第十五話 速攻で救出する公爵令嬢
囚われの王子様は何処にいるのでしょうか。
何処にもいないのでしょうか。
なら帰ろう。
今すぐに。
と、いうわけにもいかないんですよね。
なにせ王子ですから。
国王様にも絶対に見つけ出してこいと言われたので後に引けません。
スーパーダルいマン。
「はあ…」
メジスチナ王国近郊に位置するレインタウン。
年中無休で雨が降っている意味のわからない土地です。
そこに、見るからに怪しい建物がありました。
おどろおどろしいボロボロの木造建築二階建て。
風貌が完全に闇商人の人達が出入りしています。
まずはそこの入口前に立っている二人の闇商人に接触を図りましょう。
「あの、そこの小汚い御二方」
終わった。
完全に言葉選びを間違えましたわ。
「ああん?なんだこの女ァ…」
「まぁまぁ、そう怒んなって。んで、嬢ちゃん。こんなところにノコノコと何しに来たのかな?」
このお二人、明らかに品定めの目つきなんですが。
まあ仕方ありませんよね。
超絶美人公爵令嬢たるわたくしの美貌にあてられているのですから。
美、2回入りました。
「クロムという少年をご存知ありませんこと?」
「ああん?んな奴………」
今この男は「あっ」という顔をしました。
はいビンゴー!
巻いていきましょう。
「もし居るのでしたら売ってくれませんか?」
そういうと、男達は目を合わせました。
「…もしかしてこいつがあれじゃねーか?」
「間違いないな……うん。すまんが嬢ちゃん。ちょっとだけ待ってて」
そう言って男達は屋敷っぽい建物に入っていきました。
そして直ぐに戻ってきました。
硬いロープでぐるぐる巻きにされたクロムを引き摺る男を連れて。
「おー!おー!これはこれは。リネア嬢ではありませんか」
「ムグーッ!ムー!」
「さっきからうるせぇんだよ!このクソ王子がッ!」
「グギュッ…!」
男はクロムの頭を踏みつけました。
この男の素性は知ってます。
たしか最近没落した男爵家の跡取り息子だったはず。
いくつでしたっけ。
年齢は40前後だったと思います。
「リネア様、ですわ。そんな礼儀知らずだから没落するんですよ」
「あなただけには言われたく無いですね。私の全てを奪ったあなただけには…!」
「転移」
「えっ━━━━━━━━━━━!」
わたくしは首魁を含む闇商人達を建物ごと深海に転移させました。
深さ、約3500mです。
だって見覚えのある程度ですもの。
消すでしょ普通。
それに…わたくしの大切な犬に手を出したのですから…。
「ムグーッ!」
「はいはい、今解いてあげますから」
クロムの縄を魔術で解き、口に貼られた粘着質な紙を取りました。
すると、クロムが全身痣だらけの姿で飛びついてきました。
「怖った…怖ったよぅ…」
クロムは震えながら泣いています。
「雑魚なりによく耐えましたね」
「…うん」
「ひとまず帰りましょっか」
わたくしはクロムと共に転移魔術を使って帰りました。
帰ったはずでした。
転移した先は、見覚えのある誰かの部屋でした。
ウェーブがかった桃色の髪を持つ女の部屋でした。
「あのさリネア。移動手段に転移魔術使うのいい加減辞めたら?」
「うっせーですわ。いいから早く、クロムのお召し物を用意なさい」
「はあ……ちょっと待っててね」
リュリュが押し入れから女の子用の服を取り出してきました。
ドレスみたいでとってもキュートです。
「さあクロム王子。これを着て王宮に帰りますわよ」
「助けてもらってあれなんですけど、リネア様って頭おかしい」
と、クロムが暴言を吐いたので無理矢理取り押さえて着せました。
おけおけ、この痴態を国王に見せてやろっと。
息子さんの息子さんは無事ですよってね。
…は?
意味わかんないですわ。




