狭い所を通れません。
特に路地裏とか最悪ですわ。
蜘蛛の巣が張り巡らされた入口付近に、ネズミファミリーがお出迎えする地獄のスラム中心部。
出口には生ゴミが鎮座。
危うく顔を突っ込むところでした。
「やーいやーい!リネア様の※※※※※※!」
今、クロムにものすごい暴言を吐かれたような気がします。
※す。
「待ちなさい全裸王子。その先は男子禁制の婚姻不可生娘の花園。間違っても立ち入っては…」
わたくしの忠告を無視して、クロムはメジスチナ修道院に入っていきました。
終わりです。
中から悲鳴が聞こえます。
『幸せ…』
クロムが念動力でわたくしにご報告。
とんだ露出癖ですわ。
しかも悲鳴が鳴り止んでクライマックスシリーズ突入中。
『さっさと出てきなさい。さもなくば貴方を作戦メンバーから外して地上100キロメートルまで打ち上げますわよ』
『それは困ります。なので、ここで出来る限り情報を集めてリネア様の野望に貢献したいと思います。成功の暁には、僕と一夜を共………あっ…』
『そのまま死んで下さいまし』
結局しばらく待つことになりました。
━━━10分経過。
━━━━20分経過。
━━━━━━30分経過。
クロムがようやく修道院から出てきました。
神父姿で。
「シスターさん達ってガード固いですね。強い」
「お前の弱々しい身体に興味が無かっただけです。それで?情報は聞き出せましたか?」
「モーマンタイ。完璧です」
「それは良かった。では聞かせなさいな」
わたくしはクロムをお姫様抱っこして、メジスチナ王国北東にある渓流に向かいながら話を聞くことにしました。
「情報は全部で三つあります。まず一つ目は、パパは元人殺し」
「おー。中々エキサイティング」
「二つ目はママの不倫。ママは日替わりで週8回不倫相手と会っているそうで、パパが公務で王宮に居ない昼間を狙って招いているらしいです。シスターさん達曰く、日替わりランチだそう」
「まあ、食べられてるのは貴方のお母様でしょうけども」
情報網が蜘蛛の巣より密。
一箇所に集約し過ぎでは?
「そして最後に三つ目。これが良くない」
クロムが得意げに言いました。
「なんです?その鼻につく言い方」
「いやー、本当にやばい。リネア様も目が点になっちゃう」
「勿体ぶらないで早く言ってくださいな」
「うーんどーしよっかなー。リネア様のなー。態度次第だなー」
「……転移します?」
「ごめんなさい!話します!」
クロムのお姫様抱っこを解いて、地面に立たせました。
長閑な渓流が見えますね。
目の前には、川魚が優雅に泳ぐ透き通った河原があります。
「はい。それではちゃっちゃと教えてくださいな」
死ぬほど気になりますからね。
このままでは夜も眠れない。
「実は…」
クロムが話しにくそうに言葉を詰まらせます。
ですが、ゆっくりと息を吸って吐いて深呼吸。
続けました。
「近々、リネア様に縁談が持ち込まれるみたいです」
「…………は?」
縁談なんて聞いてません。
そもそもなんでわたくしが知らなくてシスターが知っているんですか?
…まあ、どうせ噂の話でしょう。
そう思っていまし卵。




