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君と地平線の先へ  作者: ZEAK
 第一章『血に染まった地下世界』
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第3話『真実』

 この場所は、地下都市の真下に位置する場所だ。

しかし、地下にこんな場所があるのかと思うぐらい広い。


レインは、目新しさに感極まる。


「え、えっと!じゃあ、あの背中につけてある機械の様な物は何だ?!」

「あれか?あれは【戦闘補助支援型外骨格】と呼ばれる機械だ。何十年か前に地上のある場所で発見された精密な機械で未だに技術が解明されていない....」

「お、おい!!それは一般市民には内緒のはずだろ。

話せることだけ話せよ」


「ああ....すまない。気にしないでくれ。

あの機械には、地上用と飛行用があり飛行用だと背中に背負うことで人間は空間を自由に移動することができる。つまり空を飛ぶことだって可能だ」

「空を飛ぶ?マシンノイド相手に何故それが必要なんだよ?」


口調の悪い男が話し出す。


「いちいちうるせぇな。疑問を持つことがガキの務めか?いいか、生身の人間じゃマシンノイド相手に近づくことすらできない」

「......近づくことすらできない?!スピードが人を遥かに上回るのか?!」

「いや、違う。正確に言うと奴らの周囲にはD波と呼ばれる電磁波が流れている。その電磁波は、微量であったとしても人体に悪影響をもたらす。つまり死ぬ」

「じゃあ銃火器などで離れたところから戦えばいいんじゃないのか?接近戦がダメだとするならば」

「いや。それがそうもいかねぇ訳だ」



口調の悪い男が眉を潜める。さっきの自信家がまるで嘘のようだ。



「マシンノイドのこと、知らねぇのに地上に出たいって言ってるのかよ。まあ、俺たちも完全に把握できていないし構造なんかは未だに解明されていない。しかし、奴らにとって銃なんてものはただの脅しの道具みたいなもんさ。まあ機械相手に脅しもクソもないがな」

「そうだ。銃火器系統の武器じゃあ一切通用しない。つまり、奴らを接近戦で倒さなきゃならないんだ。それも電波数の少ない頭上から。奴らは頭部に生命活動機能がついてる。その頭部を切り離さない限りは、奴らの動きは止まらない」


レインの口元が少し震えているかのように見える。


「はは、どうだ?これで地上のことは少し分かったか?人々が迂闊に地上に近づこうとしないわけだ。

まあ、いまのお前を見る限り相当びびっているみたいだがな?!小便なんか漏らしてなきゃいいが」




『そいつら全員倒せば、俺達は地上に住めるんだ。

そうだよな?』




 

するとそこに背の高く後ろからマントを肩からなびかせた男性が近づいてくる。


「おっと、これはイザークさんではないですか。

こんな所に来て、どうされたのですか?」

「この場所に侵入してきた人間がいると聞いてな。

その眼帯の青年がそうか?」

「はい。どうやらこの子、地上に興味を持っているみたいです。途中尾行しているのに気づき私たちの判断で連れてきました」


中年の男性が畏っている。風貌、容姿、なびかせた紅色のマント、どうやらこの男。ここでは位の高い人間のようだ。


「どうも初めまして。私の名はイザーク・ノットギアだ。この【地上防衛軍前衛部隊】の司令官を務めている。とは言っても、人手不足のまだ小さな組織だがな。」

「どうも、俺はレイン・ウィルウァーカー!

 俺は、地上の世界に興味があるんだ!」


「ははっ。威勢のいい青年だな。ところでレイン、君は何故地上に興味を持っているんだ?」


「俺は、いつか地上に出て太陽の光や、雨、雪、そして昔の本に記載されている内容が正しいのかをこの目で確認したいんだ!そして、奴らを殲滅した後、俺はこんなところを飛び出して、地上に住むんだ!」


