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君と地平線の先へ  作者: ZEAK
 第一章『血に染まった地下世界』
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第7話『最前線にて』

 人々は戦慄している。最後の砦であった三番ゲート内は既に、業火が燃え広がっており逃げ延びる場所は何処にもない。何人死んだのだろう。今は確認する余地がない。地上部隊が全滅したのであれば俺たちは本当に終わりだ。願い続ける人も居れば、その場から動けなくなっている人もいる。どのみち俺たちは助からないのだろう......そうも思いながら少しばかりの小さな希望を胸に抱いていた。


一体のマシンノイドは破損したゲートの隙間に大穴を開け侵入してきた。


「ギャァァ!!」


声にもならないような悲鳴が響く。


「本気かよ!!逃げ場はもう何処にもないんだ!どうしてここが分かったんだよおぉ!!」





「レイン......もう、本当にダメみたい.....。レインがいてくれて本当に嬉しかった。私に地上の話をしてくれてありがとう.......」

「何だよ。急に......ヨルネらしくないぜ。」

「分かってる。だけど地下の皆んな及び私たちは、もう助からない.....。人間はマシンノイドに負けたのよ」


「まだ俺は、こんなところで死ぬわけにはいかないんだ....!だって....俺たちは地上の世界を見てないじゃないか!!」


レインは歯を食いしばり拳を強く握った。冷たい視線はマシンノイドに向いている。


「こんな.....訳のわからん奴らに。俺たちの生活、自由、全てを奪われてたまるかよ!!」




その瞬間、銃声が響いた。その音と同時に二人の男がゲート内に入ってきた。その男たちには見覚えがある。

そうだ....夕暮れに出会った中年と口の悪い男だ。

まさか、この地獄の様な地下の状況で生きていたなんて。


「皆さん!!伏せるんだ!」


中年の男の掛け声と共に、人々は頭に手を当て腰を低くする。


「グリード!集中攻撃浴びせるんだ!!奴は本当にしぶといぞ!」

「やってるさ!!」


マシンノイドを目前に集中攻撃を浴びている。

そのスラスターの閃光はお互いに混じりあうように向かう。もはや、マシンノイドの姿は見えていない。


「まだだ!!決してやめるんじゃないぞ!!刃の高熱展開時間が経つまで撃ち続けろ!」

「ああ!分かってるって!!」


一度高熱展開を起動した場合、次に再起動する時間はおよそ三分。それまでの間に時間稼ぎの道具として、機関銃のスラスターは使用される。


「おい展開可能だ!!カイロス!!起動させるぞ!!

.........おい、何している.....。もう砲撃はやめろよ!」


中年男性、カイロスは撃ち方をやめない。


「おい!!あんたらしくないぞ!!応答しろよ!

カイロスッ!!」


呼びかける声に返事はない。


「ちっ!くっそ!!高熱展開起動!!!」

高熱展開の掛け声と共に強くにぎった刀の刃は、赤熱を帯びる。


「何の武器だ?あれは!!」

レインとヨルネは驚きを隠せない。


「この鉄屑やろう!!破壊してやる!!」


口調の悪い男は煙の中から現れたマシンノイドの姿を見つける。すかさず命顧みず敵に飛び込む。


「うおぉ!!!!このっ!やろっ......!!」


何かが一瞬目の前をよぎった。それもとても嫌な何かが。


「そんな!!嘘だろ!!おっさん!!」

レインは、膝を崩して泣き叫ぶ。


「うぁぁぁぁぁっ!!!!」


ほんの一瞬の出来事であった。中年の男はマシンノイドの刃によって身体の中心から下を切り刻まれていた。そして力なく、地面に落下していった。息は既になかった。


口調の悪い男は、マシンノイドの頭部を斜め方向に一刀両断した。男の表情は見えなかったが怒りにも似たような感情を心から感じた。マシンノイドが完全に停止したのを確認した後に静かに涙を流していた。


レインが口調の悪い男の側に駆け寄る。


「おっさん.....俺に夢を語ってくれたんだ.....。

とてもでかい夢なんだよ。地上の世界を旅したいってさ」


「レイン...お前に似てたよ。おっさんなのに考え方はガキ。でも俺は好きだったよ。真っ直ぐなとこがさ」


ゲート内にいる誰かが声を上げて叫ぶ。


「おい!皆んな見てみろ!俺たちが今まで散々馬鹿にしていた地上部隊の連中が、俺たちを救おうと命を懸けて戦ってくれた!!

このまま黙って死ぬとしたら俺たちだって何かできる筈だ!皆んな、水を汲めるようなものを手に持ってくれ!辺りの火を消すんだ!」


勇敢にも立ち上がった市民が皆に呼びかけている。


「水だと!中枢部が機能してるなら、この大火災に人工雨を降らせるようコントロールできる筈だ!

中枢部が機能してないから水道なんて通ってないし

ましてや、この業火を消火できるような水を持ってくることは人間だけの力だけじゃ無理だ!」

「だけど、このままじゃ俺たちは業火に焼かれるか、マシンノイドにやられて死んでしまうぞ!

......中枢部の環境コントロールシステムを切り替えて人工雨を降らせない限りは」


レインはこのやりとりの中から閃いた。


「それだ!!中枢部に潜り込んでシステムを切り替える。マシンノイドに見つからないようにな!」

「馬鹿かよ!環境コントロールタワーは中枢部にあるんだぜ!!それも最上階に。何処も彼処も火の手が回っている。それに、ここからもかなり距離はあるだろ!」

「いや、その作戦に俺も賛成だ」


口調の悪い人と始めて意見があった。


「どうやって!どうやってこの業火の中潜り抜け、

中枢部に、それも最上階に行くんだ!」

「........この背中に引っ付いているものが見えるか?

これで飛んでいく。スピードもある。ひとっ飛びだ」


そう言って男は【戦闘補助支援型外骨格】を指で指した。


「だが、もうエネルギーは尽きかけているし飛行時間もそう短くない。マシンノイドに出くわしたら終わりって言う、大きなデメリットはあるがな。」

「俺も行く!」


レインが群衆の前に出た。


「は!?馬鹿か?どうやって!!」

「レイン!?」


「おっさんのを使わせてもらう!奴らの目を欺く偵察員が必要だろ。」

「でも、お前!!この装置、見たことあるだけで使ったことは一回もないだろ!!」





「分からないけど.........俺はこの装置を、ずっと前から知っていた気がするんだ.......」


 第8話へ続く






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