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「?」
トイレの鏡を見て、ふと不思議に思った。
「何、見てんの?美樹。」
同級生の春奈が、一緒に鏡をのぞき込む。
「う-ん、私ってこんな顔だったかなって思って…。」
笑い上戸の春奈が、口を大きく開けて、がははと笑った。
「昨日も、今日も、ぜーんぜん、変わってないよ。」
「そうかな?」
「もう、早く、行くよ。」
春奈に促され、笑いながらトイレを出た美樹は、ふと、足を止めた。
前を、教室に向かって急ぐ春奈の姿がある。
チャイムが鳴って、廊下の生徒たちも、一斉に教室に入っていく。
誰もいなくなった廊下で、美樹は、あたりを見渡す。
男の低い笑い声を聴いたような気がしたのだ。
それは、どこかで、聞いたことのある声だった。