第5話『侵略者』
一方、時を少し遡ること10分前。街の中心部。
「地下警備隊隊長が到着しました!
ジン参謀長は不在のようです」
「第二警備隊は市民の安全を確保。第一警備隊と、第三警備隊、特殊化学部隊は戦闘配置につけ。
いいな!敵は5体。少人数だからと言ってあなどるな!奴は、1体だけで警備員の百人分に匹敵するほどの力を持っている!」
「御意!!」
「隊長!上空にマシンノイド一体を確認しました。
どうやら、別々に行動を行なっている模様です!」
「よし!各班!スラスターの照準を合わせよ!
目標、右斜め前方!!これより掃射作戦を開始する!テッー!!」
閃光が飛び交う。瞬く間にして、視界はスラスターの光の中に妨げられた。
「撃ち方やめ!!」
隊長の勢いよい合図と共に、警備員はスラスターを下ろす。あたりは、火薬の煙でよく見えない。
「周囲の警戒を怠たわるな。奴を完全に淘汰したのか確認する。
各班はこのまま待機せよ。スラスターの照準を合わせておけ」
人工の風が、辺り一面の煙をゆっくり吹かせている。
そして次第に、視界は良好に澄み渡った。
「奴の、残骸を確認する。第一部隊は速やかに作業を開始せよ。第三部隊、特殊化学部隊は残り4体を追.....」
「隊長!!上っ!!」
「なっ......に?」
目にもよらぬ速さで部隊長の頭頂部を勢いよく、銀色の刃が貫いた。
紅く、血飛沫が空を舞う。
「総員っ!!スラスター用意!!目標はすぐそこだ!!テッー!!」
しかしマシンノイドは瞬く間に隊員の身体を貫いていく。幾つもの手や足が乱れ吹き飛んでいく。その様は、まるでこの世の光景とは到底思えない。
「退散だ!!一時退散せよ!!陣形が崩される!このままだと殺されるぞ!」
「いや、ダメだ!!ここを崩されたら再び立て直すのに時間を要するぞ!!
それに、俺たちがここを退いた所で市民はどうなる!
その間に、より多くの人間の命が奪われてしまうぞ!!」
逃げ帰るもの、勇敢に立ち上がるものがいるが
しかしそれは一瞬の出来事であった。先程まで漂っていた生者の跡影や息吹は何処にもなく、そこには静ま
りかえった死体の山が存在していた。
「.......ザッ....ザザ.....応答願う....こちら...第....」
発信器から、雑音を交えた人の声が途絶えた。
どうやらマシンノイド交戦中の警備員の声である。
「クッソ!!第一、第三部隊の連絡が途絶えた!!
隊長がやられただと?!参謀長は何をしているんだ。地上警備隊の到着の方はまだか!!
奴らはマシンノイド淘汰のために派遣された部隊の筈だ!一体どこで何をしてやがる!!」
「班長!!西側の街の方が炎の渦に飲み込まれていきます!未だ、市民の安全は確保できてない状況のようです!急ぎましょう!!」
マシンノイドの攻撃が市民を襲う。人々の叫び声はより一層激しく聞こえてくる。
状況が全くわからない。誰が生きていて誰が死んだのだろう。人々の不安は極限状態を迎えている。
「.....だめだ。このままだと俺たちは間違いなく全滅だ。震えが止まらない........。
300年という長い間、人々は地下という不自由な環境の中で日々を送っていた。それぞれが明日の光を信じて........だけどよぉ?こんな最後はあんまりじゃないのか?これが俺たちの最後というのならば俺たちは、あんまりにも残酷じゃないのか?....」
「いや............班長。それはまだわかりませんよ。
かつて地上に寄りもしなかった人々の中で唯一
運命に抗うものがいた。
彼らは、決して諦めたりはしません。あれを見て下さい」
女性隊員が真っ暗な天井に向かって指を指す。
その先には確かにいた。幾つもの影が。
背中に機械の塊のような馬鹿げたものを装着した連中が、颯爽と空中を飛びかっているではないか。
「奴らか。そうか......俺らには未だ奴らがいたのか。この先の見えない暗く、そして小さな世界を照らす
たった一つの光が。それも太陽に負けないような光が....!!」
第6話へ続く




