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一瞬、思考が固まった。
あいつの声?
すぐに否定する。
違う。
あいつじゃない。
「誰?」
誰かがいる。
それは、味方?敵?
今の美樹にとって、あいつは敵、あいつに加担するものがいたとすればそれも敵。
味方とは、今の美樹を助けてくれるものだ。
そうあってほしい。
心の警戒レベルがあがる。
しかし、この闇の世界では、どうしようもない。
いくら、警戒しようが、自らが、今、どんな状態なのかもわからないのだ。
手が動いているのか、足が動いているのか、はたまた、瞼が閉じているのか、開いているのかすらもわからない。
「誰なの?」
もう一度、尋ねてみる。
これは、地獄の延長か、それとも、地獄から抜け出す光明なのか?
再びの沈黙のあと
「声が…、届いたな。」
確かな男の声がした。あいつじゃない。
「誰?私は助かったの?」
病院?
脳内が慌ただしく活動しはじめるが、それにしては、何か違和感がある。
「ここはどこ?教えて。誰なの?」
「俺か…。」
男の声は、聴いたことがあるような、ないような…。
少なくとも、あいつではないことは確かだ。
一体?
ここは?
そして、この声は?
この闇も違和感だらけの世界だ。そもそも感覚がない。視覚にとどまらず、手や足の触覚、嗅覚も、今の美樹に何も感じられない。
そして、今、唯一、聴覚だけが、男の声を捕らえてる。
何が起こってるの?
美樹にとって、異常事態だということだけはわかる。
何かがおかしい。異常な世界の中に美樹はいるのだ。
そして、その中で、美樹にこの世界の手がかりを与えてくれると思われる唯一の声は、美樹にこんなことを告げてきた。
「俺は…神だ。」