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第十五話 デジャブ

 思った通り、ロイドは飲酒生活に明け暮れておりました。

 意識が朦朧とするくらい浴びるように飲んでおりました。

 スルカの部屋で。


 「どぅうぇっへへへへへ!」


 なんでしょうね、この不潔な男は。

 まるで奴隷商人が、めっちゃ可愛い貴族令嬢を見つけて滾りきりまくり、口を塞いで馬車の荷台に乗せて誘拐した後、その子の父親に[娘を返して欲しければ]的な文書を送り付けて我慢できなくなり、少しぐらい味見するかと企んでいるような舌なめずりをしています。

 キモ。

 死ねばいいのに。


 「人集めはどうなりました?返答次第では路地裏生活をして頂きますが」


 「その声は……リヌア様…!?」


 「リネア様です。二度と間違えるな」


 わたくしはロイドを窓から突き落としました。

 大丈夫です、死にはしません。

 下はふかふかの芝生ですから。


 「グネァ…!」


 はい正気に戻りました。

 わたくしも転移魔術で向かいます。


 「ようやく起きましたね、この性犯罪者予備軍育成大学院学長」


 「悪意ありまくりのあだ名ですね」


 「貴方にぴったりでしょうが。で?人集めはどうなりました?まさか、まだ何もしてないとかは…」


 「なーんもしてません!」


 「そうですか。では今日から路地裏でゴミ箱に顔を突っ込みながら生きていきなさい」


 そう言って立ち去ろうとすると、わたくしの足にロイドがしがみついてきました。

 なんなら抱きしめてますよ。

 子供から大人への移行期間に何らかの不具合が生じて曲がりくねった人生を歩んでいたからでしょう。


 「離しなさいよ。学長」


 「嫌です!もう一度チャンスをください!」


 「クロムみたいなことを言いますね。離せ」


 「次はちゃんと真面目にやります!勇者だから!だからお願いします!お願いします!」


 「男に二言は無いんですのよ。さあ離しなさい」


 「お願いしてるじゃないですかぁあー」


 と、ロイドがわたくしのドレスを引き裂かんばかりに引っ張ってきたので蹴り飛ばしました。

 ロイドがドレスの丈を握り締めたままでしたので、結局破けました。

 スルカ邸の外壁にけたたましい音を立てながら埋め込まれたロイドの股下に追撃し、メイドを呼びました。


 「お呼びでしょうかリネア様」


 きょとんとしたまん丸お目目の新人メイドが来ました。

 スルカと同い歳ぐらいの青くて短い髪をした女の子です。

 メイドだからそりゃ女か。

 というか背が高い。

 ざっと3メートル後半はありますね。

 頚椎が損傷しかねないほどの角度で見上げないと顔が見れません。


 「名前を聞いておこうかしら」


 「ポンです。以後お見知りおきを」


 「いい名前ですね。てっきりドンかと思いましたよ」


 「よく言われます」


 そんなわけないだろ。


 「さて、この愚か者をスルカに引き渡していただけますか?」


 「はい、お任せ下さい。この愚か者を谷底から突き落としてきます」


 「そこまでは頼んでいませんわ。スルカに渡してくださいな」


 「はい。軽く炙っておきます」


 「死んでしまいますわ」


 勇者排除過激派筆頭とも言える危険なメイドですね。

 聞くところによるとスルカに絶大な信頼を寄せられているんだとか。

 新人でありながら抜かりない媚び売りですわ。


 「あ、そうでした。リネア様にこれを」


 「…?」


 ポンから一枚の手紙を預かりました。

 内容は以下の通りです。


 “クロン王子は預かった。返して欲しければメジスチナ王国金貨2000枚を用意して、デッドタウンに来い。仲間は連れてくるな。もし連れてきたらクロン王子の命は無いと思え”


 と、書かれておりました。

 なんと、クロンが人質に取られてしまいました。

 何者かは知りませんが、随分と舐めた真似をしてくれますわね。


 「明日にしよ」


 とりあえず今日はいいですわ。

 どうせ金を渡すまでは無事でしょ。

 あーダルいダルい。

 しくじってんじゃねーよ、ですわ。

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