表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

旅の終わり・そしてこれからは共に

 おれはネルビー。

 おれは初めて空を飛んでる。

 凄いんだ。多分きっと史上初じゃないかな!?犬が空飛ぶのっ。

 でも思ったより速くないや。リリの絵本だと空を飛ぶドラゴンはバビュンと流れ星の如く飛んでいたのに。


 「わふ~?」


 最速でこれか思わず聞いたら、サラマンダーはキョトンとした風だった。顔は見えないけど目を瞬かせてそうだ。


 『いや、安全飛行だ。最速で飛べばネルビーを振り落としそうだからな』

 「バウ!」


 平気だぞ!おれいっぱい鍛えたから踏ん張れる!最速で行って欲しい!


 『ふっ、汝も雄だな。良かろう、振り落とされん様に精々踏ん張る事だ』

 「ぱきゅ」


 サラマンダーはおれの思いに答えてくれた。

 でも急に見えない壁に当たって顔が潰れそうになった。強化魔法してなかったら危なかったぞ。


 「うきゅ~~っ」


 腰を低くしてなるべくサラマンダーの背に平らになる様に踏ん張ってないと、本当に何処か飛んでっちゃいそうだ。

 おれは歯を食いしばって頑張って耐えた。

 何度か休憩と睡眠の為に野に降りたけど、それ以外はずっと飛び続けた。だいぶ遠くまで行ってたんだな。

 サラマンダーの最速に慣れて、周りの景色を確認出来る様になると、真っ直ぐ前方向に大きな山が見えた。横に広がる繋がった山に、その奥に雲から突き出す程高い山がある。

 おれは何だかワクワクする様な、ウズウズする様な、いてもたっても居られないそんな気分になった。

 これは予感だ。リリがそこにいる気がする。

 更に近づけば予感は確信に変わった。

 遠くて砂粒みたいに小ちゃいけど。あれは確かにリリだ。リリが見えたんだ。


 「わん!わんわんわん!!」


 速く!もっと速く!

 今すぐリリのお腹にダイブしたくて、おれは無意識に後脚を揺らしてサラマンダーを急かした。


 『わっ、こらっ!暴れるな!真っ直ぐ飛べんだろうが!』


 むー!むー!速く!速く!

 サラマンダーが何か言ってるみたいだけど、今のおれにはリリしか見えない。変わらず、いやもっと激しく後脚でグングン踏み締める。

 リリ。リリ。

 ああ、リリがどんどん大きくなっていく。リリだ!リリがそこにいる!


 『ああっもう!こんな所で限界に挑戦する事になるとは思わなかったぞ!』


 サラマンダーが何か言ってたけど、やっぱりおれには聞こえなかった。でも、さっきよりもっともっと速くなった!どんどん速くなってる!これならあっと言う間にリリの元に行けるぞ!

 見えない壁で口がアワアワとブレるから遠吠え出来ないのが残念だ。この興奮、発散する術が無い。

 久し振りに見るリリは、とっても元気そうで、とっても楽しそうだ。良かった。怪我も無さそうだ。

 でもキョロキョロして何探してるんだろ?あ、こっち見た!リリがこっちに気付いたぞ!


 「グルルル~っ」


 鳴けない変わりに唸り声でサラマンダーに速くリリの前に降ろしてくれる様に懇願した。


 『獣神様が居られるのに無視出来る訳……!

 ん?あ、はい。そうですか。

 ネルビーよ、恐れ多くも獣神様が真っ先にリリの元へ汝を連れて行くよう仰せだ。五体没地の思いで感謝をし、生涯に渡り敬うが良い』

 「グルルル~っ」

 『聞いていないな!?ああっもう本当にっ!わざわざ心言を飛ばして下さったのに!』


 何だかサラマンダーが騒いでるけど、今のおれはそれどころじゃ無い。

 だってリリが目の前にいるのに。久し振りに見るのにそれ以外なんて見える訳ないんだっ。

 瞬きも忘れて食い入るように見てたら目が痛くなってきた。でも目をつぶったらリリが見えなくなっちゃうから我慢なんだっ。

 歯を食いしばって頑張って耐えていれば、リリの姿はどんどん大きくなっていった。その姿は最後に見た時よりちょっと大人になっている。

 離れ離れになっている間の喪失が勿体ないと、悔やむ気持ちはあるけれど。その代わりにここから先の未来を長く見続ける事が出来る。リリがおばあちゃんになってもずっと一緒にいられるように頑張ってるんだから。


 『直陸体制に入る。振り落とされんように踏ん張っているように』


 言うが早いか、サラマンダーは翼を大きく斜めに伸ばした。そしたら体が斜めに傾いておれはビックリした。

 サラマンダーの巨体が大きく旋回を初めて、さっきより抵抗が強くなったように感じたおれは、慌てておなかを密着させてへばり付いた。

 危なかった。もう少しで振り落とされるかと思った。

 風が唸り声をあげて渦を巻いていて、リリの危険に体が震えた。サラマンダーにゆっくりするように言おうと思ったけど、下で人型の獣の神がリリを守って抑えてくれているのが見えた。

 あの獣の神が獣の神の子供かな。おれは心の中で「ありがとう」をしてからリリに視線を戻した。

 リリってばサラマンダーばかり見てて、ちっともおれに気付いてないんだ。ちょっと悲しかったけど、でもそこで悪戯心がニョッキリ顔を出したんだ。

 わふふっ、サラマンダーの頭からバって飛び出してダイブしたら驚くかなっ。

 そんでおれに気付いたらリリの巣でよく見せてくれたあの満面の笑顔をおれにくれるかな?


 そしたらおれも満面の笑顔で「ただいま」って顔をいっぱい舐めるんだっ♪

本編はここで完結とします。

この続きは獣神娘で既に書いているので。

ただその後のお話は番外編としてポチポチ書いていければいいなと思っています。


超不定期更新にも関わらず、ここまでお付き合いくださり本当にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