第十二話 この世で最も必要なものは
金です。
金さえあれば何でも出来る。
出来ぬことなどありません。
むしろ金が世界を動かしています。
次に男。
男は財布です。
男は女のために日夜働き潰して、身を粉にして灰になります。
だから女性に比べて寿命が短いです。
そういう風に出来ています。
儚い人生ですね。
「という訳でクロム王子。早速、資金集めに奔走しますわよ」
「えー、面倒臭いです。リネア様一人でやってよ」
クロムは毛布を挟んだテーブルの下に寝転がっています。
ひょっこりと間抜け面だけ出して、わたくしの股下に顔を近づけようとしたので足で押し込みました。
ロイド曰く、これはコタツというものらしいです。
あ、前文で解説した毛布を挟んだテーブルの話ですからね、これ。
「リネア様は資金集めどうこうより、民衆の支持を集めた方が良いのでは?」
「んなもん集めずとも勝手に集まりましょう」
「それは絶対にない。僕、リネア様のこと悪く言ってるから」
「あらそう。普通にぶん殴り案件ですけども、取り敢えず何言ったのか教えてくださる?」
「はい。リネア様は僕を性欲の捌け口に使っていると建国パレードの時に叫びました。するとなんと、伝言ゲームのように広まりました。報連相は疎かにするくせに、噂だけは広まんだよな、この国」
「根も葉もない噂が広がりやすいのは万国共通ですわ。今すぐ飛び降りろ」
民衆の支持ZERO説が浮上。
最低最悪害悪のせいで。
「ではまず、身の潔白を証明しなければなりませんね」
「悪魔神が何をほざいてるんです?」
「…貴方のそういうところ。わたくし大嫌いなんですの」
「そうですか。僕はリネア様のそういうところ大好きです」
「……」
クロムの表情から感情が読み取れませんわ。
まあどうでもいいですけど。
「ん…」
急に肩が重くなりました。
どうやら、クロムが気を利かせて肩を揉んでくれているようです。
ぐいぐいと肩甲骨に指が押し込まれていきます。
結構力があるんですね。
「気持ちいいですか…?」
「ええ…とっても」
「どのぐらい気持ちいいですか…?」
「このくらい…」
「声、出してもいいですからね…?」
「もう十分ですわ。ありがとう」
そう言って手を引かせようとしたら、思い切り後ろに引き倒されました。
両肩を押さえつけられて身動きが取れません。
「……」
クロムはわたくしを見下ろすように、無表情でじっと見てきます。
澄んでいる訳でもない瞳で、何のいやらしさも無い手つきで。
わたくしは自然とクロムの膝枕を受け入れてしまいました。
「どうかしましたの?」
「いえ。なんでもありません」
クロムは終始顔色が優れません。
なんかモヤモヤしますね…。
「そろそろ離してくれませんか?」
「…いいですよ」
クロムそう言って手を離しました。
そして、わたくしが上体を起こすとすぐさまお腹に手を回してきました。
「リネア様っていい匂いですよね…」
「そうでしょうか?まあ、そこそこいい香水を使用してますからね」
「…好きです。この匂い」
「あら嬉しい。ありがとうございます」
「……」
クロムは今、どんな顔をしているんでしょうね。
知りたいような知りたくないような。
そんな気持ちにさせられます。
でも、お腹を摘むのは許せねぇ。
所詮、こいつはこいつでした。
多分。




