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この実験は、いずれは、公になるだろう。
犯罪の抑止力になる罰になるかもしれない。
本人の犯罪の重さが、そっくりそのまま自分に帰ってくるのだ。
だが、実験に対しても、人道的な横やりが入るだろう。
これが、意図的だとばれたら、自分も逮捕されるかもしれない。
しかし、実験は完璧だ。
安全な場所で、反省したところで、被害者の恐怖がわかるわけがない。
被害者と同じ目にあって、初めて、自分のした事に気が付くんだ。
自分がどれだけ、ひどい奴なのか。
自分がどんなことをしたのか。
身をもって、体験しろ。
美樹以上に、苦しめ。
自分の残酷な未来が、絶対くるとわかっていて、そこを回避できないことがわかれば、人は、心から反省することができるだろうか?
もがいても、どうにもならない生をループのように繰り返しているうちに、己を見つめなおし、神のような悟りに行きつけることがあるだろうか?
それとも、狂ってしまうだろうか。
男は少し考える。
けれども、たいした結論は、でなかった。
どっちでもいい。
男は、また、低い声で笑った。