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夢が終わらない  作者: K
5/15

5

「神?」


 美樹の脳内が、更に慌ただしくなった。

 が、すぐにショートする。

 人は、想定外の言葉には、思考力を失ってしまうものらしい。

 パニックを起こした美樹は言葉を失った。

 かろうじて、質問してみる。


「神って、あの神様?」

「まあ、そうだ。」

「本当に、神様なの?」


 神…様?

 思考が追い付かなかった。

 ぽかんしていたのだと思う。

 真っ暗の世界で、自分の今の状態もわからない。

 そのままで、時間がどのくらいたったのかもわからない。

 どれくらい、呆けていたのか、全てがまったくわからなかったが、少しずつ、思考が追い付いてきた。


「神様なの?」

 同じ質問を繰り返していることにも気づかなかった。

「そうなるだろう。」

 何か、他人事のような、曖昧な返事に聞こえた。

 なんだ?そのセリフ、そう思った時だった。


 突然、ブチっと何かが切れた。

 完璧では決してないが、理解と、それに伴う感情がこみ上げてきた。

「神様?神様なら…」

 空っぽにしていた心の空洞に、感情が、押し寄せてきた。

「そこで、一体、何してたのよ?」


 堰を切ったように、感情は止まらない。

「今まで、何をしていたの?どうして、そんなとこにいるの?私がどれだけ苦しんだと思っているのよ?ねえ、神様なら、神様なら、どうして、私をこんな目にあわせたの?」


 こみ上げてきたものは、怒りだった。

 あいつに捕まって、いいようにされて、体を傷つけられて、動けなくて、もう、逃げることもできないことを悟った時、美樹の心は、哀しみと諦めの気持ちだけに支配されていた。他の感情が、入る余裕も余地もなかった。

 今、あの過酷すぎる状況から逃れた状態で、やっと、怒りのエネルギーが解放されたのだ。

 あの恐怖と苦痛を。

 地獄のような時間を。

 一瞬でも思い出したくないあの酷い有様を、神様は、ただ見ていただけなのか?

 何の罪もない私を、ただ、ただ見殺しにしていたのか?

「どうして、助けてくれなかったの?」


 神は、美樹の感情を静かに受け止めた。

「向坂美樹は、怒っていい。美樹は、何も悪くない。」


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