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第十七話 焼ける物と焼かれる者

 クロムを誘拐した犯罪組織はジーク男爵が指揮していたそうです。

 男爵、男爵。

 男爵芋が食べたくなりましたわ。

 というわけで、クロムの庭園でバーベキューパーティーの始めます。


 「いや国家転覆は!?」


 「声がでけぇんですのよ。ボンクラ勇者」


 ロイドしかいない。

 あれだけの大枚を一瞬で溶かしたロイドしかいません。

 寂しいです。


 「ところで、人材確保は進んでいますか?」


 わたくしは骨付き肉を裏返しました。

 焦げてました。

 なのでクロムが大切に育てているカーネーション畑に放り投げました。


 「食い物を粗末にすんなよな。概ね良好です」


 「あれは元々屍肉です。それは良かった」


 話変わりますけど、火力強すぎですわ。

 わたくしとロイドの背丈を合計して、ようやく届くかどうかの高さまで火炎の渦が立ち上っております。

 王宮の二階に届いてますね。

 燃え移らないといいですけど。


 「キャンプファイヤーかよ」

 

 「暖かいですね」


 さて、そろそろわたくしも本腰を入れて国家転覆への道筋を描くとしましょう。

 まずは国王様の不貞を暴いて埋めます。

 次にカルトネラ内親王の内心を揺さぶってビンタ。

 心神喪失したところでわたくしが新国家樹立完遂を宣言してコルナ王子を夜這いします。5分おきに。

 クロムは頭空っぽ罪で流刑ですわ。


 「リネア様。ちょっとそこのバーベキューソース取って」


 「あ?誰に命令してるんですの?」


 口いっぱいにこんがり肉を頬張るロイドに苛立ちを覚えました。

 

 「なんでクロム王子呼ばなかったんです?」


 ロイドがバーベキューソースを手に取りました。

 手…手に!?


 「クロムは美術展に足を運んでおりますわ。正午を過ぎたあたりですし、もうじき帰るかと。帰って来なくていいけど」


 そういった瞬間、腹部に鈍痛が。

 

 「ただいま戻りまし卵!」


 かき玉汁製造王子のご帰還です。

 年中無休で、脳内は卵白で埋め尽くされております。


 「何しに来たのです?」


 「え?バーベキューをしに」


 「肉、もう無いですわよ?」


 そういうと、クロムの目からぽろぽろと涙が吹きこぼれました。


 「酷い…」


 「冗談冗談。ちゃんと取ってありますわよ」


 「ほんと…!?」


 沈んでいたクロムの表情が、ぱあっと明るくなりました。

 頭にきたので、地面にお皿を置きました。


 「さあ食べなさい」


 わたくしの命令は絶対ですから。

 クロムは這いつくばって食べています。

 毛先まで艶やかな黄金の髪は、まるで金〇。


 「んにゃんにゃ…」


 クロムが頬にソースを付けています。

 拭いてあげますか。


 「クロム王子。ちょっと」


 「…まにゃ?」


 「動かないでくださいまし」


 #40の紙やすりでしっかりと拭いてあげました。

 

 「リネア様」


 「なんですか?」


 「キスしてください」


 「嫌です」


 そろそろ、じゃがバターが完成します。

 戯言に付き合っている暇はありません。


 「焼けたぞー」


 ロイドがじゃがバターを串に刺して持ってきました。


 「ご苦労さま。一本だけ花壇に刺しといてください」


 「絶対クロム王子のだろ…」


 「ええ。当たり前でしょうが」


 わたくしはロイドからじゃがバターを受け取り、出来立てホヤホヤを頂きました。

 じゃがホヤです。

 熱い熱い熱い熱い熱い。

 

 「リネア様だけ狡い!僕も!」


 クロムが起き上がりました。

 刹那、わたくしの視界は覆われました。


 唇にぷにっとした触感の柔らかいものがあたり、わたくしの口内に侵入する流動的な何か。

 冷酷な瞳で、淑女の大望を大胆に奪う純然なケダモノ。


 「離れな……さいッ!」


 わたくしはクロムを引き剥がしました。

 心臓が止まりそうでした。

 息が切れて、体が熱くて。

 咄嗟に逃げ出してしまいました。

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