03 背後に気をつけろよ
出来た!見栄えはしないがいいだろ。
目の前にはカーブを描いた先程まで一本の細い木があった。
お世辞にもその仕上がりは綺麗とは言えない。
しかし、使った工具はマイナスドライバー状のものだけ。
それを考慮すれば十分な出来だと言えよう。
アーチェリーでのボウの部分は完成した。
当然ながら、もう二つ必要なものがある。
糸だな。これどうやって作るか。
木の繊維編んで作れるけど耐久力がないからな。
そうだ!
これも魔素纏で作れるじゃないか!
まずさっき腰に巻いてたツタをついてる葉を剥ぎ取ってツルだけの状態にして
それに魔素纏をかける。
これでワイヤーぐらいの硬さは出てるだろ。
これを弓の柄の両端に括りつける。
これで本体完成だ。
矢の部分はまた今度作るか。
これは置いといて他の道具でも作るか。
もし剣作っても絶対に獲物捕らえられないだろ。
ワイヤーで思い出したけど釣りこれで出来そうだな!
今度はツタじゃなくて木の棒に魔素纏をかける。
これの先にツタで作ったワイヤーをつける。
あとは石を削って針状にしてつける。
あとは餌なんだが川の虫でも捕まえるか・・・・・・今思ったんだが魔素纏って便利だな。
核となる物さえ在れば加工し放題だからな。
さっそく行きますか。ーーーーでも釣りか。
やったことないな。
釣れるのか?
糸垂らして待っとくか。
今水に写ってる自分見たけど、結構可愛いな。
人形のような整った顔。
肌は透き通るかのような純白。
そしてまるで染めたような鮮やかなピンク色の髪が風に靡いていた。
頭から生えてるツノは浅紅色の髪の毛で隠れていた。
側から見たら幼なげな少女にしか見えない。
これで中身は30歳って笑えてくるな。
何も起こらず、ボーとして1時間が過ぎた頃。
おっ! 竿に感触がきた。いやぁ長かった。
反発する竿を引き上げようとする。
が、しかし力強く引っ張られていた手応えはプツンと消えた。
急に引いたせいで針が外れてしまったのだ。
まあ次試してみよう。
ーーーー次は竿を動かしてみる。
そっちの方が生きてるように見えるし、餌を投げ入れる場所はデカイ石のそばにするか。
じゃあ投げて上下に動かしますか。
腕を振るい針を飛ばす。
「しばらく待っとかないといけないんだよな」
こう言う時にタバコがあったらいいんだが......
いや、また依存してしまったらダメだし。
「釣りって根気よく粘
肩に衝撃が走る。
「なんだよ!」
振り返るとそこには根棒を持った人型のモンスターがいた。
大きさは俺と同じくらいだ。
ウッソ〜、まさかここで死ぬのか。
本日3度目の死の予感。
うちひとつは死亡。
「ヤバいぞ。ほんとにやばい」
追ってくるモンスターから必死で逃げていた。
その手には竿が握られてた。
すぐ後ろでそのモンスターの咆哮が聞こえてきた。
その声が死の宣告を告げるかのようだ。
何を言っているのかはわからない。
言語を話してるのか、それともただに叫び声なのか判別がつかない。
どうする。武器なんてないぞ。
竿なんてなんの武器にもならんし。
つい持ってきてしまったわ。
竿を地面に投げつける。
そうだ!魔素纏だ。
「木の棒はあるし、無に属する魔よ。
この木の棒に纏たまえ」
目の前で黒い煙霧がかかる。
モヤモヤしてたものが枝に定着すると相手が持っているものと同じような杭的なものができた。
イメージを詳しく思い浮かべたら刃物なんかも作れたが、嶺二にそんな余裕はなかった。
でもこれ対抗できるのか?
そんな不安が脳裏をよぎる。
いつの間にかモンスターに追いつかれ、長い時間使われていたのであろうボロボロの武器が振り下ろされた。
それをコーティングした棒で受け止める。
思っている以上に攻撃が軽い。
もしかすると勝てるかもしれない。
受け止めた剣を押し返す。
相手は怯んで、隙ができた。
こんな好機をもちろん逃すはずがない。
過去に武術を習ったことなんかはないが、映画で見たような殴り方をする。
ひょろひょろな30のおっさんがそんな事をしても自身の拳を痛めるだけで
襲ってる相手を気絶させるような力は出せない。
それが少女なら尚更だ。
なぜそのような事をしたのは俺にもわからん。
しかし相手の体は見事に宙に浮いた。
背中にワイヤーでも付けてるかのようにだ。
この光景を映画の撮影でスタントマンがアクションをしてると言ったら皆信じるだろう。
目の前には身体を僅かに痙攣させた小さな体があった。
もう襲ってくる事はないだろう。
はぁ、疲れた。
あの岩に座るか。
こいつに話を聞けるかわからんが起き上がるまで待つか。
その間に魚釣り再開するか。
......ていうかここ何処だよ?
逃げて山の方に入ったが焦ってたからここ何処かわかんねぇ!
方角もわかんねぇし。
逃げてきた時のことを思い出すか......思い出せない。
まさか超記憶が治ってる!?
俺は前世超記憶症候群という珍しい病気になってた。
症状は極めて単純。
起こった全てのことを覚えている。
全世界で俺を含めて8人しかいない。
映像はもちろん、匂い、音も全て覚えている。
この病気について周りの人間は羨ましいと言う。
3年前にサラッと読み流した本の内容を全て覚えていた。
暗記という点でおいては次元が違うと言ってもいいだろう。
確かにその点においてはこの病気は有利だろう。
しかし、嫌な記憶も全て残っているということだ。
俺の場合は交通事故で死にかけた、その痛みを全て覚えてるということだ。
俺が覚えていた一番昔のことは生まれて5日後のことだ。
しかし今は覚えてない。
記憶があったというのは覚えてるんだがその詳細は全く覚えてない。
つまり治ったということだ。
嬉しい半分この状況においては最悪だ。
せっかくの水辺見つけたのに、喉渇いたらどうするん・・・・・・
喉が渇く、いや、渇いてねぇぞ。
現在、春、秋ぐらいの気温、20度くらいだが、
逃げるために走ったし、闘ったし、
汗の一つぐらいかいてもいいのに、一滴の滴も滴り落ちてない。
喉だって渇いてないし。
さらに謎が深まったぞ。
これも魔法の影響なのか?
わかんないしそう言うことにしとこっと、