第6話『対峙するもの』
「はぁはぁ......私...生きてるの?」
「ヨルネ!!よかったヨルネ!!無事でいてくれて!」
「ちょっと!そんなに近づかないでよ!!一体何があったていうの!!てか、その血どうしたの?
「な、何でもないよ。とにかくよかった!後少しのところで地上部隊の方が来てくれていなかったら、君はマシンノイドに殺されていたんだぞ!!」
「そう....ここは何処なの?辺りが暗くてよく見えない」
辺りには、うっすらとした電光灯の明かりしかない。子供の泣き声や人々のどんよりとした小声が聞こえる。
「ここは三番ゲート内だ。もう安全だよ。だけど外は非常にヤバい状態だ。いま、地下警備隊と地上部隊が協力してマシンノイドの殲滅に尽力しているんだ。とにかく、ヨルネが無事でよかった」
「外は....。一体どういう状況なの?.....」
「あっちに、窓がある。外の様子が見えるぞ」
二人は窓から顔を覗かす。そこに広がっていたのはこの世のものとは思えない地獄だ。街はすっかり炎の渦に飲み込まれてしまい建物は原型を留められないほど崩壊している。もう外に安全な場所は何処にもない。炎や煙の中でうっすら見えるのは空中を飛び交っている地上部隊の様子のみだ。
「敵は、確認できるとこ後4体!!」
「4体?!あと一体は何処にいるんだ!!」
「わからない!!レーダーから反応が消えたんだ!
きっと地下警備隊のものが破壊したんだろうよ!!」
「右下だ!!カズ!【天雲五式】に持ちかえろ!
そのまま頭上に飛び込むんだ!!奴の電波に触れんじゃあないぞ」
天雲五式。それは対マシンノイド用武器として作られた機械構造の刀である。グリップ部分には高熱展開のための起動部品があり、これを解除することによって刃全体は熱を帯びる。これによってマシンノイドの強靭な頭部を切断することが可能である。
高熱展開を起動させている際の、電気エネルギーは鞘に納めておくことで充電が可能となる仕様である。
展開時間は、およそ三分と言ったところか。
このちっぽけな世界での標準武器となるものである。
「あいよ!!高熱状態解放!マシンノイドめ!こいつをくれてやるぜ!」
その言葉と共に手に持つ天雲五式の装置が発動する。
その刃は徐々に赤熱状態へと移行し、より強力な威力を持つ武器へと変化する。
(........マシンノイドがこちらに気づいただと?)
「まずいカズ!!待てっ!!!」
「なんだっ?!」
マシンノイドが、手に持っている火炎放射器の様なものをゼロ距離でカズに向ける。
「カズッー!!!」
カズは一瞬で黒ズミになった。そのまま炎の渦に落下していった。
「貴様!許さんぞ!!高熱状態解放!!展開!」
マシンノイドの頭部を貫いた。真下へと一直線に落ちていく。かに思えたが、マシンノイドの手はしっかり男の足を掴んでいる。男とマシンノイドは炎の渦へ消えていった。
「残り3体だ。地上部隊は30人送り出したのち、生存確認できるのは15人。地下警備隊は中枢部を守ってくれているシルヴァ君。ゼロの部隊は先に向かわせている」
「はい。イザーク総司令官。出撃許可有難うございます」
「君が、最後の要だ。シルヴァ・フォールンスター........」
「行って参ります。」
一方、三番ゲート内にて。
「もう、ダメだ!!はっはっはっ!俺たちみんな、この地下で埋もれてしまうんだ!はは!ああ!熱い熱いなぁこの中は!!ゲートを開けてくれ!外に行きたいんだ!!水だ!水をくれ!!きゃはは!」
「ダメだ!ゲートを開けるんじゃない!!落ち着くんだ!開けた途端に火が回ってくるぞ!!」
「うるさい!!ははっ!どけよ!どくんだ!もう何もかも終わりだ!」
「誰か!誰でもいい!彼を止めてくれ!早くしないとみんな死ぬぞ!!」
何人かの男性が彼を必死に止める!しかし男は食い下がらない。
「やめろっ!!だめだ!こいつ気が狂ってやがるぞ」
「はぁ、ははっ!ほーらよっ!」
遅かった。ゲートの扉が開いた瞬間、男数名は火の渦に飲まれてしまった。
「お、おいマジかよ!!ゲート内に火が回って来たぞー。後方に下がるんだ!」
「キャー!!!」
「水だ!!水を持ってこい!誰か水は所持していないのか!広まるぞ!!」
火の手はゲート内に入ってきた。悲鳴が鳴り響いている。ゲート内の後方にはもちろん逃げ場がない。隠し扉があるはずもない。あるのは電光灯の明かりと言ったところか。とにかく薄暗くて何も見えない。この中には何千人の人々がいるのだろうか。それすらもわからない。
「ねえ!レイン!何処に行くの!!また危険なマネして!」
「ゲートを!!ゲートを閉めるんだっ!!みんな死ぬぞ!!」
次の瞬間。ゲート内に凄まじい爆発音が聞こえてきた。それと同時に真っ暗闇の中から紅いモノアイが点滅しだす。殺気と恐怖を伏せ合わせた生命体。奴だ。
そうマシンノイドだ........。
第7話へ続く