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「何?何、笑ってるの?神様にとって、人の人生なんて、どうでもいいことなの?お遊びなの?」
「そんなことはない。」
神は、笑いを止め、即座に否定した。
「じゃあ、何故、笑ったの?理不尽な人生を終えた私を、神様は、どうして笑えるの?」
「いや、その人生には笑えない。」
「酷い人生だと思うわけ?かわいそうだと思うの?」
「その通りだ。」
「じゃあ、じゃあ、どうして、私を見殺しにしたの?何で、殺されてしまうまで、私を助けてくれなかったの?私の人生を滅茶苦茶にしたのは、神様なの?」
怒りが、再びこみ上げてくる。
理不尽だ。
理不尽すぎる。
「そうとも言えるし、そうでないとも言える。」
「どういう意味?」
「お前の運命を作り出したのは、俺であり、お前自身でもあるからだ。」
「どういうこと?謎々なんて、聞きたくない。」
「謎々じゃない。真実だ。」
「そんな、禅問答みたいな答えで、私が納得すると思うの?」
「納得しなくても、それが事実だ。」
「一体、何なのよ?」
美樹は、神の答えを図りかねた。
神が、何を説明しようとしているのか、理解できなかった。
「どういうこと?さっき、神様は、私が理不尽な目にあったことを怒っていいって言ったじゃない。あれは、神様のプログラムだったの?もし、そうだとしたら、それが、どうして私自身が作ったことになるの?私は、ただの被害者じゃない。どうして、私をそんな目にあわせるのよ?」
「それは…」
「ひどい、ひどすぎる!!」
神が何か言いかけるのを遮って、美樹は泣いた。
多分。
頬を涙が伝うはずだが、その頬の感触はなかった。あふれた涙の感触はなかった。
「ひどい、ひどい、ひどい!!」
おそらく、生きているうちに、こんなに叫んだことはない。
大声で喚き散らすことなんて、こんなに感情的に叫んだことなんて、おそらくなかったはずだ。
「確かにひどい話だ。」
神は、美樹の叫び声に動じることもなく、静かな声で言った。
「何の罪もない向坂美樹にとっては…。心から同情したい。」
「ふざけてるの?」
怒りは収まるどころか、更にエスカレートする。
「その酷い人生を、私は経験したの。何の為に?どうして?」
「知りたいか。」
神は、再び、あの言葉を告げた。
「知りたい。もし、理由があるなら、教えて。」
神は、また、しばらく沈黙し、そして、告げた。
「そこまで、お前が望むのであれば、教えてやろう。いや、むしろ、俺は、お前には、伝えたかったんだ。」
「?」




