第2話『地上の世界』
必死に追いかけているうち、もう辺り一面は真っ暗だった。そこに、活気だった昼間の街の姿はない。
「もう夜か....」
地下の環境は、地上の環境と同様に設備されており
人の手によってコントールできるシステムだ。
そのため、温度も調整され定期的に雨も降ったりする。昼も来れば夜もくる。もちろん見かけ上ではあるが。人間の生命活動の維持と言ったところか。
ヨルネは、辺りを見回す。そこにレインの姿はない。
「全く、年頃の男子ってなんでいつもこうなの?」
呆れた様子で溜息を吐く。
広場には、くたびれた白い溜息が広がった。
きっと地上は雪が降ってたりするのだろう。
コートを羽織った二人の男性が、薄暗い路地裏に入って行った。
あそこだ。きっと何かあるはずだとレインは思った。
狭い路地には、二つの分かれ道が続いていた。
男性は左に進んでいく。レインも神経を集中させて後を追う。きっとバレたらただでは済まないだろう。
レインも曲がり角を進んだ瞬間、もう男たちの姿はなかった。
「えっ?」
驚いた様子で声を漏らした。
その瞬間、消えたはずの男性2人が目の前に立っていた。
「後をつけられてると思ったら、ただのガキか」
「おい、そんな言い方はよせ。グリード。
君はここで何をしているんだい?」
中年の男性が、優しい口調で話しかける。
その姿は妙にぎこちない。
レインは、覚悟を決める。
「あ、あんた達が地上に出ているのは知っている!
なぜ、地上にでているのかを教えてくれ!」
「何?地上になぜ行くのかだと??おい、このガキンチョは地下警備隊の回しもんか?」
「いや、多分違うだろう。この目は本物だ。
俺は何人かこの目をしたガキを知っている。」
「じゃ、こいつも同じなのか?」
「ああ、俺たちと同様、この世界じゃ変わりもんさ」
レインが口を開く。「尾行したのは謝る!あんた達が、いや、地上はどんな場所か教えてほしいだけだ!」
思わず本音を漏らした。
言った瞬間に後悔する。
「君、歳はいくつだ」中年の男性が呟く。
「俺は15歳」
「け、まだガキじゃねぇかよ。一丁前のこと言いやがって。でも、俺はお前のこと嫌いじゃないぜ。
ガキは嫌いだがよー」口調の悪い男性が呟く。
「よかろう。時間は遅いが、少しだけみせてやろう。ついて来い」
そう言って彼は案内してくれた。
暗い路地裏の道を抜けた先に、よく見たら大きな隠し扉が地面にあるのを確認できた。周囲は薄暗いため一般人では、到底気付く事ができないだろう。
しかし、何故こんなところに?そんな疑問を抱きつつも男2人についていく。
「よし、周囲には俺たち以外、誰もいないな。
開けるぞ。そっちの取手を持ってくれ」
「ああ、開けるぞ」
男2人は、扉を静かに開ける。とても慎重である。
余程、気づかれたくない様なものが、この下に置かれているのか?それとも、何か良からぬ兵器でも隠し持っているのではないか?そうこう考えている内に、男たちは扉の中に入って行った。
「おい!何しているんだ!
ついて来たくなかったんならこの扉を閉めるぞ!」
「すんません!!」
扉の中には螺旋階段が底の方に伸びていた。ランプはいくつも壁に掛けられているものの、相変わらず薄暗い。そして恐る恐る古びれた階段を降りていく。
足を踏み出すたびにグラグラ揺れる。
しばらくして、暗闇を抜け光が差し込んだ。
その光の方から音が聞こえる
機械音だろうか。音は、光に近づくにつれ大きくなっていく。
中年の男性が、大きなドアを開ける。
「え、なんだこれ!!」
レインは驚きを隠せない。そう、そこにはいくつものカプセルが並べられていてその中に、人工呼吸器をつけた人間が入っている。そこだけじゃない、部屋がいくつもあり、ある部屋ではサッカーコートに匹敵する大きさのルームで、怪しげな機械を背中につけた人間が飛び交い、射撃の訓練を行っているではないか。
「一体、これはなんなんだ!?」
「はっはっはっ!驚いたか!まさかに地下都市の地下にこんな場所があるなんてな!全く、笑い話だぜ!」
「ああ、驚くのも無理はない。まさか、地下の人間の大半がマシンノイドに戦いを挑むなんて思ってもないだろう!?」
「え?........ってことはつまり」
「ああ、俺たちは近々マシンノイドに戦争を仕掛けるつもりだ。そのために、地上にでて一緒に戦う仲間を募集している」
驚いた。まさか.....マシンノイドに本気で戦うと思う人がいるなんて...
.そして、本当にこの人が言っているように俺たち地下都市の人間以外にも、まだ人間が生き残ってるのか?
第3話へ続く