いざ冒険へ その1
「よーう、カーラ、何してるんだい?」
蔵の中にいると村長のキンジがやってきて、カーラに声をかけた。
「チサトに好きなものをあげようと思ってね。ちょいと整理中さ」
「チサトに? ここのものを?」
キンジが驚いた顔をするのを見て、カーラは肩をすくめた。
「あの子、冒険者になったよ」
「冒険者!?」
カーラの言葉に、キンジは大げさなほど驚いた。
「いきなりだな。ひょっとして、あいつらか?」
「きっかけはね。でも、ずっと前から巫女になりたかったみたいだし。いい機会だよ」
カーラは九十歳、村一番の元気者なんて言われているが、確実に死期は近づいている。一人で生きていけるよう育ててきたつもりだが、できればチサトが独り立ちしていく姿を見届け、それを冥土の土産にしたいと思っていた。
「で、餞別代わりに装備一式くれてやろうと思ったんだが、ろくなのがなくてねえ」
「そりゃまあ、金になるものはほぼ売っちまったからなあ」
それに、カーラ率いる一団に巫女や聖職者はいなかった。巫女を目指すチサトにふさわしい装備は、もともとないのだ。
「ま、あの子に選ばせるか」
カーラはうんしょっ、と腰を伸ばした。
「で、何か用?」
「あの四人のことだよ」
キンジは懐から紙切れを取り出すと、カーラに渡した。カーラは一読し、ほう、とうなずいた。
「あの子たち、そろいもそろってトップクラスのエリートじゃない。何しにこんな田舎に来たのかねえ?」
「さあねえ、わけわからん。ただまあ、二週間くらい前から、近辺の森ウロウロしてたみたいだ。あやしいっちゃ、あやしいんだけど、な」
「こんなに簡単に身元が割れる、てのはね。任務を帯びてるとしても、さほど重要じゃないだろう。案外、ホントに資源調査じゃない?」
「俺たちを捕まえに来た、てことは?」
「あるわけないでしょ。時効成立して四十年だよ。政府もそこまで暇じゃないさ」
カーラ一派の潜伏先。
それが、ドイナカ村の裏の顔だ。とはいえ、百名を数えた一派も今では十人もいないし、全員がすでに老人。放っておいても、そのうち寿命で死んでしまう。わざわざ捕まえる必要なんてないはずだ。
「いいさ、放っておこう。私たちとは関係ないさ」
「了解。しかしまあ、だとしたら、ホントに何しに来たんだ?」
「一応、その辺は探っておいてくれるかい?」
「ああ、いいぜ」
「まあ、あのワガママお嬢ちゃんが原因のような気はするけどね」
そのわがままお嬢ちゃんことウィオラが、チサトとともにやってくるのが見えた。
カーラはキンジから受け取った手紙を懐にねじこむと、手を振るチサトに手を振り返した。




