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どうして?
どうして、私がこんな目に…。
呼吸が苦しい。
足がガクガクする。
酸素が足りない。
ゼイゼイとのどが鳴る。
けれども、足を止めるわけにはいかない。
止めたら、あいつが追い付いてくる。
でも、このままでは、絶対に追い付かれてしまう。
どこか、どこかに隠れないと。
美樹は、物陰に身体を滑り込ませた。
胸が苦しい。
息ができない。
呼吸が追い付かない。
が、整える暇などない。
足音は、そこまで来ていた。
息を止める。
しかし、それだけで死にそうになる。
圧倒的に酸素が身体に回っていないのだ。
身体中に、熱がこもるのを感じる。
このままでは、死んでしまう。
ゆっくり息を吐いた。
いや、吐いたつもりだった。
しかし、それだけで、身体は、急速に、反応してしまう。
空気を吐き出した瞬間、圧倒的に足りない酸素を身体に取り入れる為に、ヒィと喉が、音をたてた。
あ!
聞こえた?
慌てて美樹は口を抑え込む。
足音は消えている。
走り去った?
それとも、そこに?
心臓がバクバクしている。
全力で走った為だけではない。
汗で、襟回りがぐっしょり濡れてる。
嫌な、嫌な汗だ。
どうか、どうか、見つかりませんように。
神様、助けて。
長い沈黙の時間が過ぎた。音のない世界。
いなくなった?
そう思った時だった。
しゃがみこんで、隠れている美樹の視界が明らかに暗くなった。
影?
そう認識した美樹は、絶望的な目で振り向いた。