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忠犬ネルビーの大冒険  作者: 蒼穹月
そして日常へ
16/19

お兄ちゃんだからなっ

 新しい巣にも慣れて、おれの縄張りも村全体に行き渡った。

 すでに誰かの縄張りになってたとこもあるけど、挨拶しに行ったら受け入れてくれた。というより、おれは守護獣だから縄張り上書きとかならないらしい。よくわかんなかったけど、仲良く出来るならそれでいいと思う。

 はれて村がおれの守備範囲に収まったから、おれの日課のおさんぽは、日課のパトロールになった。だから今日も村中に鼻を光らせてるんだけど。


 『わふ~、ブルブルブルっ。

 今日は昨日よりもっと寒いなぁ。昔の住処はこんなに寒くならなかった。リリが読んでくれた雪の国みたいだ』


 ここに来てからどんどんと外が寒くなって、おれは堪らず体をプルプル震わせた。


 「あー!ネルビーだ!ネルビー!ネルビー!」

 「ずるーい!ボクもギュウってする!」

 「おにちゃ、あたちもちたいっ」


 そこに村の子供達が一斉に駆け寄って来た。

 子供達はおれの体にギュウってまとわりつく。そしたらポカポカあったかくなった。


 『リリもこのくらいの時は今よりあったかかったな』


 子供体温というやつだと、当時一緒にいたボス猫のボスが教えてくれたっけ。

 おれは子供達に揉みくちゃにされるけど、お兄ちゃんだからな!お兄ちゃんは小っちゃい子のメンドーをみるんだ。なにより今日はこの温さがニクイ。


 『仕方ないな、好きなだけくっ付いてればいいぞ』


 なんならもっとくっ付けって思って一番顔に近い雄の子供の顔を舐めてやる。そしたら「キャー」って嬉しそうにもっとギュッとしてきた。よしよし、子供だからなっ。おれの尻尾が勝手にフリフリしてんのは、アレだっ。ワザとだっ。その方が喜ぶからなっ。


 「あっ!雪だ!」


 子供達とおしくらまんじゅうしてたら尻尾の近くにいた雌の子供が空を指差して叫んだ。

 おれはその指につられて見上げた。


 『ぬ?』


 そしたらおれの鼻先に白いフワフワしたのが落ちてきてくっ付いた。雪だ。

 おれは雪を確かめようと鼻先を一生懸命舐めた。消えた。


 『むぅ。雪は弱いな』


 やり切れない思いだけが燻り残って、おれは雪を捕まえようと空を探した。

 そしたら最初はチラッチラッだった雪は、早くおれに捕まえろって言わんばかりにいっぱい落ちてきた。


 「わー!初雪!」

 「これつもるかなぁ?」

 「わたゆきだしぜったいつもる!」


 むむ!?おれにギュッしてた子供達がみんな離れてしまった。おれは寒々しくなった体でショボンと尻尾を垂らしてガッカリした。


 『むぅ、おれはお兄ちゃんだからなっ。子供達が元気なのにおれだって寒くなんてないっ』


 次々と落ちてくる雪に、おれの体がどんどん白くなっていく。それをブルル!って振り落とせば体もあったまって丁度良い。おれ天才か。

 おれ白くなる。プルプル震える。ブルブル振り落とす。あったまる。白くなる。プルプル震える。ブルブル振り落とす。あったまる。白くな……。

 はっ!これがむげんるーぷとか言うやつだな!

 おれは反撃の為に落ちて来る雪を退治しようと飛び跳ね噛み付く。

 でも噛んでも噛んでも雪は無限に落ちてくる。


 『くそっ、負けないぞ!』


 おれが雪と戦ってたらいつの間にか子供達も真似して飛び跳ねてた。

 うむ。子供のうちから狩りを覚えるのは良い事だ。

 おれは見本を見せる様に雪に立ち向かっていった。

 夢中になってたらいつの間にか体がポカポカ熱くなってた。

 ふふん。おれの勝ちだな。


 『よし、今日の所はこれくらいで勘弁してやるぞ』


 子供達もポカポカになった様だしな。それにそろそろご飯の時間だ。

 おれはまだ諦めずに立ち向かう子供の服をハムと咥えて止めた。


 『ご飯は大事だ』

 「ネルビーっ。かまってほしいのかー?」

 『違う。ご飯だ』

 「ほ~れ、うりうりうりっ」

 『ち、違うっ。ごはっ、くぅ、こ、これはっ、止めれっ!いや止めるなっ』


 むむむ~っ。言葉が通じないの不便だなっ。リリなら守護獣なる前から思いが通じたのにっ。

 おれは子供達の思い切りの良い前脚使いに、親が呼びに来るまで翻弄されてやるのだった。

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