イザークと名乗る男は、急に表情が険しくなった。


「そうか...........ならば辞めておいた方がいい。そんな甘ったるい考えだけで地上に出たとしてもすぐに死ぬだけだ。命の無駄使いだろう....」

「何でだよ?マシンノイドの脅威はさっき知ったけど、抵抗する手段があるのならきっと全滅できるはずじゃないのか?!」


「..........今回の作戦で50人の者が地上に出ていった。そこで帰って来れたものはどれぐらいいると思う?」


「えっ?」



レインは思わず声を漏らす。




「......そこにいるもの二人だけだ」


レインは、慌てて男達に目をやる。さっきまでの活気だった姿はどこにも無い。ただ、下を向いたまま微動だにしない。


「いいか、これが地上の現実だ!誰も帰って来ない時だってある。その度に私は涙を堪えている。これが、ずっと続くのだ。夢と現実は所詮、互い違うものだよレイン」



言い返せるような言葉はどこにも無い。ただ呆然と立っていた。冷たい風が短い髪を散らしている。




「今日のことは内緒だ。なんてったって、世間はマシンノイドに戦うことには消極的だ。君みたいな考えの子に出会えてよかった」


中年の男性が話しだした。


「確かに、イザークさんの言っている地上の話しは事実無根だ。マシンノイドの恐怖に関してはな」


男が、静かに笑みを浮かべる。



「だがな......。地上には、溢れんばかりの木々や草原。青い広大な海や、太陽、手で取れんばかりの花が咲いているんだ。俺もな、いつかマシンノイドを全滅させて人間が安心して地上に住める様になったら、地上の旅をしたいんだ。そこで日記を書くんだ。俺の生きた証を残すために!」


「あんたも。みんな同じ気持ちなんだね。今日、地上は危険だってことがとてもよく分かったよ。

でも……......やっぱり俺は地上に行ってみたい!

この目で見たいんだよ!真実を!そのためには早く

一人前になって奴らを一人でも多く殺さないと!」

「そうか。わかった。いつでもここに来い。また地上の話をしてやる」



そう言って二人は堅い握手を交わした。






そしてその日の夜、事件は起きた。


「逃げろー!奴らだ!奴らが入って来たぞー!」

あちらこちらから市民らの声が聞こえてくる。

目を覚ますと、辺り一面火の手が回っていた。

 

一体、何が起きたんだ?という顔で部屋を見渡す。

しばらくして地下警備隊の放送が聞こえてきた。


「市民の皆さん、早急に避難をお願いします!

マシンノイドが侵入した模様です!

数は......5体!第三ゲートへの避難をお願いします!」


その放送は、地下全体に響いた。どうやらマシンノイドが侵入した模様だ。人々の断末魔が聞こえる。


「敵が来た............敵が来たんだ!!」

ばっと目を覚ましたレインは慌てて毛布にくるまう。その様子は酷く怯えた小動物のようだ。




「隊長!!」

「マシンは恐らく、都市内の中枢部を破壊するつもりです!」

「まずいな。中枢部を、破壊されたら俺たちは終わりだ。総員!武器を手に取れ!何としてでも中枢部を死守せよ!!

「御意!!」

「さて...連中はまだみたいだな。ジン。」

「ああ。こんな事態が起こることは前々から予想済だ。俺たちも訓練はそれなりに受けている。事態を収束することだけを考えよう。いいか、くれぐれも地上のカルト連中共には遅れは取らせはしない!!」

「しかし....何故奴らがこの場所を特定できたんだ?」


「さあ....分からない!!奴らの数も少人数。

今はマシンノイドを殲滅することを考えてなければ。」




ガチャ。勢いよく部屋の扉が開いた。



「はぁはぁ!!レイン!!起きて!早く逃げるよ!!」

「ヨルネか!!無事でよかった!」

「施設の寮母さんや皆んなは、先に避難したわ!

きっとレインだけ、目を覚ましていないと思ったから一応確認しにきたのよ!」

「あとは俺たちだけか.......。マシンノイドはまだこちらまで来てない筈だ。ヨルネ、今のうちに三番ゲートに向かおう!」


そう言ってレインはヨルネの手を取る。

ヨルネはしっかりと手を握る。


「しかし......300年もの間にマシンノイドが侵入して来たなんて記録は何処にもない!何故、今日なんだ?」

「分からないわ.......だけど、きっと地下警部隊もいるのよ。事態もそんなに大事にならない筈だと思うけど....」


「だといいがな.......」


それは突然であった。廊下側から金属音の様なものが響いた。同時に胸中がざわつく。


「おい.....聞こえたか?...今の音なんだよ。」

「聞こえたけど....まさか....奴らの音なの?」


ギッギッギッ。錆びれた刃物を研いでいるような音が近づいてくる。二人はようやく、この音の発する存在を確信した。


「嘘.........だろ?」



レインは肩から崩れ落ちた。

恐怖の余りに彼は一歩も動けなくなってしまった。

敵はすぐそこだ。恐らく二階建ての階段を一段一段と登ってきている。もう十メートルもないだろう。


 第4話へ続く







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